第933話 カームさんマジパネェっす
白雪のパーティーを送って来るついでに、リルはマルオのパーティーを連れ帰って来た。
マルオは少し悔しそうな表情で藍大達に話しかけて来た。
「いやぁ、一番弟子として30分は切りたかったんですが、なかなか難しかったです」
「マルオお疲れ。見てた感じだと動きに目立った無駄があった訳でもないし、踏破タイムもなかなかのものだと思うぞ」
「その通りである。伊邪那美様と吾輩、モルガナのチョイスを簡単に突破されたら困るのだ」
「逢魔さんとブラドさんに言われたなら、これが俺達のベストなんですかねぇ。でも、もっと精進しますよ」
マルオは藍大達なら自分達の踏破タイムを軽々と超えて来ると思っているから、今の状態を限界と決めつけないでもっと頑張ると向上心のあるコメントをして自席に戻った。
その一方、闘技場ダンジョンの前で白雪は突入前の準備を済ませていた。
エルダーハンサのヨナとダマトリスのドリーが前衛で、モフトリスのカームとアンドレアルフスのルルが後衛だ。
カームとルルはそれぞれ気怠げな幼女とサンバの衣装を身にまとった幼女形態になっており、2人が並ぶと対照的である。
白雪のパーティーが1階のボス部屋に入ってみると、そこにはスフィンクスフレームが待機していた。
スフィンクスフレームは白雪達を待っていたと言わんばかりに<
『全員注目!』
アビリティの効果で白雪達を自分に釘付けにしてから、スフィンクスフレームは<
『そこのダウナー幼女、10秒以内に小さい方から21番目の素数を答えよ!』
『73』
まさかの即答である。
スフィンクスフレームはカームが即答するとは思わなかったから、狙い撃ちして出題したにもかかわらず即答された。
これには大会議室もざわついた。
「カームさんマジパネェっす」
「MOF-1グランプリでも賢かったもんなぁ」
「気怠そうにしてるだけで普通に頭良いじゃん」
大会議室でのリアクションが聞こえるはずないのだが、スクリーンに映し出されたカームはもっと褒めても良いんだぞとドヤ顔を披露していた。
<
『コケッ!』
ゴムボールのように簡単に吹き飛ばされたスフィンクスフレームに対し、ヨナが<
1戦目が5分で終わり、スフィンクスフレームを回収した白雪のパーティーは2階へと進んだ。
2階は水場のフロアに変わり、アビスクラーケンが待ち構えていた。
『ヨナ、<
『クワッ!』
白雪の指示を受け、ヨナは任せろと言わんばかりに鳴いて<
それにより、フロア内の水がカチコチに凍ってアビスクラーケンは身動きが取れなくなった。
水の中に潜れなくなった以上、アビスクラーケンに逃げ場はないから<
『ドリー、防いで!』
『コケッ!』
<
ドリーが器用に攻撃を捌くものだから、アビスクラーケンがムキになってドリーを攻撃する。
それを見て今がチャンスだとカームとルルが判断し、それぞれ<
左右から受けたダメージにより、アビスクラーケンも注意をドリーに向け過ぎたと判断してドリー以外にも攻撃を仕掛けようとする。
ところが、それはドリーによって防がれてしまう。
『コォケコッコォォォ!』
ドリーが<
そのせいでアビスクラーケンの深淵のレーザーはドリーに向かって放たれた。
そこに見せ場が来たと判断してカームが割って入り、<
このアビリティは受け流した敵の攻撃を敵に反射する効果があるため、アビスクラーケンはドリーを仕留めるつもりで撃った深淵のレーザーを自分が喰らってしまった。
アビスクラーケンが怯んだとわかると、ヨナがアビスクラーケンの背後から<
これでHPは一気に削られただけでなく、氷漬けにされたせいで動けなくなった。
アビスクラーケンからの攻撃がなくなれば、ドリーも自ら攻撃を仕掛けられるようになるので、<
1階のスフィンクスフレームを倒すのにほとんど時間をかけなかったこともあり、白雪はアビスクラーケンとの戦いにかかった時間を長く感じてしまった。
それでも、現時点で白雪の手元の時計では25分を過ぎたばかりだから、急いで戦利品回収を終わらせてヨナ達を連れて3階に移動した。
3階で白雪のパーティーが戦う際簿のフロアボスは三つ首の緑竜だった。
「やっとズメイが出たであるか。出て来ないんじゃないかと心配になったのだ」
スクリーンに映ったズメイを見てブラドがホッとした様子を見せた。
ズメイは藍大もダンジョンで見たことがなかったので、すぐにモンスター図鑑を視界に映し出して確認し始める。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ズメイ
性別:雄 Lv:100
-----------------------------------------
HP:3,500/3,500
MP:3,500/3,500
STR:3,500
VIT:3,500
DEX:3,500
AGI:3,000
INT:3,500
LUK:3,000
-----------------------------------------
称号:3階フロアボス
到達者
偏執狂
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:あの麗しき褐色の娘の首筋を舐めたい
-----------------------------------------
(変態じゃねえか!)
ズメイのステータスを確認し終えた藍大が真っ先に思ったのはズメイが変態だということだった。
もしも優月がこの場にいれば、ドラゴン図鑑でズメイの鑑定をしてしまうだろうからこの場にいなくてホッとした。
本来ならば、同時に3つのアビリティを駆使してそれらが一点に命中した時に威力が増加する<
スクリーンの向こうにいるズメイは、ルルを手に入れるには白雪達が邪魔だと判断して<
『その目、不快』
カームはルルを見るズメイの目が変態のそれだと察したらしく、<
自分の攻撃を反射されたのは予想外だったけれど、ズメイは慌てずに<
続けて<
ズメイがヴァンパイアの姿になったのを見て、ルルはポンと手を打った。
『私知ってる。あれって変態紳士って言うんでしょ?』
『ぐふっ!?』
ルルに変態紳士と呼ばれてズメイのメンタルに大きなダメージが入ったらしい。
実際のところが変態の癖に打たれ弱いとは何事だろうか。
ルルに変態紳士と呼ばれてダメージを受けたのを見て、カームがとても良い笑みを浮かべた。
『ねえ知ってる? この戦いってあのドローンで撮影されてるの。つまり、お前が変態だってことは世界にライブ配信されてるんだよ』
『なん・・・だと・・・』
ズメイは血を吐きながら膝から崩れ落ちた。
カームの言ったことは嘘だ。
全世界にライブ配信されている訳でなく、現時点で視聴しているのはシャングリラリゾートのホテルにいる者とドローンの管理者である”ホワイトスノウ”のメンバーだけだ。
今後この映像が一般公開されることはあるかもしれないが、まだ世界に配信されている訳ではない。
だが、ズメイには真実を知る手段がないのでカームの発言を信じざるを得ない。
それがズメイのメンタルにグサグサとナイフを突き刺していく。
カームはルルの耳元で何かを囁き、ルルは頷いてから笑顔で口を開く。
『変態紳士なんて最低だね』
『ひぎゃあぁぁぁぁぁ!』
<
『今がチャンス』
『クワッ』
『コケッ』
『えいっ』
カームを筆頭にズメイを囲んで攻撃し、ズメイは精神と肉体の両方の意味で力尽きた。
『カームって悪女まで演じれるのね。うん、そう思うことにしましょう』
白雪はこの勝ち方って印象が悪いんじゃないかと感じ、カーム達が悪役プレイをしたと思い込むことにしたらしい。
結果として、白雪のパーティーの踏破タイムは45分17秒で暫定2位になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます