第5話 愛する者の為に
作者 相沢友達
皆さんは大事なものって何かありますか?家族?友達?恋人?まあどれでもいいとしてその人の為ならどこまでできますか?愛する人の為に何かをなそうとする二人。これはそういったお話です。
皆さんこんにちは、こんばんは!お久しぶりです。葬儀屋のラディアです。私は転生したことは皆さんご存知でしょう。なのでこの世界のことを少しお話しましょう。
なんとこの異世界、人間単体では魔法は使えません。アーティファクトというものを使えば使えるみたいですが。スキルというものはありません。異世界のくせーに。アーティファクトは迷宮を攻略すれば手に入るみたいです。私は持っていませんが。魔王なんてものはいます。恐ろしいくらいい他種族との戦争がないんです。人間同士はありますが。
それじゃあほぼ地球と変わらないかと言われればそうでもありません。地球では見たことない動物や亜人などが多くいます。例とすれば鬼とかエルフとか獣人とかですねドラゴンや幽霊なんかもいます。
国も数も全然違いますし大きさも違います。後は文明ですね。なんとこの世界、車があるんです。汽車もあります。飛行機はありません。銃もないのです。そこは異世界らしい。異世界の匙加減がいまいちわかりませんが、、、。
要するに転生してもそんなに変わらないということだけ頭に入れておいてください。間違ってもチート無双なんて考えないでくださいね。私はレイピアしか使えませんから。
そんなことを説明しているうち依頼を受けた村に着きました。山奥にある村なのにまったく迷わずに来れました。なぜかって?そんなの簡単ですよ。山が焼けた後だったからか木が一本もなかったですもん。この村の資料はなかったのでどういう村かはわかりかねますが、、、。
わかったことは彼方者が誕生日の日に亡くなったということその人に恋人がいるということですね。羨ましくなんてないですよ。全然。
村について間もないころでした。急におじいさんに話しかけられたのです。
「おや、ここに何かご用かな?」
「葬儀の依頼できたのですけれども。」
「なんと!村長のお客様でしたか!しばしお待ちを村長を呼んできます。」
依頼主様って村長さんなんですね。
少しばかり周りを見渡します。やはり山火事があったのでしょう。山に近い家は燃えた跡がありました。10分程度待っていると村長らしきお爺さんが出て来ました。
「初めまして葬儀屋殿。わしは村長のルージじゃよ。」
わしとかじゃとか地球じゃマンガでしか聞いたことない方が多いと思いますがこの世界ではよくあることです。
「初めましてルージさん。私は葬儀屋のラディアです。ご依頼ありがとうございます。」
「こちらこそ。わしの孫娘のアモーの葬儀を引き受けていただいたこと感謝します。」
「お孫様でしたか、、、。心中お察しいたします。」
このような葬儀屋の典型的な挨拶を交わし、アモーさんも元に向かいます。死ぬ方じゃないですよ。
「これは酷いですね。」
などと親族が目の前にいるにもかかわらずこのようなセリフを言うのでした。
でも実際酷かったんですよ。そこには真っ黒になったアモーさんの姿がありました。あっちこっちの骨がボロボロになっておりました。特に頭なんて原型をとどめていませんでした。
「よくこれでアモーさんだとわかりましたね。」
「結婚指輪があるじゃろ。それを見たんじゃ。村が大好きな子じゃった。」
目を伏せながらルージさんは伝えてくださいました。これ以上は申し訳ないですね。それに気になることがいくつかありますのでゆっくり見たかったので。
「一度家に帰りましょうか。ずっとここにいるのはお辛いでしょう。」
「すまないのう。」
「いえいえ。帰ったら詳しいお話を聞かせてください。」
そう言い私たちはルージさんの家に向かいました。
「えっと、、、。アモーさんの旦那様はどちらに?」
家に帰っても時計の針の音しかしません。この雰囲気は息苦しかったので話を進ませました。
「ヤハウェはアモーがいなくなったショックで部屋に引きこもっておる。」
「失礼ながらヤハウェさんはお仕事って何されてたんですか?」
「猟師をしておった。そうじゃのう。これ以上は葬儀屋殿に失礼か、、、。」
吐き捨てたようにそう言ったルージさんはこう続けました。
「この事故のことをお話します。実は、、、。」
そしてルージさんの口から語られたのは愛する二人男女の話でした。そして私が疑問に思ったことが更に疑問になる話でした。一部納得しましたが。
この付近は山で囲まれているが故に農作物が育ちにくい環境でした。その代わりに山の幸が充実しておりました。その為何かめでたい日だった場合男が猟をして豪華な食事で祝う風習があるそうでその日もヤハウェさんはアモーさんのためにクッションという名の動物[猪に近い動物といえばおわかりいただけますでしょうか。違うのは大きさだけでしょう。大人の個体であれば全長2m程になります]を狩るために山に入りました。
しかしここで悲劇が起こります。山火事が起こりました。発火したのは遠くだったのでここまでくるには時間がかかる、それが悪かったのでしょうアモーさんがヤハウェさんに山火事を伝えにいくと行ってしまったのです。アモーさんは村長さんの娘であったこともあるもでしょう。
山にひとりで入ったことがなかったので山を少しばかりなめていた所があったのでしょう。山火事の恐ろしい所は火や煙だけではありません。動物たちの大移動です。そしてヤハウェさんが戻って来ました。その背には大きなクッションが、そして腕の中には動物たちに踏まれた後山火事に巻き込まれたアモーさんがありました。
「これがこの度の事故の全貌じゃよ。止められんかった。止めていればアモーを失うことはなかったのじゃ。」
「でも秘密裏だったんですよね?」
「それでも後悔だけは消えないんじゃ!」
ルージさんが怒鳴り声をあげたので私は思わず飛び上がってしまいました。リアルで。
「すまん。驚かすつもりはなかったんじゃ。ただ平常心を保つことで精一杯で、、、。」
「こちらこそすみません。配慮が足りませんでした。」
もしかして私って空気読めないタイプの人間なのではといまさらながらに思った次第であります。
その日はルージさんが手配してくださった宿屋に泊まりました。なかなかいい湯でしたよ。しかしルージさんのさっきの話を聞いて腑に落ちない点があります。なぜ焼けていたということです。あそこまで焼けたということは長い間放置されたということです。遠くに火があるのにですよ?まるで誰かがその場で火をつけたみたいなそんな感じです。でも山にいたのって、、、、、。
さて黒焦げになった遺体を直すのも葬儀屋の仕事です。写真をみて顔や胴体を復元していきます。こういうのは先生に教えてもらうのですが先生の話はまた別の機会に。一日中仕事をし続けてようやく終わりました。私って意外と器用なんですよ!
明日が葬儀の日なので葬儀の打ち合わせも準備も終わりましたしそろそろ宿屋に帰りますか。そして私はルージさんの家を発ちました。私の手には封筒が握られていました。
「ねえ。ジープさん。引っ掛かってることを言うべきでしょうか?」
私は困った時運転しながら話しかけます。まあ返事は当然のこと返ってきませんが独り言よりはましでしょう。
「葬儀屋殿本当にありがとう。アモーもこれでゆっくり眠れるわい。」
「力になれたのであれば光栄です。アモーさんのご冥福をお祈りいたします。」
「ありがとう。旅路気を付けてるんじゃぞ。」
「こちらこそ。どうかお元気で。」
アモーさんの葬儀が終わり遺体が土に埋まります。この村では亡くなった人は土に埋めるというのが文化らしく自然に返すという意味などが含まれてるそうですよ。
最後にこうした挨拶を交わし私は村を旅立ちます。昨日考えたことは結局言わないでおきました。誰もこれ以上悲しませたくなかったので。そして山の頂上を目指します。ヤハウェさんと約束した場所へ。
「やあ、遅かったね。」
手を後ろで組み合わせヤハウェさんはそういいました。私はヤハウェさんから距離を取ります。何をしでかすかわからなかったので。
「アモーさんの葬儀を行っていたので参加しなくてもよかったんですか?」
「僕にはもう関係ないことだしね。」
「薄情ですね、、、。アモーさんを殺したからですか?」
「・・・。すごいな村の奴らは誰も気がつかなかったのに葬儀屋はそんなに頭が切れるのかい?」
「さあ?」
皆さんも気づいていましよね?
「そうだよ。僕が殺した。でも殺すつもりなんて1mmもなかったんだ。本当さ」
要るに事件の真相はこうだったのです。
ヤハウェさんに山火事のことを伝えにいこう山に入りました。一方そのころクッションを狩るためにあらゆるところにトラップを仕掛けていったヤハウェさんはなかなかトラップに獲物がかからないことにイライラしていました。
そこでヤハウェさんにとってはラッキーなことが起こります。山火事です。動物たちが大移動してくるので沢山の獲物を取ることができます。そしてヤハウェさんは山火事の恐ろしさを知っていました。火に驚き興奮した動物たちは襲ってくる場合があるということです。そしてその時が訪れます。ゴソゴソと音が鳴ります。
チャンス到来だと感じたのでしょう。それが人だとそして自分の婚約者だと知らずに弓を放ちます。まさか山火事の時に山に入ると馬鹿が自分以外にいるなんて思わなかったのでしょう。そう1mmも。
放った弓矢は不幸にもアモーさんの頭に命中してしまいました。その時は何は起こったのかわからなかったのでしょう。しかし時が過ぎれば過ぎるほど現実に戻されます。戻ってきたからには後は簡単です。バレないように山に火を付けてアモーさんを焼き動物たちに踏まれたかのように隠蔽しました。これが今回の事故の真の全貌だったのです。
「ということですね?」
「少し違うとこもあるけど。正解だよ。」
あっさりと認めますね。私は一番気になったことを聞きます。
「それでなんで私をここに呼んだんですか?」
「君がこのこと気づいていたからかな。」
そう言いヤハウェさんは組んでいた手をほどきました。右手には包丁を持っていました。
「まさか!やめなさい!」
とっさに止めようとしましたが間に合いませんでした。ヤハウェさんは包丁で自分の肺付近を深く刺しました。貫通する勢いで。肺付近なので即死はしません。しかし止められなかった以上彼を助けるすべはありませんでした。山奥でしたから病院なんてないですし。私にできることは止血をして出来るだけ長くこの世にとどめることだけでした。
「そんな。どうして、そんな簡単に命を捨てられるんですか。」
「愛する人への償いかな。」
「それは遺族にするべきです。あななは逃げただけじゃないですか、、、。」
「ハハハ。逃げてるだけかもしれないけどさ、あの村の連中はアモーが山に入ることを止めなかった。あいつらも責任を取ってもらわないといけないしね。」
「愛する人の為ですか。」
「そうさ。」
気づけば目から熱いものが流れていました。彼に同情したからかもしれません。遺族に私情をはさむなんて普段はしないのですが、、、。
「僕のためなんかに泣いてくれるのかい?君は優しいんだね。」
「こんな、こんな終わり方で本当に、、、」
「そうだよ。僕はあの人と一緒になりたいんだ、、、。」
そこで言葉は途切れました。
小さくてお粗末ながらもお墓を作りそこにヤハウェさんを埋めました。お互いがお互いを愛した結果のでしょうか。後味の悪すぎる終わり方で良かったのでしょうか。私は葬儀屋です。これも仕事なんだと割り切るしかないのでしょうか。あまりのも現実離れしたあり得ない光景を目の当たりにし、そこから逃げるようにジープを走らせます。そこにいれば私も愛する物を失いそうでしたから。
およそ20分程でしょうか?ジープを走らせていると少しばかり大きな湖がありました。
そして湖の周りには火薬臭さと共に多くの獣の焼けたあとがありました。まるで誰かの怒りがそこに現れたかのような、、、。もしかしたらこの先にも同じような風景があるのかもしれません。あの村も、、、。まさかね。私はゾッとし肩を震わせます。私が通ってきた道から爆発音が聞こえたからです。振り返る勇気なんてありませんでした。振り返ったらわかってしまうから。もしまたあの村に訪れることがあるのならそれはまた仕事で来ることになるのでしょうから。
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