争いの跡に。ーこれからー

ひな菊

第1話 ローズフェスティバルの悲劇part1


 空が青くて、風は心地よくて、優しい香りがする。そう、君の隣がオレの隣で微笑んでくれている。


「え?!リアム先生、オリビアにプ、プロポーズするんですか?」


 ここは、飲食店の『フウカ』今日は夕方から少し飲もうとリアムからお誘いを受けたチェイスは、彼の相談を聞いて驚きが隠せなかった。


「はい。でも、まだ悩んではいますよ?どのタイミングで言おうかなとか・・・色々」


「でも、早くないですか?まだ付き合って、一年ぐらいですよね?」


「僕ももう、今年で29歳ですからね・・・ちゃんとしないとなって思ってるんですよ」


 どうしてだろうか、真面目な顔して話しているのに真剣に聞こえないのは、彼の持っている大ジョッキのビールグラスのせいだろうか。


「チェイスくんは、どうなんですか?」


「え?普通ですけど・・・」


「結婚とかって考えてないんですか?」


 思わず、黙りこくってしまうチェイスだ。


「それは・・・」


「キメラの平均寿命が25歳だからかな?」


 図星だったからか、ピクリとチェイスの耳が動く。


「それも勿論あります・・・てか、それが一番のネックかもしれませんね。オレと結婚して、果たしてリルは・・・幸せになれるんでしょうか」


「幸せになれる。じゃないでしょ?幸せにするんですよ」


「先生・・・今、オレ初めて先生のこと教師だったんだって思ったよ」


「チェイスくん、ここのお会計は君が支払ってくださいね」


「じ、冗談じゃないですか〜!!!」


「そんなこと言ってるとね、いつかカッコイイチャラ男に・・・シェリルちゃん取られても知りませんよ」


「またまた〜。そんなこと言うなら、オリビアだって今にめちゃくちゃ愛してるーとか言うどっかの男に連れ去られても知りませんからね〜」


 この時の二人には、自分たちの呟いた言葉が現実になるなんて知るよしもなかった。


 次の日の朝。


 今日は、クラウディアでの恋人の為のお祭り『ローズフェスティバル』が開催される。出店はもちろん、コンテストがありコンテストに出場すると恋人から愛のメッセージを送られる。そこで、リアムは考えた。ここでプロポーズをしよう。と。


「シェリル!!いちご飴あるよ!食べる?」


「食べたい!!!」


 二人は、ローズフェスティバルに夢中。


「オリビアもシェリルもはしゃいでるな!!」


「チェイスくん、今日僕は彼女にプロポーズをしますよ」


「え?」


「まぁ、駄目だった場合は骨、拾ってください」


 嗚呼、何度も何度もこれが夢じゃないことを神様に祈った。いつまでも、一緒に居られるようにと神様に祈った。永遠に隣で笑っていられますように・・・。そう願った。


 リアムは、オリビアを見るたびに思うことだ。


 人が多すぎて、先を歩いていたオリビアとシェリルを見失ってしまうチェイスとリアム。


「あれ?リアムさん?」


 ふと、後ろを向くと誰もいない。この時、オリビアは気がついていた気配を消して自分の背後に回っていた人物に。腰に装着していた拳銃に手が伸びる。前に、その人物はオリビアの前に跪いて嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。


「見つけた」



 一方、シェリルは屋台の前でオリビアと離れ離れになってしまったと言うことに気がついた。


「あれ?チェイスくん?オリビア?先生ー?」


「こんなに小さいの?」


「え?」


 この時、シェリルは気配に気がつくのが遅くなった自分の背後に近づいてくる大きな影に。


「「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」」


「オリビア!?」


「シェリル?!」


 二人の悲鳴に振り向くリアムとチェイスであった。

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