【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第934話 マロン、順位に関係なくさっきのデザート大盛りは有効だから安心して
第934話 マロン、順位に関係なくさっきのデザート大盛りは有効だから安心して
結衣とマロンを送り届けた後、リルは白雪のパーティーを闘技場ダンジョンから連れ帰って来た。
最後の戦いが印象的だったせいで、カームが大会議室にいる参加者達の注目を浴びた。
自分に視線が集まっていると悟り、カームは両手をグッと握って頬に当てたポーズを取る。
「うぅ、みんなの視線が怖いよ」
「なんだ、さっきのはやっぱり演技か」
「そうですよね。こっちの方が素ですよね」
「まさかあんなドS悪女がカームちゃんの本性なはずないですよね」
ホッとしたように発言したのはマルオと理人、重治の3人だ。
(チョロくね? みんな騙されてるじゃん)
藍大はモンスター図鑑でカームの本性を知っていたから、マルオ達のようにカームのあざと可愛い仕草に騙されたりしなかった。
これで良いのかと藍大が白雪の方を見れば、白雪はバレてしまいましたかと苦笑した。
「むっ、主が白雪と通じ合ってる波動を感じる」
「サクラ、そんな波動なんて存在しないから落ち着こうね」
サクラは藍大と白雪が通じ合っていると判断し、それに対抗して横から藍大の腕に抱き着いた。
藍大はサクラに他人の前で過度に甘えられては困るから、その頭を撫でて落ち着かせた。
そんなやり取りをしている間に、スクリーンの向こうでは結衣がマロン以外の従魔を召喚していた。
残り4つの枠で召喚されたのは、リーパーウルフのポチ、アダンダラのタマ、クラウドシープのメメ、ボクサーパンダのシンシンである。
結衣が最初にテイムしたポチは、元々ハンターウルフだったが二度の進化を経てリーパーウルフになり、今では斥候と遊撃の役割を兼ねている。
タマはアサシンキャットだったけれど、二度の進化によって化け猫のアダンダラになり、後衛として攻撃とデバフを担当している。
クラウドシープのメメは水属性と氷属性、雷属性の魔法系アビリティを使う攻撃と支援を担当する後衛だ。
シンシンは種族名の通りボクサースタイルで戦うため、前衛でヘイトを集めて敵を殴ったり蹴ったりする。
MOF-1グランプリで有名なマロンだが、直接戦闘は他の従魔に任せて自分は回復と支援がメインである。
以上の5体が結衣と共に闘技場ダンジョンに突入した。
ボス部屋に入った結衣達を待ち受けていたのはタイムアタックで初めて登場するカンフュールだった。
これには大会議室で真奈も大喜びである。
「私のテイムしてないモフモフ! モフ神の私の知らないモフモフを用意して下さるなんて流石逢魔さんです!」
『やれやれ』
新しいモフモフの登場に歓喜する真奈にモフられ、ガルフは本当にこの主はしょうがないなと溜息をついた。
「クゥ~ン・・・」
「よしよし。俺が一緒だから大丈夫だ」
真奈のことはさておき、ボス部屋では結衣達の戦闘が始まっていた。
シンシンが<
カンフュールがシンシンの攻撃にグラついたところを狙い、タマが<
『メェ!』
メメが短く鳴いた直後に<
角から雷の衝撃が拡散してカンフュールが倒れると、ポチがカンフュールの背後から<
『チュッチュッチュ~』
『マロンは何もやってないでしょ?』
『チュア!? チュッチュ!』
後方でドヤ顔を披露していたマロンに結衣が冷静にツッコむと、マロンがそんなこと言わないでと言わんばかりに結衣に抗議した。
『マロンがいるからみんな頑張れたって言いたいの?』
『チュ』
『それなら解体もちゃんと手伝わないとね』
『チュ!』
マロンはわかったと頷いて解体作業を行うポチ達の背後に立ち、手伝うのではなく踊って応援した。
そんなことをすれば大会議室の
「モフモフダンスはいつ見ても良いね」
『わかったから和みながらモフらないで』
ガルフは真奈にモフられて嫌そうに抗議した。
他人のモフモフを見ながら自分をモフるのはどうなんだと思うガルフに対し、真奈はガルフの顔を覗き込む。
「ガルフってば嫉妬しちゃったの? ごめんね。ちゃんとモフモフするから」
『違う、そうじゃない』
ガルフの尻尾はすっかりペタンと下がっていた。
ガルフが真奈にモフられている一方、結衣のパーティーは2階のボス部屋に入っていた。
2階のフロアボスは墓場に扮したグレイヴマスターだった。
この個体の臭いがきつかったらしく、マロン達は揃って顔を顰めた。
『チュイ!』
マロンは臭いの原因をどうにかするべく、<
風船がグレイヴマスターの体にぶつかって割れ、その中身がかかったことで青白い炎がグレイヴマスターに燃え広がった。
『ご主人、あれはマロン成分配合のアンデッド型モンスター退治用の聖水だって』
「・・・マジか。大輝さんがリル達以外の力を使って完成させてるじゃん」
グレイヴマスターにかかったのは蒸留水にマロンの涙を混ぜた後、マロンが賛美歌を歌う隣で大輝があれこれ調整した結果できた聖水だ。
アンデッド型モンスターがこの聖水に触れると青白い炎が燃え上がり、この炎に触れ続けている限りダメージを受ける。
風船のサイズはハンドボール大であり、スクリーンに映し出された炎の勢いはどう考えてもやり過ぎだった。
結衣達は炎の勢いが強過ぎて手を出せなかったけれど、青白い炎に焼かれたグレイヴマスターはモンスターを召喚して消火させようとしても、召喚した瞬間に配下のアンデッド型モンスターが力尽きるので無駄に召喚するだけして力尽きた。
グレイヴマスターが力尽きたのを見て、マロンはやってやったぜと言いたげな表情で額を右前脚で拭った。
『チュウ』
『でかしたマロン。褒めて遣わす』
『チュウチュウ?』
『デザートを大盛りにする権利がほしいの? わかった。1回分だけ許可してあげる』
『チュッチュ~♪』
デザート大盛りの言質を取り、マロンは陽気にコサックを踊り始めた。
『マロン、嬉しいのはわかるけど今はタイムアタック中だよ。喜ぶのは後でね』
『チュウ!』
そうでしたと頭をペシッと叩くマロンの仕草は、カームと違う方向性であざとい。
残すところは3階のみなので、結衣のパーティーは3階に駆け上がってボス部屋に侵入した。
3階で結衣達を待ち構えていたのはヒュドラトレントだった。
ヒュドラトレントはすぐに攻撃に移り、ヒュドラの頭部を模った枝全てで地面を殴りつける。
『チュ!』
直感的にヤバいと感じたらしく、マロンが慌てて<
その数秒後、ヒュドラトレントは地面が揺れて動けなくした相手を狙って<
ヒュドラトレントは今のコンボで結衣達を仕留めるつもりだったが、マロンの直感によってそれを阻止されそうで顔を歪める。
安全なドームにいる間、攻撃が止むまでタマがデバフ系アビリティでヒュドラトレントの戦力を削り、メメが結衣達全員の能力値を底上げした。
猛毒の雨が止んだ後、マロンが<
シンシンから目が離せないヒュドラトレントに対し、ポチとタマ、メメが左右と後ろに回り込んで攻撃を仕掛けてダメージを与えていく。
ヒュドラトレントは削られていくHPにイラつき、広範囲攻撃をしかけようとしてはシンシンの<
HPとVITが高めなヒュドラトレントだったけれど、ペースは完全に結衣達に握られていたせいで20分かかったが力尽きて動かなくなった。
最後のヒュドラトレント戦に時間がかかったこともあり、結衣のパーティーの踏破タイムは45分33秒で惜しくも白雪のパーティーに届かず暫定3位になった。
その事実を知って心配そうな表情のマロンが結衣を見上げる。
『チュチュ、チュチュチュ?』
『マロン、順位に関係なくさっきのデザート大盛りの権利は有効だから安心して』
『チュウ♪』
マロンには踏破タイムよりもデザート大盛りの権利の方がよっぽど重要らしい。
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