第4話 お金で買えない物の話[後編]
作者 相沢友達
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよー。
現男爵様であるレイさんの娘さんであるセイラさんが男爵家の悲しい過去を語ってくださいました。愛する人を守るために戦ったテツという男性の話を。語り終わったころ丁度夕食の時間になり食べ終わった頃に尋ねます。予想外の反応に驚いたレイさんは執事のヒデさんに問います。「どういうことかしら。」と。
「そのままの意味です。国王陛下が依頼されたんです。」
「ろくでなしが依頼したとでも?」
「それは私が説明しましょう。」
突然語りだす私。
「その前に一ついいですか?」
「なによ。」
「お仕事をやられてるのはヤケなんですか?」
「違うわよ。」
「じゃあなぜ?」
「・・・。」
レイさんは大きく溜息を吐きました。
「私の夫テツのことはもう知ってるわね?」
「ええ。」
すこし遠くを見ながら語りだします。
「テツは本当にいい人だったわ。貴族どもの嫌がらせにも負けず毎日戦っていたわ、無理難題を押し付けられても必死にね。本当に死んでしまったけれども。今はあの人の代わりに私が無理難題を背負っているんだけどね。」
レイさんは苦笑いをしておりました。
「爵位を返そうとは思わなかったんですか?」
「なかったわね。」
「なぜ?」
「決まってるじゃない。生きていくためだからじゃない。戦争で5年間帰ってこなくて毎日不安でレナと二人でずっと待っていたわ。そしてやっと平穏な生活になったのよ。それを手放したらどうやって生きていくのよ。ただでさえ男爵家は貴族の中でも下っ端、ちょっとの無理をしなければ生活できないわ。私だけならまだいいわセイラがいるの。セイラが成人するまではここは必要なの!だからよ。」
「セイラさんもそんなことって望んでいませんよ。」
「そうだよお母さん!私そんな贅沢な生活望んでないよ!」
「理由は本当にそれだけなんですか?」
「そうね。他にもあるわ、あの人生きた証だからよ。あの人が私たちに今までの心配かけた分いい思いをして欲しいから無茶していたのよ。私もセイラにちょっとでもいい思いをしてほしいから無茶していても辛くないわ。むしろここで無茶しなければあの人の生き様を否定することになっちゃうじゃない。こっちの方が本音かしらね。さっきの理由だと男爵家として生きる以外にも方法はあるしね。」
「本当にそうなんですか?」
「そうよ、それよりもさっきセイラもって言ってたわよねあと誰よ。」
「決まってるじゃありませんか。テツさんですよ。」
「は?」
そして私も語ります。ここに来るまでに何があったかを。
この国に来たばかりの時です。門番さんに密書とペンダントを見せ楽々国に入ろうとしたら門番さんに止められました。ん?入国審査は終わったはずですが?
「お待ちください。葬儀屋様国王陛下がお呼びしております。」
なんだか面倒くさい臭いが漂ってきますね。
案内されたのは天井の高くあらゆる豪華そうなものが飾ってある大広間でした。
「よくぞ来たな、葬儀屋殿。」
「ご用件はなんですか。」
「お主せっかちだな。まあ良い堅苦しいのは嫌いだ楽にしっ。」
「ご用件は何ですか。」
「・・・。楽にしすぎだろに。」
長い前置きを飛ばして(飛ばさせて)国王様は話し出しました。
曰く「男爵家の葬儀の依頼は余が出したのよ。」
「へ?」
なんとも間抜けた声を出す私。
「驚くのも無理はない。だがのこれには理由はあるのだ。」
「さいですか、、、。」
「なんだ興味ないのか?」
「・・・。驚いてるだけです。それで、何でそんな回りくどいことをしたんですか?」
「それはだな、彼女らがあまりにも不憫だからだ。」
「男爵家のご家族ですか?」
「察しがいいな。家族ではなくレイ、男爵の婚約者がだが、その通りだ。彼女は男爵であるテツが死んでから自殺をくわだててな。余が悪だと吹き込めば復讐の為に生きようとするという魂胆よ。事実余が悪いところもあるしな。」
そして国王様は私に遺言書を渡します。
「この国には遺言書を書いた場合一度国が預かるという決まりがあるのだ。財産分与は公平か何か隠し事をしていないかなどを調べるためにな。」
そして私は遺言書に目を通します。そこには家族を愛した人の文字が綴られていました。
これだけ読んでもいまいち状況が理解できませんでしたが、、、、、。
[愛しいの家族へ
戦争で5年も留守にしていたのに待っていてありがとう。僕は君が一人で娘を育てて寂しく心細い思いをしていた分幸せになって欲しかった。
貴族になって二人を養っていけると思ったがそんな簡単ではなかった。その土地の統治は難しくもと庶民だけあって誰もいことを聞いてくれなかった。古いの屋敷を譲られたのは侯爵様が昔住んでいた所の方が皆協力してくれるだろうと仰ってくださったからだ。それから一生懸命に働いたよ。この地域の人は皆いい人たちだ。僕が元庶民の統治者だととしても受け入れてくれた、それどころか僕を戦争の英雄だと憧れの目で見てくれたよ。僕にとっては苦痛でしかなかったけれどね。
罪悪感だ。罪悪感がぬぐえないんだ。殺す必要のない人たちも殺した。相手の国の国王やその家族たちだって必要なかったはずだ。でも僕はこの戦争の立役者だからという理由だけで彼らの命を奪った。忘れたかったんだ。人を切る感触もそこから出る血の色と匂いを、そして被害者たちの泣き叫ぶ声も。全部だ。全部忘れたかったんだ。だから何も考えられないくらい仕事をやった。
今となっては後悔しているよ。この辛さを誰かに話せばよかった。一人で背負わなかったら良かったとね。君たちともっと生きていたかった。色々な所に行って、色々な物を見て、色々な料理を食べたかった。気付けばなかなか身勝手な人生だ。こんな僕を許してほしい。幸せになってくれて。セイラお母さんのことをよろしくな。ヒデ僕の家族を頼む。また来世があるというならそこでまた会おう。さよならだ。]
「レイさん、テツさんは自分の家族を守りたかったんですよね。今レイさんがやっていることはテツさんが一番望まなかったことじゃないですか?」
レイさんは涙を浮かべながらこう言いました。
「バカじゃない、どれだけお金があろうとも、どれだけ美味しいものを食べようともあなたがいなければ幸せなんかじゃないわよ。お金で命は買えないのよ。これじゃ私も馬鹿じゃない。」
「そんなに責めないでください。自分自身もテツさんのことも。」
「あなたに何がわかるのよ!」
真っ赤な顔でにらんできました。怖いです。でも私も負けんと言います。
「そうかもしれません。私は葬儀屋です。そこまでに何があったなんて知る由もしもありません。そして人はいつかは死んでしまいます。でも残された人は生きなければなりません。どんなことがあろうと生きていかなければならないんです。生きていたらきっといいことがあるなんてそんな無責任なことは言いません。これまで仕事をしてきて遺族方でおかしくなってしまった人もいました。でも大抵は死と向き合いその人の思いを繋いで生きていこうと決めた方でした。私はそういった方々がとてもまぶしくそして美しく見えました。いやなことはありますがけれど私はこの仕事が大好きです。ですのでそんな風に思いを汚さずに生きてください。」
しばらく沈黙の時間が続きました。あれ?またやらかしちゃいましたかと内心焦っておりましたが、そうではなかったみたいです。
「お母さんもお父さんも馬鹿じゃないよ。悪いには戦争だよ。お父さんを狂わせた戦争が悪いのよ。」
「そうね。誰も悪くなかったわね。国王陛下には悪いこと言ったわね。思い込みだったわけだし。セイラ久し振りにどこか出かけよっか。昔お父さんと行ったお店周りなんていいかもしれないわね。」
「うん!そうだね!」
二人とも花が咲いたように笑顔になりました。
ヒデさんが涙ぐみながらその様子を見ています。あれ私の居場所が、、、、、。
それから私は葬儀の準備に取り掛かりました。忙しかったですがヒデさんが手伝ってくださいましたし、レイさんがテツさんの死を忘れられるぐらいセイラさんと楽しんでいたのでほっこりしながら葬儀の日を迎えられました。
ここで葬儀屋の仕事パート2を紹介しようと思います。今回は主に葬儀屋4(第二話参照)の内容が決まり終わった時です。
1、遺体に損傷があった場合写真を見て修復。
2、お通夜の手配
3、葬儀・告別式の手配
以上です。後は火葬したりお墓に骨を収めたりですね。それぞれの国々で葬儀の文化も違うわけですから共通しているのはこれくらいですかね?もちろんこの三つもやってはいけない文化もあるみたいですが。
その日は少しばかり雲のかかっていた晴れの日でした。太陽の涙のような雲でした。まるでこの国の人たちの気持ちを代弁しているかのような。天気同様国王様や他の貴族の方々そしてこの国のすべての人々が自国の英雄の死を嘆いておりました。
「遺族を代表いたしまして皆様に一言ご挨拶申し上げます。私は故人テツの婚約者であるレイでございます。本日はお忙しいところを、テツの葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます。このように大勢の方々に見送りいただきさぞ故人も喜んでいることと存じます。生前、故人に寄せられた皆様のご厚情に対し、心より御礼申し上げます。私たち家族をいつでも守ってくださいました。彼との思い出は語りつくせないほどございますが特に心に残っているお話を語らしていただきまます。」
それはテツさんらしいエピソードであり優しくクスッとくるようなものでもありました。
「残された私どもは未熟ではありますが、皆様方には、今後とも故人の生前同様にお付き合いいただき、ご指導いただけますことをお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。」
長くもあっという間に終わってしまう時間でした。これにて私の依頼は終了ですね。
火葬された遺体をお墓のところに持っていき埋めた後その上に石碑を立てます。英雄ですから大きなお墓と大きな石碑でした。なんだかこの感じ懐かしいですね。ふとそんなことを考えているとレイさんが近づいてきました。
「本日はありがとう。最高の葬儀だったわ。」
「いえいえ葬儀屋ですので。」
したり顔でそう答えるとレイさんはクスッと笑いました。
「これ、少ないかもしれなけど報酬だわ。」
袋の中にはぎっしり大金貨がつまっておりました。
ちなみに大金貨は金貨十枚の価値があり金貨は日本で言うと3万円程です。
「え!こんなにいいんですか?」
国王様からも報酬もらったんですが、、、、、。
「いいのよ。それにお金で買えない物も教えてくれたしね。」
私は遠慮なく報酬を受け取りました。
「ところでこれからどうするんですか?」
「この国で男爵家を相続するわ。国からの無理難題さえなければそこまで大変じゃないし本当は収入も悪くないしね。けどねあの子この一件で葬儀屋になりたいってきかないのよ。まあ世界を見て欲しかったからいいんだけどね。あなたがそれほどかっこよかったのね。嫉妬ちゃうわ。」
「・・・。そんなにいいことばかりではありませんがね、、、、。」
「あら、嫌いなの?」
「いえ、大好きですよ。好きな時に家にも帰れますし。人と触れ合うことが出来ます。昔だったら考えられませんから。」
「昔っていつよ、、、、、。まあいいわそろそろ行くんでしょ?」
「そうですね。ビザも切れますしね。」
私はジープに乗り込みます。新しい依頼がもう来ていました。
「それではさようならセイラさんによろしくお伝えください。」
「ええまた来なさいな。歓迎するわ。」
にっこりと笑っておられました。出逢った頃の冷たいレイさんとはまるで別人でした。
これ以上はこの国が名残惜しくなってしまうので早々に旅立つとしましょう。
そう思いアクセルを踏みつけます。とても重いアクセルでした。
「行っちゃったわね・・・・・・。」
「は、は、はあ。ラディアさん行っちゃったの?」
走ってきたせいか息の上がりながらセイラさんは悲しそうに尋ねます。
「また会えるわよ。」
頭を撫でながらそう返しました。
「お礼まだ伝えてなかったのに、そうだね!葬儀屋になればまた会えるよね。」
そして彼女らは後ろを振り返ります。そして自分たちの愛した自宅へと戻って行きました。
大きな国門を通り抜け次の依頼主のところまで行きます。初めて来た日のように少しばかり肌寒かったですが心なしか今日は暖かく感じます来た時のような晴れの日ではありませんでしたがね。
はぁ休みが欲しいですねなんて考えながら次の国に向かうのでした。最後に一つだけ聞きますが私の名前忘れてないですよね?今回出てきませんでしたが。それじゃあ一斉のせいでいてみましょう。一斉のせいで!どうですか?間違えませんでしたか?正解はラディアなのでした。葬儀屋ではないですよ。それではまた会いましょう。さようなら!
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