第20話 葬儀屋の過去語りⅢB
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよー
十歳になった私はお母さんの思い付きで葬儀屋になるための受験に受かった訳ですが、それからすぐにお母さんは先生を呼びました。先生と私で一年間修行の旅に出ました。朝は稽古を、お昼はどこかに行って観光を、夜は一緒に寝る、時には運転の練習したりと忙しいようでのんびりした毎日でした。お金が無くなれば葬儀をして私は同行するという生活を送っていました。途中迷宮でアーティファクトを採取しようとしたらミノタウロスに襲われ大ピンチ!
その危機を乗り越え無事にいつもの生活に戻ったのでありました。
ある日いつものようにジープを走らせていたら突然思いました。葬儀屋になりたいのに葬儀屋らしいことしてなくね?と。
「先生、こんな感じで立派な葬儀屋になれるのでしょうか?」
「ちゃんと私の葬儀を見ているのであれば大丈夫でしょう。」
「・・・。ホントですかね。私に解決能力なんてあるんでしょうか?」
「わかりました。今度はあなたに一人で葬儀を行ってもらいます。それが無事に成功すればあなたは晴れて葬儀屋になれます。」
「わかりました。どこでの葬儀ですか?」
「赤い花がきれいな国での葬儀らしいですよ。」
「わかりました。行きましょう。」
「せっかちですね。急いだって何も生まれませんよ?」
「どういうことですか?善は急げっていうじゃないですか。」
「葬儀屋は死者と遺族を相手にする職業ですよ。急いだって誰かを直ぐに救えるわけではありません。なので余裕を持って行かないと巻き込まれてしまいますよ。」
「葬儀屋は常に余裕をもてということですか?」
「そういうことです。これは私の先生から教わったことですけどね。」
「へぇーそうなんですか。もしかしたらお母さんのセリフかもしれませんね。」
「どうなんでしょうね。そろそろ行きますよ。準備はできましたか?」
「はい!緊張してきましたが、、、。」
「大丈夫ですよ。万が一の時はサポートしますから。ああそれと一つ約束してください。」
「何でしょう?」
「最後までやり遂げろとは言いませんが、葬儀は絶対に放り出さないでくださいね?」
「???。わかりました。」
「それでは行きましょう!」
私達はいつも通り国門をくぐり抜けて依頼主様のもとに向かいます。これが終わってしまえばエテルナ先生との旅も終わってしまうのでしょうか?そう思うと葬儀前なのに悲しくなってしまいます。私って寂しがり屋なんでしょうね。
なんと今回の依頼は国王様の葬儀だそうでかなり驚きました。そんな大物の葬儀をいきなり行わせるって、、、。
黒髪の若い執事さんがこっちに向かってきました。
「葬儀屋様よくぞいらしてくださいました。」
「あ、はい。」
「早速ですが葬儀の日程や内容をお伝えいたします。」
「わかりました。現時点で何か問題はありますか?」
「はい、、、。実は国王様が亡くなって第一皇子と第二皇子の跡継ぎ争いが行われていてそれを止めて頂きたいということですが、、、。お願いできますか?」
最初の葬儀でとんでもない問題と遭遇してしまいましたね。ああ本当に大丈夫んでしょうか。おっと、危ない危ない。葬儀屋はいつでも余裕をもてでしたよね。
「お任せください。必ずや止めて見せます!」
「おお!よろしくお願いします。」
エテルナ先生は遺族たちの話をしっかりと聞いていましたから私もそうしましょう。先ずは第二皇子の話から聞きますか。
第二皇子は赤い花が綺麗な通りの城におりました。桜が濃くなったようなそんな感じです。まだ満開ではありませんが、、、。満開になったらお母さんと見に行きたいですね。また楽しみが増えてしまいました余裕を持ちすぎですかね?
「おお!葬儀屋殿よくぞいらしてくれた!早速だがこちらに来てくれ!」
そういい案内されたのは小さな応接室でした。
「長旅ご苦労だったな。僕はこの国の第二皇子のレアルさ。」
「ありがとうございます。私は葬儀屋のラディアです。」
「私はエテルナです。」
ある程度の自己紹介が終わりました。私はこう切り出します。
「お兄様と跡継ぎ争いを行っているということですがなぜなんですか?」
「権力は誰でも欲しいだろう?」
ヘラヘラした感じに答えてました。
「そうなんですか、、、。」
「ラディア。」
先生がボソッと私に告げ口します。
「こういう時はたいてい冗談であることが多いです。もう一度確認するのも大事なことですよ。」
「わかりました。レアルさん。それは本当ですか?」
「ボソッと話してたことが気になるがまあいいや。実はだね僕には4歳になったばかりの息子がいるんだ。その子が病気でね。紫色のあざという病気でね。最近流行し始めた病気らしいんだ。どんどん紫色のあざが広がっていき顔以外の全身にまわり命を落とすという病気なんだ。今は進行を遅くする薬しかない。その薬の値段が馬鹿みたいに高くてね。国王にならないと払えないレベルなのさ。だから僕は国王にならないといけないんだ。愛する我が子を救うために。」
エテルナ先生は私の方を見て少し驚いていました。なぜ?
「なるほど。譲れない理由があるということですね。」
「ああ。父上は最終的な決定は葬儀屋に任せるといったらしい。だから頼むよ。僕を国王にしてくれ。」
「まだ第一皇子の話を聞いていないのでなんとも言えないので少し待っていてください。」
「・・・。ああわかったよ。兄上とは正々堂々と決着をつけたい。」
ん-この話だけならレアルさんを選んでしまいますが第一皇子はどうなんでしょう。それよりもですね。
「先生は知っていたんですか?」
「何をですか?」
「私が国王を決めるということです。」
「あれ?言ってませんでしたっけ。」
「先生!」
「すみません。緊張が増してしまうのではないかと思いまして。」
「はぁー仕方ありません。放り出さないってこのことだったんですね。」
「そうなんです。ですので頑張ってください。私もアシストしますから。」
「それでは第一皇子さんのもとに向かいましょう。」
第一皇子さんのいるところはレアルさんのいるところよりずっと離れた地でした。レアルさんのように華やかな場所ではなく古びたお城の中でした。
「よく来てた。俺はこの国の第一皇子のシエロだ。」
貫禄がありますね。一瞬覇気で押されそうになってしまいました。
「初めまして。葬儀屋のラディアです。」
「エテルナです。よろしくお願いいたします。」
「早速ですがなぜ国王になりたいんですか?」
「俺は父上に出来損ないだとか言われ続けた。俺よりも弟の方が優秀なのは知っていた。だから必死に努力して父上に認めてほしかった。最後まで認めてはくれなかったがな。」
「・・・。そうなんですか。」
「ふっ、俺は王座にこだわってはいない。弟には病気の子がいることも知っている。だから王座は弟にやって欲しい。」
「じゃあなぜ争っているんですか?」
「家臣どもがうるさいからだ。伝統があーだこーだとな。そんなことに民を巻き込むわけにはいかない。弟はチャラい奴だが誰よりもこの国を愛している。」
「私はあなたの方がこの国を愛しているように思えました。」
「残念ながら俺はこの国は嫌いだ。もうじき出ていくさ。父上に罵られた記憶しかないからな。」
「依頼では私が決めろということらしいです。」
「ああそうだな。」
「わかりました。それではさような、、、」
「ちょーと待ってください。明日弟さんのお城に来ていただけますか?」
と急にエテルナ先生が割り込みました。
「なぜだ?俺は王座に興味はないぞ。」
「伝えたいことがありますので。」
「わかった。」
そういった後私達は城を後にしました。
「先生!なんで結論を先延ばしにするんですか?第一皇子さんは王座に興味はないんですよ。」
「そうですね。」
「真面目に答えてください!」
「明日になればわかりますよ。後は任せてください。」
「むぅーーー。最後までやらせくださいよ。やり遂げないと合格できないじゃないですか。」
「葬儀はお任せしますが葬儀屋の仕事は任せてくださいよ。」
私は頬を膨らませます。そういえばここは家に近い国なんですよね。明後日ぐらいにはお母さんに会うことができますね。この一年間の思い出話をお土産に帰るとしましょう。えへへ楽しみですね。
私達は小さな宿屋に止まります。今日は緊張しすぎたので疲れて直ぐに寝るしたくをしてベットに横になります。そのまま眠りにつきました。
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