第3話 お金で買えない物の話[中編]
作者 相沢友達
さーて前回のおさらいサラッとやっちゃうよー。
塀の国リザレンストにやってきた私は前男爵様の葬儀を行うために屋敷を訪れたのですが、現男爵様であるレイさんの対応はこれまあ!ひどいものでイラついたまま案内されたベットに横になって眠りにつきました。しばらくするとノックの音が聞こえてドアを開けると16歳程の少女が立っておりました。そしてこう言い放ったのでした「お母さんを助けて。」と
「・・・。えーとー、失礼ながらどちら様で?」
「あ、すみません。自己紹介忘れてました。私は男爵家の娘のセイラと申します。ヒデさんからこちらに葬儀屋様がいらっしゃるとお聞きして参りました。よろしくお願いいたします。」
「お嬢様でしたか!それっは申し訳ないです。改めまして葬儀屋のラディアです。一週間よろしくお願いします。それでさっきの言葉はどういう意味ですか?」
「聞いてくださるんですか?」
「もちろん!遺族の悩みを解決して最高の葬儀にするのも私の役目ですから」
「ありがとうございます!少しばかり長い話になるかもしれませんがいいですか?」
「夕食までならいいと思いますよ。とりあえず入ってください。」
私はセイラさんを部屋に入れました。寝起きなのでコーヒーも一緒に。
話を聞きやすいように電気をつけました。目が覚めたばかりなのでより眩しく感じます。思わず顔をしかめてしまいました。
そして彼女の口から語られたのはとても悲しい話で同時に私が疑問に思っていたことが解消される話でした。
以前この国はとても小さく貧しい国でした。唯一誇れるのは大きな城塞でした。それ以外はなんの取り柄くて、周りの国々からは貧乏人の国だとか壁だけの国とかいわれていたそうです。そしていつの時代も弱いものは打倒されるものです。
そしてこの国も例外ではありませんでした。隣の大きな国が攻めてきたのです。国は急いで徴兵令を出し、毎日のように国門近くには若い人が国を守るために集まっていました。それが15年前までの話。
とある青年も国の防衛のため軍隊に志願しました。その青年の名前はテツと言いました。テツさんは一般住民でしたがとても武の才に恵まれていました。この時代の主な武器は剣と弓矢でした。ある程度鍛錬を積んだと兵士として戦場に送り出されました。
テツさんには婚約者がおりお腹には赤ちゃんがいたそうです。婚約者とそのお腹にいる赤ちゃんを守るために志願したそうです。過酷な戦場でテツさんは先頭を次々と切り敵を斬り殺していったそうです。テツさんの活躍もありいつの間にか防衛戦争が侵略戦争に変わっていきました。そして5年がたち敵国を滅ぼして今の領土を勝ち取っり平和な時代の幕開けとなりました。
ちなみにテツさんの婚約者の名前はレイといったそうです。そしてお腹にいた赤ちゃんは皆さんおわかりセイラさんだったわけです。
その後テツさんは戦争の功績を称えられ男爵家の爵位を与えられました。しかしいくら英雄でも一般人が貴族になるのはよく思われなかったみたいであらゆる嫌がらせを受けたそうです。無理難題の依頼を多数押し付けられたり、いらなくなったボロボロの屋敷を買わされたりと。
しかしテツさんは人のよさからなのか全て引き受けました。その仕事をすべて家族には秘密で一人で行い、そうした生活を続けていたのでとうとう倒れてしまいました。
そして遺言を書き亡くなったそうです。レイさんが無理難題な依頼を多数引き受けていたのを知ったのはテツさんが亡くなったあとでとても悔みきれず、、、、、。
「お母さんはお父さんの引き受けた仕事を一人でやるっていって聞かないんです このままじゃお母さんも過労死してしまいます、、、、、。」
セイラさんは涙を流しながら語ってくれました。
「爵位を返上すればいいのでは?」
と、雰囲気をぶち壊しにする一言を放つ私。
「爵位は簡単に返上出来ないんです!まじめに考えてくださいくれませんか?」
怒られてしまいました。いい案だと思ったんですが、、、。やってますよねできるなら。
「わかりました。夕食まで考えてさせてください。解決して見せます!」
「本当ですか?」
「ええ、もちろんです。私は葬儀屋なので。」
「わかりました。お願いします。」
ドアがノックされました。私はハっと目覚ましを見ました。時計は19時を指しています。考える時間くれないんですね・・・・・。
「葬儀屋様、夕食の準備が出来ましたのでお迎えにあがりました。」
「ありがとうございます、、、。」
「どうかされましたか?」
「い、いえ出来ればもう少し時間が欲しかったかなと、、、。」
「すみません。規則ですので。」
「とんでもないです。それに男爵様にグチグチ言われるのは勘弁ですからね。」
ヒデさんは苦笑いしていましたがとても生き生きしておりました。そして私はこう質問してみました。
「ヒデさんはここのお仕事がお好きなんですか?」
突然の質問に少し驚きましたが笑顔でこう返してくださいました。
「ええ、もちろんです。」と。
「では少し協力してくださいませんか?」
「もちろん!私にできることであれば何なりとお申し付けください。」
「ありがとうございます。行きましょうかセイラさん。」
これですべてのピースが揃いました。後はどうなるかは神のみぞ知るということですね。階段を降る途中窓の外を見ます。太陽が沈みかけておりました。
「あら、遅かったわね。先食べてるわよ。」
・・・・・・・。規則とは一体?
今日の夕食は白米、刺身の盛り合わせ、野菜を煮込んだ鍋、味噌汁、茶碗蒸し、焼き魚その他でした。
貴族が食べる料理だけあってなかなか美味でした。ちょうど皆さんの食事が済んだところがチャンスでしょう。ヒデさんにアイコンタクトを取りました。
「レイ様、葬儀屋様からお話があるそうで。」
「明日にしてちょうだい。仕事がまだあるんだから。」
「いえ、これは大事なお話なのです。」
「あなたがそこまでいうのなら、、、。ちょっとだけよ。」
「ありがとうございます。」
「それで何よ、くだらない事なら許さないわよ。」
私が言うことくだらないってほんと失礼ですね。私はレイさんと違って口には出しませんが。そもそもあったばかりなのに、、、。今更でしたね。
「ヒデさん、ありがとうございました。ところで男爵様葬儀屋の仕事ってなんにかご存知でしょうか?」
「依頼された葬儀を最高のものにする、そのために依頼主とその家族の悩みを解消するでしょう?そんなくだらないことを確かめるために時間を取ったのかしら?」
お怒りみたいです。そんなことって私の仕事を侮辱された気がしましたが気のせいでしょう。
「今回の依頼主って誰だかご存知ですか?」
「ヒデじゃないのかしら、いい加減に」
私は勝ち誇った顔をして言います。
「違いますよ。今回の依頼主は国王陛下からです。」
だから言ったでしょう。男爵様からの依頼だったとね。
レイさんは驚いた顔をして尋ねます。ヒデさんに尋ねます。
「どういうことかしら。」と。
あれ?私じゃないんですね。
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