第20話 葬儀屋の過去語りⅢA
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよー
五歳の時私はお母さんに稽古を連れてもらうようになりました。異世界無双に一歩近づけたわけですね。私の六歳の誕生日の一週間前お父さんは葬儀に行ってしまいました。しかしかえってはきませんでした。川に流されていた子供を助けるために飛び込みそのまま流されてしまったとのことです。私とお母さんはとても悲しみましたがお母さんの幼馴染のベコニアさんのおかげで立ち直ることができました。夕日を見ながら世界は綺麗だななんて思い眠りにつきました。
それから数年後私は10歳になりました。お父さんが亡くなって4年も経ってしまいました。お母さんと私は相変わらず二人で色々な所に出かけていました。お母さんと10年間も一緒にいるので癖や話し方などが似てきてしまいました。真似しているのでそれは当たり前なんですが。ベコニアさんもお店にも月に一回ほど行くようになりました。
ベコニアさんの娘さんのグレイシアさんとも仲良くなりました。なんと同じ年なんですよね。短い白髪のショートヘアに私と同じ紫陽花色の目をした少女でした。認めたくはないですが私よりも綺麗なんですよね、、、。まあ仲良くやってますが。その他にもたくさんの思い出ができました。この世界では唯一の家族ですから一緒に出かけることが出来てとても幸せです。
ある日です。お母さんは急にこういいだしました。なんでこういったのかこの時は理解できませんでした。
「ラディア貴方は将来葬儀屋になりたいという夢は変わっていませんか?」
「はい。そのために勉強だってしてますよ。」
「それならよかったです。1週間後近くの会場で試験があるようですよ。受けてみてはいかがですか?」
「わかりました。取り敢えず受けてみます。」
「頑張ってください。応援していますよ。」
あまり時間がありませんが対策は完璧です。例年通りであれば受かる気がします。過去問は満点でしたからね。
1週間後遂に試験日です。前世ではそれなりに学力にはそれなりに自身はありましたが今世ではどうなんでしょう。緊張してきました。やはり試験というのは緊張しますね。
結果は直ぐに返ってきました。茶色い封筒を開けます。よかった無事合格でした。お母さんに直ぐに伝えに行きます。
「お母さん。無事合格しました。」
「それは良かったです。早速ですが先生を探してはどうでしょう?」
「お母さんが先生ではダメなんですか?」
「ええ。贔屓をしてしまいますからね。なので頼んでおきました。」
・・・。探させてくれないんですね。
「誰にですか?」
「私の孫弟子です。」
「じゃあ私はお母さんの曾孫弟子というわけですか。」
「フフフ。そういうことになりますね。明後日程にくるみたいなので準備しといてください。」
「なんのですか?」
「あなたにはこれから1年間修行に出てもらいます。」
「え!?聞いてませんよそんなこと。」
今世はお父さんとお母さん以外と過ごしたことがないのに他人と共同生活なんて絶対にできないですよ。
「大丈夫ですよ。きっといい子ですから。たぶん、、、。」
なんですかそのたぶんは!めちゃくちゃ不安です。
「お母さんは一緒に来るんですか?」
「いいえ。行きませんよ。」
ゆらりとかわされました。
「じゃあ私は他人と1年間共同で生活しろと?」
「嫌ですか?」
「嫌です!」
「あの子は本気で戦ったら私よりも強いですよ。だから安心した旅を送れますよ。」
「そういうことじゃないんですよ。」
「わかってます。私がいなくなったらどうするつもりなんですか?」
「・・・。悲しいです。」
「ふふ。大丈夫ですよ。また会えますからその時にまた一緒に暮らしましょう。」
「私がいると迷惑だから追い出すとかじゃないんですよね?」
「当たり前ですよ。あなたは私の宝物なんですから。無事に帰って来てくださいね?お父さんのように事故にあってはいけませんよ?」
「わかりました。お母さんも体には気をつけてくださいね?」
取り敢えず合格したことをベコニアさんとグレイシアさんに早速報告します。修行に行くともう一年間会えなくなってしますので。レストランでグレイシアさんもお手伝いをしていました。
「ベコニアさんグレイシアさん無事に葬儀屋の試験に合格しました。」
「あら、おめでとう!」
「おめでとうラディアさん。」
「はい。それでですね、、、。」
「なあに?」
グレイシアさんの方が私に聞きます。
「明後日から一年間修行の旅に出ることになりました。」
「え、じゃあラディアさんに一年間会えないってこと?」
「はい、残念ながら。」
「寂しくなるわねえ。まあ頑張ってお母さんを超えるくらいいい葬儀屋になるのよ!」
「任せてください。じゃあ何か食べてから帰ります。」
「何にする?」
「いつもので!」
「風物詩セットね。作るから待って頂戴。」
前回は夏でしたが今は冬です。でも美味しかったですよ。
さて2日はすぐにたってしまいました。車の音がします。ん-もう来てしまったんですね。
目をこすりながら玄関に行くとお母さんと先生がお話をしています。
「きました。ラディアをよろしくお願いします。」
「任せてください。それでは行きましょうかラディアさん。」
「はい。それではお母さんいってきます。」
「いってらっしゃい!」
お母さんは笑顔で私のことを送り出しました。
「自己紹介がまだでしたね。私の名前はエテルナです。11歳なのであなたとそこまで年は変わりません。1年間よろしくお願いします。」
「私の名前はラディアです。10歳です。よろしくお願いします。所で1つお聞きしたいことがあるんですが。」
「なんでしょう?」
「前見えてるんですか?」
エテルナ先生の身長は145cm程で私とさして変わりません。アクセルを踏み込んでしまえば前が見えなくなってしまうのですが、、、。
「ええ座席にクッションを引いていますしアクセルはとどくように補助できるものをつけていますから。」
「なるほどそれなら良かったです。事故なんかが起きたら大変ですからね。」
「・・・。運転には自信ありますよ。なので安心してください。」
「わかりました。」
それからもゆっくりとした日々が続きました。最初はずっと緊張していましたが段々と打ち解けあって行きました。何よりもすごいのはエテルナ先生の剣術です。
「いきいますよラディア。」
そういうと先生はお米を一粒上に投げます。エテルナ先生はレイピアを抜きお米を狙って切ります。なんと真っ二つ。アーティファクトを使わずとも正確な剣使いこれが先生の真骨頂みたいですね。
「すごい先生!」
「あなたもこれくらい出来るようにしてくださいね。」
「それからですねラディア。運転は出来るようにしといた方がいいですよ。」
朝は稽古を、お昼はどこかに行って観光を、夜は一緒に寝る、時には運転の練習したりと忙しいようでのんびりした毎日でした。お金が無くなれば葬儀をして私は同行するという生活を送っていました。なかなか楽しい2人旅でした。そんな日々を過ごしていたらいつの間にか1年が過ぎようとしていました。
ある時です。先生はこんなことを言い出しました。
「ラディア自分の力がどれくらいか知りたくはありませんか?」
「まあ。そうですね。」
「ならば迷宮行って見ますか?」
「はい!行ってみたいです。でも危険じゃありませんか?」
「安心してください。最悪私が何とかしますから。」
実に頼もしいですね。私たちは迷宮に向かいます。迷宮ではアーティファクトが時々とれるそうですよ。
迷宮は少し大きな木の枠でできた洞窟でした。そこには門番さんが数人おりました。なかなか警備が厳重みたいですね。
「お嬢さんがた二人で迷宮に入るのかい?」
チャラそうな門番さんの一人に絡まれました。エテルナ先生が対応します。
「ええ、そうですが?」
「良かったら護衛でもしてあげようか?」
「いえ大丈夫です。」
「いやいやいや迷宮は危険だよ。なめてかかると命取りになるからさ。」
「大丈夫ですよ。」
先生はレイピアを抜きます。風が強く吹きました。
「A、アーティファクト!!!」
「それでは行きましょうかラディア。」
私たちはトレジャーセットを持って迷宮に入りました。階段なんですね。だいぶ疲れそうですね。
薄暗く湿っぽい道を歩きます。周りはコケの生えたレンガでした。隠し扉とかありそうな雰囲気ですね。まあ危ないので触りませんが。キャンドルがついているのでさほど暗くありません。
「先生質問したいのですがモンスターとかって出てきたりするんですか?」
「さあ?どうなんでしょう。」
「え、どうするんですか?」
「戦ってくださいよ。」
なんて言うことを話していたら黒色の狼みたいな感じものが現れました。
「先生これ倒してもいいんですよね?」
「ええ。ずばっとやっちゃってください。」
黒い狼が襲ってきました。知能がないとはいえ真っ直ぐ突っ込んできたのでひらりとよけた後レイピアを抜いて真っ二つにします。一切感触がありません。狼は光の粒になって消えてしまいました。
「迷宮にいる魔物は生き物ではないのですよ。迷宮の体の一部なんですよ。なので迷宮自体を壊さないと永遠に出てきます。なので気負うことはありませんよ。」
「・・・。少しビックリしました。」
「でも迷宮以外の魔物はちゃんと生きているので無駄に倒してはいけませんよ?」
「はい、わかりました。」
私たちは一階層を後にします。ゲーム感覚みたいで面白いですが少し怖いですね。
「第四階層まで来ましたがどうでしたか?」
食料品を持ってきていないのでそろそろ引き返さなければなりません。
「楽しかったのですがアーティファクト手に入りませんでした。」
「そんな簡単には手に入りませんよ。国に一つあればいい方なほど貴重なものですよ。」
「そうですよね、、、。では迷ったらいけませんし帰りましょうか。」
階段を上るとそこには上半分が牛で下半分が人の五メートル近くの魔物がいました。ミノタウロスとやらですね。ミノタウロスと言えば十階層のボスらしいですがなんでこんなところにいるんでしょうか?
「せ、先生。」
「ええ、これは想定外ですね。」
逆になにが想定内だったんでしょうか?
「どうするんですか!」
「決まってるじゃないですか。」
先生はこちらを向いて笑います。何となく察してしまいました。
「逃げましょう!」
やっぱり、、、策なしでしたか。
私たちは大急ぎでミノタウロスの下をくぐり抜けてわき目もふらずに必死で逃げます。私たちは剣術には自信がありますが所詮は子供早く動けませんし致命傷を与えることができないので賢明な判断ではありますが悔しいですね。ミノタウロスは大きさの割のには素早いので追いつかれそうになりました。
「先生何とかしてください!」
「さっきからの風の刃をあてているのですが効かないんですよ。」
「減速はしてるんですか?」
「多分、、、。全力でやれば吹っ飛ばせるんですが。こっちまで吹き飛ばされてしまいます。」
「わかりました。あそこに角があります。そこに差し掛かる前にぶっ飛ばしちゃってください。そこからは体力勝負ですが。」
「わかりました。やってみましょう。」
先生はレイピアを両方抜いて全力で振ります。大きな竜巻が二つ出現しました。ミノタウロスに直撃してミノタウロスは遠くに吹っ飛ばされた気がします。先生がアーティファクトを使ってからしばらくしてズドーンという音がしましたから。
「後は全力で逃げましょう。」
「・・・。はい。」
私たちは全力で逃げましたがなかなか降り切れません。そりゃそうですけど。
「ラディア例の場所知ってるんですか?」
「ちゃんとメモしていたのでわかりますよ。後もう少しですよ。」
「そこまで行けば私たちの勝ちですもんね。」
後ろを振り返って見るとミノタウロスがいません。あれ?
「ふう~ここまで来ればあのミノタウロスも追ってきませんよね?」
「先生それ死亡フラグ、、、。」
「え、?」
私たちのいるところより少し後ろからミノタウロスが壁を突き抜けてやってきました。
「キャーーー。」
私たちは甲高い声を上げます。対角線上なんて反則ですよ!
「せ、先生が死亡フラグを立てるから回収しに来ちゃったじゃないですか!どうするんですか!責任取ってくださいよ。」
「十二歳の私ではアーティファクトを完全には操れないというのが敗因ですね。」
「なに勝手に反省会開いているんですか!」
「大丈夫ですよ。」
「奥の手でもあるんですか?」
「私がここは食い止めます。ラディアは先に行ってください。必ず追いつきましから。」
「先生それは典型的な死亡フラグですよ、、、。」
「冗談です。二人で生き残る方法を考えましょう。」
「考える暇をくれないみたいですよ。」
ミノタウロスは私を狙って右腕を上げます。
「修行の成果を出す時が来ましたね。」
私はミノタウロスの攻撃をよけることに集中します。
動体視力の向上と先読み能力これが私の今の実力です。身体能力は低いので人間相手には効果的ですが魔物相手には分が悪いのでとっておきましたが使わなければ意味ないですからね。
無事によけきることができました。ミノタウロスが体制を少し崩したところを見逃さず全力で逃げます。逃げてばっかりですね。
「凄いですね。ここまで弟子が成長しているだなんて。」
「先生だってこれくらいできるでしょ?」
「できますけど、、、。こんな強大な相手に実行するのは無理ですね。」
「火事場の馬鹿力というやつですよ。」
「なるほど。なんとなく理解しました。」
ミノタウロスは体勢を立て直しまたすぐに追ってきます。ゴールは目の前ですが少しだけ間に合いません。
「先生、取り敢えず逃げますよ。」
「逃げ切れますかね?」
「先生、もう一発アーティファクトを全力で使ってください。」
「反動で吹き飛びますよ?」
「その反動で逃げるんです。」
「なるほど!わかりました。」
先生はアーティファクトを再び全力で振ります。反動で私たちも吹き飛びました。フフフこれで私たちの勝ちですね。
目的地である第三階層への階段です。ここなら五メートルもある。ミノタウロスでは入ってこれません。
「はあ、はあ、はあ。無事に逃げ切りましたね。」
「そうですね。死ぬかと思いました。」
私たちはしばらく横になります。トレジャーセットに入っていた水を飲み干しました。
「せ、先生腰が抜けて立てません。」
「仕方ありませんね。」
先生は私をしょい込みます。幼い子供になった感じで恥ずかしいです。今でもまだ子供ですが。
私は先生の背中に顔をうずめました。疲れてしまいそのまま眠りついてしまいました。
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