第6話 彼の秘密 part1


 一方、オリビアとリアムはいつものバラ園でデートを楽しんでいた。


「いい天気ですね。凄く落ち着く」


 先程から、ずっと黙っているリアムに不思議そうに首を傾げた。


「リアムさん?もしかして・・・私と一緒にいて退屈だったりします?」


「え?!いや、そんなことなくて・・・ここで決めないとですよね」


 リアムは、大きく息を吸った。


「リアムさん?」


 不安になったオリビアは、再び首傾げた。


「オリビア、貴方は・・・誰よりも愛しい。僕とこれからの人生一緒に歩んでほしい」


 リアムは、本当に愛おしそうに彼女を見つめた。


「え?それって・・・」


「プロポーズです」


 苦笑するリアムに、きょとんとした表情を浮かばせるオリビア。


「オリビア?返事を聞いてもいいですか?」


「・・・え?あはっ・・・リアムさんったらまたそんな冗談笑えないですよ」


 耳に髪を掛けようと上げた腕を握りしめた。


「本気です」


「私・・・魔の国の住人ですよ」


「知ってます」


「次期女王ですよ」


「僕の前での貴方は、一人の素敵な女性だ。・・・愛してるんです、オリビア」


 リアムのその言葉に、嬉しいのか悲しのかよく分からない涙が彼女の頬を流れた。


「オリビア?」


「リアムさんのこと・・・先生の時からずっと見てたよ。夢見たい・・・私も、愛してる」


 リアムは、ポケットから出した小箱。その中には、本当に綺麗なダイヤが入った婚約指輪が入っていた。彼は、それをオリビアの左の薬指にはめた。そして、二人の唇が重なろうとした瞬間。


「ゴッホン!!!お取り込み中申し訳ないでーす。」


 二人の目の前に現れたのは、チェイスだった。


「チェイスくん?心臓刺し殺されたくなかったら、すぐにどっかに行ってください」


「そうしたいのは、山々なんですが・・・魔の国で会議なんですー。おら、お前がいないと始まらない」


 チェイスは、半ば強引にオリビアの腕を引っ張った。


「あっっ!また後でここに来ますね!!!!」


 そう言い残して、オリビアは会議に出席した。


「ちょっ!チェイス、腕痛い!離して」


 チェイスは、オリビアの方を向き両肩を強く握った。


「お前、正気か?」


「何が?」


「それ」


 チェイスが指差したのは、左の薬指に光る婚約指輪。


「夢見たい・・・リアムさんが私を愛してくれているなんて」


 彼女の幸せそうな表情を見て、チェイスは歯を食いしばった。


「先生はッッ!!!神の国の住人なんだぞッ」


 その言葉にオリビアは、目を見開く。


「お前が良くても・・・先生は、辛い思いするに決まってる」


 争いが終わった今でも、多少の魔の国、神の国の差別はある。


「チェイス・・・なんで?アンタらしくない。そんなこと言うのよ」


「お前の頭がお花畑だからだろ。オレは、神と魔とキメラの差別問題には詳しい方だ。何人もその道を選んで死んでいった奴らを見てる」


「チェイスの言いたいことは・・・分かってる。でも、私は先生のことを愛してるの」


「愛してる。じゃどうしようもないことがあるんだよ。しっかりしてくれ・・・魔の国の次期女王様」


「今日のアンタおかしいよ」


 オリビアは、チェイスの腕を振り払いそのまま王国へ帰還した。


 城に着いた時、会議室の前の廊下に居たのはルーカスだった。


「やぁ!オリビア、今日もあなたの美しい姿を見れてワタシは、幸せだよ」


「そこ退いて」


「おや・・・今日は、ご機嫌斜めなんだね」


 ルーカスの視線は、自然と彼女の左手へ。


「それは・・・」


「アンタに関係ない」


「あの男のかい?ねぇ、オリビア・・・リアムくんについて知りたいことないかい?」


「は?めんどくさい。いいから、そこ退いて」


「本当の彼をワタシが教えてあげる。気になったら、中庭においで」


 そう言い残して彼は、その場を去った。


「おい、オリビア?会議始まるぞ」


 会議室から顔を出すギルバートに、軽く返事をした。

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