第12話 フォーコン
一方、神の国ではいつものバラ園でリアムは一人タバコを吸っていた。
何故、オリビアがアリシアの存在を知っていたのか・・・。確かに最初は、代用品だったのかもしれない。アリシアを失った悲しみがあったから・・・あの戦争が憎くて辛くて悲しかった。
僕の中の時計は、あの日のままで止まってない。それは、オリビアがいたから・・・。あの子の笑顔が、僕の時計をまた動かしてくれたから・・・。
オリビアに会いたい。会って話しがしたい。
白衣の胸ポケットにあるタバコの箱を手に取る。しかし、中にはタバコではなくオリビアに返された婚約指輪が入っていた。
「僕は、どうしたら良かった・・・のですかね」
「おやおや、リアムさんじゃないか!!」
ふと、声がする方へ顔を向けた。
「貴方は・・・」
「こんにちは、私はルーカス。オリビアの次の婚約者だよ」
オリビアの婚約者。このワードにリアムは今にルーカスへ殺意が湧く。
「まぁ、待って待って?そんな怒らないで・・・オリビアは、本当のことを聞けて喜んでいたよ」
「え?」
「私にお礼を言ってきたよ。本当のこと教えてくれてありがとう、これでやっと踏ん切りがついたってね」
リアムは、持っていたタバコの箱をグシャッと潰し懐から拳銃を抜きルーカスに向けた。
「テメェか・・・」
「へぇ・・・リアムさんって怒るんだね。でも、私の方が怒っているんだよ?」
「あ?」
「何故、他の女性を愛すことができるんだい?・・・姉さんが死んだのに」
その言葉に、リアムは持っていた拳銃を思わず下ろしてしまった。
「ルーくん?」
リアムがそう彼を呼ぶと、彼の怒りが一気に上がり回し蹴りをしてリアムを地面に叩きつけた。
「お前の様なゲスが・・・その呼び方をするな」
そのまま、ルーカスはリアムの髪の毛を鷲掴みにした。
「姉さんを忘れるなんて・・・姉さんを忘れて他の女と幸せになるなんて・・・ッッッ!!!!許さない」
そのまま、口を開き続けるルーカスにリアムは身動きができないまま聞いていた。
「私は、忘れない。争いがやっと終わった時に、小さくなって帰ってきた姉さんを。貴様は、忘れたのかッ!?あの争いに出て、血だらけになった姉さんをッ。冷たくなった姉さんの体温も・・・」
「やめろ・・・」
「許さない。私は、争いから平然としているお前らもッ。姉さんを殺した魔の国もッ!!私が、この手で全て壊すッ」
「アリシアは、そんなこと望んでない筈ですっ!それは、弟の貴方が一番分かっているでしょう?!」
リアムは、力を出してルーカスの胸倉を掴んだ。
「ああ、わかっているとも・・・我々は」
「我々・・・?」
「君も名前ぐらいは知っているかな?‘‘フォーコン’’って」
その名前を耳にした瞬間、リアムは目を見開いた。
フォーコンとは、神の国、魔の国の争いの跡にキメラを滅ぼす為に結成された殺人軍だ。
軍の大半が、神の国の住人で親、兄弟をキメラに殺された者たちの集まりだ。
「姉さんを殺したのは、魔の国のキメラだ。私たちの目指す国は、キメラの居ない安全な国ッ。まず手始めに、魔の国の次期女王・・・オリビアの側近である、チェイスを殺す」
「そんなことをしたら!!また争いが起こってしまうかもしれないッ」
「素晴らしい世界を手に入れるには、多少の犠牲も厭わないよ」
そのまま、彼の髪を掴んでいた手を離す。
リアムは、地面に転がっていた拳銃を手に取るとルーカスに向けた。
「貴方に殺せるかな?愛していた人の弟を・・・」
拳銃を握る手が震えていた。こんなの初めてだった。
動揺を隠せていないリアムに、ルーカスは微笑みながら手を上に挙げた。
すると、パァァァンッ!!!!と勢いのある銃声が響き渡りそれと同時に、リアムの下腹部に激痛が走る。
「ーッ」
腹部を抑え込み、片膝を地面につく。
「いいかい?ここに宣言しよう。争いはまた起こる・・・歴史は繰り返されるのだよ。あの世で姉さんに宜しくね・・・リアムさん」
「まっ・・・」
そのまま、リアムは意識を手放した。
「ルーカス・・・本当に良かったの?」
木の上から、ライフルを持って降りてきたのはローだった。
「ああ、最高だったよ。さぁ、次は魔の国のキメラ・・・チェイスだ」
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