予告編その二 粉の日
~ 五月七日(金) 粉の日 ~
※
誰にも気取られず。
自在に消えたり現れたり。
美味かったな、お好み焼き。
あたしはたこ焼きが絶品だったって思うのよん!
日に日に料理が上手くなってくよな、立哉のやつ~。
パラガスは口を開かないで欲しいのよん!
まったくだ。お前のせいでこうして立たされてるってのに。
ほんとよ!
舞浜だけはしれっと授業受けてるけどな。あいつの回避能力はなんなんだ?
先生が駆け込んできたときにはいなかったよな~?
今日は忍者だったからねー。窓から逃げ出したんじゃない?
壁に張りついて隠れてたりな。
きゃははっ!
でもさ~、優太~。
なんだよ。しゃべるなって言ったろうが。
くノ一って~、すげえエロワードだよな~?
あんたはほんと口開くな!
むぐ~! ひょにゅーが、くはりかたひらで、はんぶんまるみへ……。
ついでに鼻もふさいでおこう。
ふんむむむ~!
おしりは?
武士の情けだ。そこは呼吸に必要だからやめておけ。
んむううう~! んんんんんん~!
あたし、今日ばっかりはこいつと一緒に立たされるの納得いかないんだけど!
俺に当たるな。そんな暇あったら、もっとしっかり口を閉めておけ。
んむ……! んん……!
うるさい! あんたが欲張って焼ける前のたこ焼き取ろうとしたからいけないんでしょ!?
まさか、鉄板ごとコンロ倒してボヤ騒ぎになるとはな……。
でも、誰もケガしなくて良かったね!
確かに。……まあ、このあと一人、けが人が出るかもしれんが。
死人じゃない?
確かに。
ん…………。
ほんと良かったよ。怪我なんかしたらさ、秋乃ちゃんとの約束果たせなくなっちゃうから!
なんか約束したんだ。
うん! 陸上大会、頑張ろうねって!
そうなんだ。そんなお前に朗報があるぞ、キッカ。
ろーほー?
この学校、陸上大会は全員ガチで挑むのが有名らしいんだ。
いやいや! ゆうても三分の一ぐらいでしょ、ガチ勢!
ぷす…………。
ほんとほんと。去年は開催しなかったから知らなかったんだけどさ、三年が口揃えて言ってた。
ほえー、マジか! 楽しみなのよん!
しかもな? 一番盛り上がる競技を聞いたら、お前きっと爆笑する。
え? なになに!?
二人三脚。
マジか! きゃははははははは!!!
…………。
全速力でトラックを駆け抜けるらしい。
バカじゃね!? いやもちろん褒め言葉だけどさ!
そうだな。お前も思いっきりやると良いぞ。
よっしゃ! 同じチームだけど、打倒舞浜ちゃんよん!
おお、良い心構えだ。
燃えて来た!
ははっ。火事おこすなよ?
無い無い! そしたらこいつと同罪になっちゃうじゃ……? あれ?
やべ! 大丈夫か!?
……………………ぷす。
うーん……。辛うじて息してるから大丈夫かな?
尻に耳を当てるな。
だいじょぶ。今、息吐いてた。
念のため、保健室運んどくか。……よっこらせ。
あぶねえあぶねえ。もう一個死体作るとこだった!
保坂が既に死体になってること前提で話すなよ……。
だってさ、フィフティーフィフティーじゃね?
まあ、そうなんだが。……大丈夫かな、あいつ。
大丈夫かもね。立つことにかけては天下一でしょ、保坂ちゃんなら。
まあな。
――そんなやり取りなどつゆ知らず。
屋上の鉄柵の上に立たされていた俺は。
必死の思いでバランスをとり続けていた。
……いや。
マジ必死。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます