第4話 キメラの寿命 part2


「あれぇ?ルーカス、もうその女見つけたのぉ?早いね」


「当たり前だろう?ロー。彼女は、私のお姫様なんだよ?私は、言えばこの美しい姫を守るナイトさっ」


 けして、オリビアを離さないように後ろから抱きしめ満遍な笑顔でシェリルと、リアムと一緒にいたローに答えたルーカス。


「リル・・・」


 寿命の話を聞いていたシェリルは、声が出なかった。


 キメラの寿命は、知っていた。そんなことわかっていた。チェイスくんは、絶対に私より先に死んでしまうこと。でも、それでも・・・彼と一緒に居たかった。


 色々な感情がシェリルを襲った。


「もう一度聞くよ。キメラくん?君が死んで悲しがる人はいないんだね?」


「・・・ああ」


 よく考えてから、チェイスはその答えを出した。


「そうか・・・じゃあ、死んでもらおうかな」


 オリビアからそっと離れて、腰から二丁拳銃を出しそのままチェイスに向けた。


 チェイスは、構えていた腕を下ろした。それは、全てを受け入れているようだった。


 その時だった。


 ルーカスが、銃を下ろしたのだ。


「これは・・・撃てないな」


「え?」


 前を向くとそこには、チェイスを守るように両手を広げて立っていたシェリルだった。


「この人を殺したいなら、私を撃ってからにして」


「リル・・・」


 そのまま、ルーカスは銃を腰にしまい笑顔で両手を上げた。


「降参だ。今日は、その勇ましいレディーに免じてここから去るよ。行こう、ロー」


「あ、うん・・・またね」


 少し名残惜しそうに、シェリルを見つめていたローだった。


 シェリルは、チェイスに背を向けたまま口を開く。


「私は、チェイスくんのなに?あなたが死んでも悲しまないようなそんな・・・酷い女に見える?」


「リル・・・オレは」


 オレは・・・キメラだ。いつ死んでも、殺されても、自我を失ってもおかしくないただのキメラ。どう頑張ろうが、その事実は変えられない。


 そう、答えようとするが口が開かない。声が出ない。


「ごめん・・・リル」


 その言葉しか出てこなかった。



 一方、ルーカスとローはというと。


「ロー?ロー?」


「んぁ?ああ、ごめん・・・なんか言った?」


「さっきから私がオリビアをどれだけ愛しているか語っていたのに、君は上の空だね。どうかしたのかい?」


「べっつにー?ただ・・・なんで、自分じゃない誰かの為に命を捨てるような真似できるのかなって・・・」


 ローは、先程のシェリルの行動が理解できなかったようだ。


「だってさ?ルーカスがマジで撃ってたらあの女死んでたよ?なんで?そこまでして」


「あのレディーは、あのキメラくんのことが相当愛しているのだね」


「は?キメラを?バッカじゃねえの?」


「愛とはバカになってしまうものなんだよ・・・ロー」


「はっ。このオレは、ぜってぇなんねーよ」


「フフッ。それはどうだろうね」


 この時のローは、まだ知らない。


 この後、彼が本気の愛に気がつくまでそう時間が掛からないことを。

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