第19話 葬儀屋の過去語りⅡ
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよ~
私は転生して乙女色の髪をしたお母さんと茶髪なお父さんのもとに生まれました。最初の方は前世のことを引きずりなかなかぶきっきらぼうな子供でしたが今となれば感情的な至って普通の女の子になりました。五歳になり異世界無双にあこがれた私はレイピアを取り出します。すると頭の中で流暢な日本語がこれはまさか、、、神?
最初は無視していました。神とやらが嫌いでしたので。ですが頭の中の声です。四六時中ずっと話しかけられているのでめちゃくちゃうざったいです。仕方ありません応えて差し上げましょう。
「あなた何者ですか?神ですか?」
[いかにも。我は神である!]
「・・・。痛い痛しい人ということで、さようなら。」
[ちょっと待ってください。冗談ですよ冗談。]
待っても何もあなた私から離れないじゃないですか。そこで私はふと思いつきました。ゴキブリ=神なんじゃね?ということに。
「それで何の用ですか?ゴキブリさん。」
[ゴキブリさんって神である私を虫と同格に扱うんですか!?]
「いえいえ。ゴキブリさんの方がこの世の中に貢献していると思います。」
[酷ーい。まあいいでしょう。別に用事はありませんが転生させたのは私なので感謝して欲しいだけです。]
「あーはい。ありがとうございます。」
[ちなみにあなたの思うような人間に何かをするなんてしてませんから安心してください。]
「別にもういいです。」
[ならいいのですがね。]
「どういうことですか?」
[深い意味はありませんよ。ですが気をつけてくださいね。ここは日本じゃないということを随時忘れないで下さい。]
「なんでアドバイスなんてするんですか?」
[そういう存在だからですよ。それではさようならまたいつか会いましょう。]
「もう二度会いたくはないですけどね。」
私はレイピアを振り出します。お母さんが家から出てきました。
「すみません。ラディアお稽古に続きをしましょうか。」
「はい!」
お母さんの剣技はそれはもうすごいものでした。どんなに早く打っても軽々と流されますし寸止めも首元ピッタリに剣を止めます。カッコイイですね。1年間そんな修行をしていたので私の腕前もだいぶあがりました。
それからも代わり映えのない日々が続きました。ああ今日も平和で素晴らしいですね。家族で毎週どこかに行って何かを食べていま私は幸せです。こんな日々を手放したくはないですね。
最近の私はお母さんと一緒に料理をしています。
され、、、、。さて問題です。私の一番得意な料理はなんでしょうか?
正解はクッキーでしたー。当たったら凄いですね。
私の誕生日の一週間前のことです。お父さんが車に荷物を詰めていました。
「お父さんどこかに出かけるんですか?」
「うん葬儀の依頼が入ってね。ラディアの誕生日の日には戻るから誕生日プレゼント楽しみしておいてね。」
「はい!お父さんも気をつけてくださいね?帰って来て一緒にケーキを食べましょう!」
「そうだね。それじゃあ行ってくる。」
「ちょっと待てください。これ持っていってください。お気を付けて。」
私はお母さんと一緒に作ったクッキーを渡します。
「ありがとう。それじゃあ頑張ってくるよ。いい子で待っててね。」
そう言ってお父さんは行ってしまいました。よく晴れた青い空のことでした。
私が6歳になった誕生日の時初めて洗車というものをしました。この車は私が生まれる前からずっとあるらしいですが新車のように綺麗ですね。
「お母さん。この車って何年目なんですか?」
「えーと3、40年くらいですかね。私が現役、お父さんと出会う前から乗っていますからかなり古いタイプですね。」
「そんなに乗っていてこんなに綺麗なんですか!?」
「そうですよ。部品を変えたり洗ったり磨いたりしてここまでの状態にしてるんですよ。」
「そうなんですか。いつか私も乗ることになるんでしょうか?」
「もうちょっと大きくなってからですね。」
「買い換えようとは思わなかったんですか?」
「今日はやけに質問が多いですね。思いませんでしたよ。愛着がわきますからね。」
「なるほど。じゃあ私も大事にします。」
「そうしてくださいね?」
「わかりました!」
「さてとだいぶ綺麗になりましたしお誕生会の準備をしましょうか!」
元々綺麗でしたけど、、、。それを言ってはいけない気がしたので言いませんでしたけど。
「はい!いきましょう。」
私達は家の中に入りました。外は冷たい雨が降っていました。
それからケーキを作ったり料理を作ってお父さんを待っていました。おかしい。なかなか帰ってきませんね。
「仕事が長引いてるみたいですね。仕方ありません先にいただきましょう。」
「・・・。そうですね。」
あんなに一生懸命に作ったのにいつもより寂しくがまったく味が感じられませんでした。
1日たってもお父さんは帰ってきませんでした。明らかにおかしいですね。何かの事件にでも巻き込まれたのでしょうか?心配です。
数日後国境警備隊が家に訪れました。お父さんの車を持って。
「目撃者によると旦那様は雨の日に川に流された子供を救いに飛び込んで子供を岸に投げた後力尽きそのまま流されたとのことです。」
「そ、、、ん、、、な、、、。」
お母さんは顔を手で押さえその場に崩れ落ちます。私はというと
「・・・。」
現実を受け止めきれないまま放心状態でました。
「お嬢さんこれお父さんからのプレゼントだと思うよ。」
そう言って国境警備隊のおじさんが両手を広げたほどの紙袋を差し出しました。
「・・・・・・。」
私は無言のままプレゼントを受け取ります。中を見ると腕時計と手紙が入っていました。
[ラディアへ
君が生まれてもう6年も経つんだなあ。時が経つのは早いものだね。ラディアは将来葬儀屋になりたいといってくれたのを覚えているかい?僕たちの後を継いでくれると思うと、とっても嬉しかったよ。
葬儀屋は時間を守るのがマナーだからね。6歳の誕生日プレゼントは腕時計にしてみたよ。ちょっと気が早かったかな?まあ持っていて困ることはないからね。
ラディアが立派な葬儀屋になったところを一目でも見てみたいな。今から楽しみだよ。その時は親離れしてるということだから寂しいけどね。頑張ってねずっと応援しているよ。
お父さんより ]
・・・・・・。時間守れてないじゃないですか。ケーキを一緒に食べるっていう約束だって。プレゼントがあったってお父さんがないなければ意味はないですよ!お父さんがいなければなにも、、、。
この気持ちを一人で抱えきることはできませんでした。現実をうけ止められていないのにこんな手紙まで渡されて一人じゃ耐えられませんでした。なのでお母さんにこう問いかけます。
「お母さんお父さんはどこに行ったの?」
幼い子供のように聞きました。本当は知っています。お父さんが帰らぬ人になったことも、お母さんだって辛いことも。それでも聞かずにはいられませんでした。6歳という立場に甘えてしまいました。それほど辛かったのですから。
「ごめんなさい、、、。」
え、、、。なんでお母さんが謝るんですか?意味が分からないです。私は拳をぎゅっと握りしめます。ああ世界はまた私から一つ大事なものを奪っていくんですね。
ただただ辛い時間が過ぎていきます。2日が経った今でもお母さんは部屋から出てきません。私はレイピアを闇雲に朝から晩まで振っていました。現実を受け入れるのを拒否するように。全てを忘れるように。皮肉にもかなり強くなれました。
3日目午後お母さんが部屋から出てきました。
「取り乱してしまってすみません。もう大丈夫です。」
「抱きついてもいいですか?」
私は2日間離れていたので急に甘えたくなってしまいました。お父さんもいませんので尚更。
「ええ。いいですよラディア。」
私はお母さんの胸に飛び込みます。そして大きな声で泣き出します。ただただ泣き続けます。ずっと我慢していたので長い間泣き止みませんでした。前世でもこんなに大きな声で泣いたことはないのに。改めて私は22歳ではなく6歳なんだなと思いました。
「バカですね。本当にバカですねあの人は。自分の子の誕生日に他の子を救っていなくなるなんて。」
大きな声で泣いていたので返事はできませんでした。でもお父さんのことを責めることはできませんでした。しかし無力な自分がただただ悔しかったです。
目を真っ赤にしながら窓を見ました。お父さんの遺体はまだ見つかっていないので葬儀もあげることができません。ゆっくり眠って欲しいのに、、、。
その日私とお母さんは白雪の国シュネーを歩きました。今思えば出身地なのにあまり知らない国でしたね。地元なのでジープには乗らないで歩いてまわりました。
「ここには私とお父さんが育った思い出の場所が沢山あるんですよ。」
「そうなんですか。最初はどこに行くんですか?」
「そうですね、、、。お昼がまだなので何か食べに行きましょう。」
「わかりました。どこにします?」
「お勧めの場所があるんですよ。」
お母さんは少し笑ってこちらを見ました。笑顔が戻って何よりですが作り笑顔じゃないですよね?無理はしてほしくないです。
店につきました。レンガ造りの大きなカフェでした。
お母さんが注文している間ボーっと窓の外を見ました。もう夏ですね。
「お待たせしました。夏の風物詩セットです。」
すごく独特な名前の料理が運ばれてきました。大体野菜でしたが面白い味でしたね。細かく言うとプチプチ弾けるナスや火が出るほどピーマンなど名前以上に独特な味でした。
お母さんと顔を見合わせるとお互いに笑ってしまいました。悲しさを忘れられるような素晴らしい料理でした。
お会計の時です。
「また食べに来てくれたのかい?最近は来てくれなかったからね。寂しかったのよ。」
お店の店長さんでしょうか?白髪のお母さんと同じ年くらいのおば様でした。
「ええ。子供が生まれてからきてませんでしたよね。この子がラディアです。」
「は、初めましてラディアです。」
「あら、ご丁寧にどうも。私はあなたのお母さんの幼馴染のベコニアよ。」
それからしばらく立ち話をしました。すると立ち話はなんだからと店の奥の席に座って話始めました。それなり繫盛しているのに大丈夫何でしょうか?
「お互い色々あったもんねえ。」
お母さんは私のことやお父さんのことを話していました。そして話を聞き終えるとお母さんを抱きしめました。
「なんでもっと早く来てくれなかったのよ馬鹿。あなたは昔からそう、大事なことは全部自分で抱え込んで誰にも弱みを見せないもっと頼りなさいよ。あなたに比べればダメダメだけど。」
何だかいいですね。私も年を取るっても変わらない友人がいつか欲しいですね。
「あなたもよラディア。何かあったら私のところに来なさい。きっと力になるから。」
「はい、ありがとうございます。」
お店を会計を済ませてお店を後にしました。振り返りるとベコニアさんは手を振っていました私は手を振り返します。
「ベコニアさんはいつもあんな感じなんですよ。気配り上手な方だからお店も繫盛してるのでしょうね。」
「そうですね。単に面白美味しいっていうのもあると思いますが。」
「何だかすっきりしましたよ。我が子に弱みを見せたくはありませんでしたが。」
「私のことも頼りにしてくださいね?」
「ええ。頼りにしていますよラディア。」
自分でいったのに何だか照れくさいですね。
その後神社に行ったり博物館に行ったり色々な所に行きました。お父さんとも行きたかったな、、、。
私達は家に一旦戻り気晴らしにジープに乗ってドライブをしました。夕日が車内に差し込みます。ようやく晴れましたか。まったく皮肉にも世界は美しいですね。泣きすぎたり色々な所にいったせいで目を開けるのがしんどくなってきました。私は目を閉じてそのまま眠りについてしまいました。
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