第10話 大切なのは素敵なタイミング?
現場班長は関東のこの工場から関西に転勤となった。
それを追う様に亜依ちゃんは会社を退社していった。
亜依ちゃんが居なくなって・・・
また俺の作業帽はシワシワに逆戻り。
まるで抜け殻の様になった俺は、暫く後にとんでもないミスをする。
普段、原料を中和するのに消石灰を使っている。
バケツを計りに載せて柄杓でボンボンと数キロ単位で計量するのだが・・・
その日もいつもと同じ様に消石灰の袋を運んでて・・・
ただいつもと違っていたのは袋を留める糸がほつれていた事。
薬品倉庫にかなりの量の消石灰をこぼしてしまった。
たちまち、倉庫内は粉が煙の様に舞い上がる。
粉でホワイトアウト状態になり、目も痛くてとりあえずゴーグルを取りに倉庫をでた。
その時、ご丁寧に倉庫の灯りを消した。
これが最悪の事だったみたい。
ゴーグルをつけて戻った俺は倉庫に入ろうと灯りをつける。
その瞬間、爆音と共に倉庫の扉が吹っ飛んだ。
蛍光灯のグローが着火点となり、粉塵爆発を起こしてしまった。
会社には消防や警察が来てこってり絞られる。
会社で俺の立場が悪くなり・・・
結局俺は会社を辞めてしまった。
俺は知り合いのツテを頼って、ルート販売の仕事に就いた。
社内では女っ気なし、販売先でも女っ気なし。
だか、中途の新人は真面目にコツコツ仕事するしかなかった。
半年位経った頃、幼馴染みの栗原幸男から「小学校の時のメンバーで同窓会するから来なよ!」
と声をかけられた。
「なあ?美羽ちゃん来るかな?」
山本美羽は俺の初恋の人だ。
結局、想いはつたえられなかったけど・・・
「美羽ちゃん? 来るって言ってたよ!」
たったそれだけの事で俺は嬉しくなった。
「幸男、特に用事も無いから俺も参加するよ。」
当日、知り合いの中華料理店で小学校時代の懐かしい話しを交わした。
小学校時代、おばやんと呼ばれていた娘が居て、
「街で友人に出会った時、おばやんとか呼ばれた事ないの?」ってきいてみた。
「それヤメてよね! 大人になってそれはシャレにならないなら!」
ってプゥとふくれたその目が怖かった。
2次会はカラオケ行こうという話になった。
10人だったから車3台で乗りあわせで行こうという事になって・・・
俺は流れで美羽が運転する車の助手席に座った。
後ろの席には美羽と仲が良かった女子二人が・・・
出発前、美羽がCDを入れて
「私、宇多田ヒカル好きなんだ〜 この曲いいよね〜 翔は誰が好きなの?」
なんてきいてきた。
瞬間的に告白しちゃえ〜って思った俺は・・・
「俺は、美羽かな!」
って告げた。
途端に、美羽は真っ赤になってうつむいた。
うしろに乗った女子2人はゲラゲラゲラゲラとウルサイ。
俺の一生をかけた告白なんだからそんなに笑うな!
しばらくしてから
「ありがとう!じゃ〜出発するね!」
とだけ告げて美羽からの返事はきけなかった。
それから一年位して・・・
美羽が俺も知ってる同級生と、結婚した話しをどこからかきいた。
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