第7話 卒業、就職そして・・・
研究ばかりで全く青春を謳歌できなかった大学時代だったけど・・・
社会人になったらきっとパラダイスが待ってるハズだ。
そんな淡い期待をもって俺は東証一部上場企業に就職となる。
でも、現実は社会を知らないヒヨッコには厳しいものだった。
入社、間もなくの4月は研修期間にあてられる。
全国に有る工場や販売会社で実際に仕事を体験という事で、都市部から電車で2時間かかる山間部の工場で一時勤務となった。
そこは企業街と呼ぶ様な場所だった。
昭和初期、この場所にこの工場が出来た事で街が出来上がったそうだ。
ここで、この街を象徴する様な話しを聞いた。
ある時、この工場に外部からイケメンが転 勤してきた。そのイケメンに地元の女子工 員がお弁当をつくって渡した。すると街中 に噂が広まり、みんながコイナカの噂を知 る事となった。
その噂が気になったイケメンは次に女子工 員がつくって渡したお弁当を断った。する と街中に“イケメンは冷たい人”という噂が 広まった。
・・・こんなプライバシーが無い工場❨街❩ってどうなのよ?
“どうかこの工場以外に配属されます様に!”
そんな事を願いながら、そこでの研修期間を過ごす。
研修期間終了後、俺は都市部に近い工場に配属となった。
しかし、そこも工場の敷地内に社宅、男子寮、女子寮があり、風呂やトイレは共同、部屋で使える電力は10Aまでと厳しい。
部屋でホットプレートとドライアー使っただけで隣りの部屋にまで被害が及ぶ世界だ。
部屋は8畳程だか、古めかしい。
水回りも共同なので、自炊はかなり難しい。
しかし、朝、昼、晩、工場の食堂が使えるので自炊している人はいない様だが・・・
女子寮はある。実際、数十人の女子は居る。
しかし、入口にはしっかり守衛がいるのでそこを通る事はたぶん無いだろう。
そこで働く女子社員は昔ながらの学校採用枠みたいな形で入って来るので、目立って活発という人はほとんど居ない。
ある時、食堂で夕飯を食べてたら、配膳をしていた女の子が声をかけてきた。
「私とは今日初めてですよね?今年入社で5月から配属なんですか?私も今年入った西野真里です。よろしくおねがいします。」
こぼれ落ちそうな大きな目のまる顔でかわいい女の子だった。
「まだ俺も分からない事ばかりなんで、よろしくおねがいします。」
彼女のはにかむ様な笑顔は可愛かった。
食堂も会社の社員が切り盛りしているので、会社は休日でも、食堂と風呂は動かさなければならない。
彼女達は休日出勤、変則勤務できっと大変だと思う。
俺の工場は2部制で、朝5時から夜24時まで動かしている。
早番は普通は2時までの勤務だったが、その日はトラブルで5時まで残業してた。
部屋に戻る途中、西日に夕焼け雲がきれいだった。
木漏れ日の様に光が当たる廊下で西野真理とすれ違い、「お疲れ様でした。」と声をかけられた。
俺は疲れていて頭がまわらなかった。
天使と出会ったと勘違いしてしまった。
危うく抱きつきそうになり、トラウマが蘇る事で踏みとどまる事ができた。
“後で絶対にデートの約束を”と思っていたら、「今度、彼とデートなんです。」という会話を聞いてしまって、暫くは仕事に影響していた。
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