第2話 ローズフェスティバルの悲劇part2
「嗚呼、やっとお会いできましたね。私の可愛いオリビア」
「は?」
「今日は、なんと良い日なんだ!!宴だ!!私と妻になるオリビアの婚約パーティーだ!!」
「ちょっ!!きゃぁあっ!!」
オリビアは、謎の美男子に抱き上げられ咄嗟に持っていたリアムからのプレゼントされたパンダのぬいぐるみを落としてしまう。
一方、シェリルはというと。
「あー・・・ルーカスの方は、上手くいってんだ〜。良いなあー」
「オリビアっ!!!」
シェリルは、屋台に立て掛けてあった長い木の棒を手に持ち器用に周りの住人たちを避けながら、長身の男に向けて攻撃をするが、いとも簡単に木の棒を腕に挟まれてそのまま膝で折られてしまった。
「オレの顔に当たるだろ・・・ちょこまかちょこまか動くな」
殺気を放ちながら男との間合いを上手く調整するシェリル。
「この人の多さじゃ・・・上手く動けない。てか、何者なの・・・いきなり」
「オレが何者か知りた〜い?」
「え?!急に背後からっ!?きゃっ!!!!」
先程まで目の前にいた長身の男は、一瞬でシェリルの背後を取り蹴りを入れる。屋台に吹っ飛ばされる直前で野次馬を掻き分けてチェイスがシェリルを抱きとめた。
「リル!!!大丈夫か?!」
「けほ・・・上手く、受け身とれたから大丈夫・・・」
「うーわ。キメラじゃん、この街にキメラいるとか治安わるっ・・・警備どーなってんの?」
「貴様・・・あのお方が、神の国の時期女王と知っての所業か・・・」
「そうじゃなくても、もうキミ許さないけどね」
現れたのは、りんご飴を片手に剣を向けるレイと、シェリルを蹴り飛ばされたことにブチ切れているルイだ。長身の男の剣で、動けないように体を包囲する。
「へぇ〜ここの警備隊?弱っそう!!」
「弱いかどうか・・・」
「試してみます?」
こちらも負けじと殺気を放つマキア兄弟。
だが。
とてつもない殺気を放っていたのは、チェイスだった。
「テメェら、手を出すなよ。こいつ、殺るのはオレだ」
流石のマキア兄弟もこの殺気に怯みそうになる。
「チェイスくん?」
「リルを傷つける奴は、誰だろうとオレが許さない」
「良いねぇ!!!!面白そうじゃん!!!キメラよぉ!!!!」
その時だ。
ガッシャーン!!と、二人のピリピリと伝わる殺気が一瞬で治る。突然現れたギルバートが持っていた酒瓶を二人の目の前で割り付けたのだ。
「宴の席だ・・・水を差す様な野暮なことするのはテメェか?」
「うげっ!!!これ、酒?!オレ、酒臭いの嫌いなんだけどー・・・。あー・・・冷めちゃった。また、来るよ〜」
「テメェ!!!!待ちやがれ!!!!!」
「やめておけ、寿命縮めたいのか?」
消えていく長身の男を追おうとしているチェイスに、ギルバートのストップが入る。その言葉に、我に返るチェイス。
「リル・・・リル!!」
振り返ると騒ぎに駆けつけていたマーガレットに、肩を借りて起き上がっているシェリルと目が合った。
「チェイスくん・・・」
急いで彼女に駆け寄り、その小さな体を抱き寄せた。
「大丈夫か?」
「怖かったぁ・・・」
普段のシェリルならば、強がりの一つでも吐くつもりだったがチェイスの胸の中が安心してしまいポロポロと涙が溢れ出す。
この涙を見た時、チェイスの中で大切なものが一つヒビが入ったのを確かに感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます