【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第923話 一撃入れられたのなら教えてやろう
第923話 一撃入れられたのなら教えてやろう
翌日、魔神軍テイマー合宿は2日目を迎えた。
午前のプログラムは参加者同士の模擬戦ということで、闘技場ダンジョンで始まる。
1階のフロアボスとして待機していたワイバハムートだが、今日もリルに一瞬で冷凍されてブラドに素材と食材に解体されたとだけ補足しておこう。
「最初の模擬戦は誰からやる?」
「はい! 魔神様、私に稽古をつけて下さい!」
「睦美か。良いよ。従魔の数は何対何が良い?」
「2対2でお願いします」
睦美の視線の先にはドライザーとエルがおり、最初から無機型モンスター同士の模擬戦をする気満々だったようだ。
「ドライザーとエルに任せて良い?」
『問題ない』
『お任せ下さい』
ドライザーとエルは藍大に頼まれて気合十分である。
「私の従魔からはメリエルとアトゥを出します」
睦美がメリエルとアトゥを送り出したことにより、ドライザー&エル対メリエル&アトゥの試合が決まった。
「ロボット対ロボットか。興奮するね」
「ですね。胸が熱くなります」
智仁と睦月は無機型モンスター同士の模擬戦にワクワクが止まらない様子だ。
「睦美、神器は使わない方が良いよな?」
「・・・いえ、使って下さい。そうでなければドライザー様とエル様の本気を拝見できませんので」
「だってさ。ドライザー、神器を使って良いってよ」
『神器を使わせてみたまえ』
ドライザーとエルは睦美の発言を受けて強者感たっぷりに応じた。
ドライザーのラストリゾートは藍大のゴッドスレイヤーのように封印されるレベルではないが十分に強い武器だ。
それを使うに足る相手でなければラストリゾートを使わないスタンスなのも当然だろう。
「メリエル、アトゥ、全力で戦いなさい。じゃないとドライザー様に本気で戦ってもらえないわ」
『『
絶対にラストリゾートを使わせてやるんだとメリエルとアトゥは意気込んだ。
ドライザーは強者ムーブを続けるつもりらしく、指をクイクイと動かす。
『先手は譲ろう。どこからでもかかって来い』
『参ります』
ドライザーに向かってメリエルが突撃し、赤く染まった拳を突き出す。
『ふむ。良いストレートだ』
『・・・何故?』
メリエルは<
ドライザーは<
『一撃入れられたのなら教えてやろう』
『その言葉を忘れるな』
そう言ってメリエルは<
それどころか、全速力で飛んでメリエルの隙を作り、そこからジャイアントスイングでメリエルを壁際まで投げ飛ばした。
(ドライザーが遊んでる。エルの方はどうだろう?)
ドライザーが余裕を見せて戦っている一方、エルとアトゥの戦いに藍大は目を向けた。
アトゥは<
しかし、エルはその攻撃を大鎌形態のDDキラーで見事に受け流しており、この戦法を続けているだけではエルに傷一つ付けられないのは明らかだった。
すると、アトゥは<
『甘いですね』
エルは<
『吸収できるなら吸収してみなさい』
そう言ってエルは<
神の名を冠するアビリティの前にはアトゥの<
だがちょっと待ってほしい。
エルが回復している相手を前にして親切に回復するまで待つだろうか。
いや、待たない。
『凍りなさい』
回復中のアトゥにエルの<
「アトゥ!?」
『寸止めしてありますから安心なさい』
睦美がもしかしてHPを削り取られたのではと不安に思って叫ぶと、エルが睦美に対して静かに応じた。
(これでアトゥはこの模擬戦から脱落したな。ドライザーはどうかなって、まだ遊んでるのか)
藍大はドライザーとメリエルの模擬戦を見て苦笑した。
メリエルが必死になってドライザーに一撃入れようとするけれど、ドライザーは<
藍大が視界に出したモンスター図鑑によれば、メリエルのMP残量が危険域に突入していた。
『どうした? もう終わりか?』
『・・・参りました』
ラストリゾートを使わなかったにもかかわらず、メリエルはドライザーに一撃も有効打を決められなかったため降参した。
このまま挑戦し続けても無意味だと悟ったのだろう。
それによって2対2の模擬戦ドライザー&エルが勝利した。
ドライザーとエルは得意気な様子で藍大の前に戻った。
『ボス、
『被弾0です。依頼を完遂しました』
「お疲れ様。ドライザーもエルも見事な戦いだった」
藍大が褒めるとドライザーとエルは上機嫌なまま藍大の後ろで待機した。
そこに睦美がやって来た。
「完敗です。やはり魔神様の従魔は強いですね」
「見張りをしている間、暇な時はドライザーとエルが模擬戦をしてお互いを高め合ってるからな。知性のあるモンスターとの戦いに慣れてるんだ」
「なるほど。自分の従魔同士でも模擬戦ですか。私も取り入れてみます」
睦美は基本的に自分が管理するダンジョンのモンスターか、遠征先のダンジョンのモンスターとしか従魔を戦わせていない。
ダンジョンのモンスターの中にも賢いモンスターはいるけれど、従魔歴が長いモンスターには戦略面で敵わない。
それゆえ、ドライザーとエルのようにメリエル達に模擬戦をさせようと睦美は決めた。
「次は誰が戦う?」
「はい!」
「今度はマルオか。マルオも俺と戦いたいの?」
「逢魔さんに挑戦します。できたらパンドラさんと戦いたいです!」
指名されたパンドラは首を傾げる。
「僕? どうして?」
「パンドラさんが尻尾ビンタする姿はよく拝見するのですが、戦ってる姿をあまり見たことがないので戦ってみたいです」
「それは三馬鹿のせいだね。うん、良いよ。戦おうか」
パンドラが自分の印象を尻尾ビンタだけにさせている原因の健太達におのれよくもと念じた後、マルオのリクエストを承諾した。
パンドラと戦うのはマルオのパーティー内で最も戦闘好きなローラである。
九尾の白猫状態のままパンドラはローラに話しかける。
「いつでもおいで」
「参る!」
ローラは<
昨日はペリュトンに血の薔薇を咲かせてみせたけれど、パンドラにその攻撃は通じなかった。
<
しかしながら、ローラは<
それで戦況を立て直せるのなら問題なかったのだが、パンドラには<
<
しかも、<
「体が、重い?」
「血の気が多いから余計に効果があったみたいだね」
ローラはパンドラの強さがただのステータスとは違うところにあると知り、悔しそうな顔をした。
「僕の使えるアビリティって手加減が難しいんだ。だから許してね」
パンドラはそう言って尻尾ビンタでローラをしばいた。
アビリティではないからと言って侮ってはいけない。
今日までほとんど毎日健太達をしばき続けたパンドラの尻尾ビンタの技術はすさまじく、絶妙な手加減をしてローラを吹き飛ばした。
「ご主人、ローラを倒して来たよ。あっ、また尻尾ビンタしちゃった」
パンドラは藍大で結局尻尾ビンタを使ってしまったことに気づいた。
「よしよし。良いんだ。パンドラの尻尾ビンタはアビリティにも負けない立派な技術なんだから」
藍大はちょっぴりしょんぼりしたパンドラを抱え上げ、優しくその頭を撫でてパンドラを慰めたのだった。
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