第918話 肉即冷!
後発組のテイマー系冒険者が次の従魔を何にするか決めたため、藍大達はブラドが管理する元E9ダンジョンこと闘技場ダンジョンにやって来た。
一般的なダンジョンは
ところが、闘技場ダンジョンにはフロアボスしか現れない。
しかも、現れるフロアボスは1階からLv100であり、入場した相手に相応しいモンスターが自動召喚される仕組みを取り入れてブラドが改築した。
藍大が闘技場ダンジョンに入ったため、闘技場の中心にワイバハムートが現れた。
『肉即冷!』
リルがワイバハムートを目にした瞬間、<
「流石リルさん! 俺達にできないことを平然とやってのけるっ」
「そこに痺れる! 憧れるゥ!」
マルオと睦美が流れるようにネタに走るので、静音がジト目を向けていた。
睦月はどちらかと言うとマルオや姉と同じ属性なので、静音と同じリアクションにはならなかった。
冷凍保存されたワイバハムートはさっさと藍大に回収され、リルは藍大に頬ずりする。
「よしよし。愛い奴め」
「クゥ~ン♪」
「ソルもいずれあれぐらい強くなれると良いね~」
「ウォン」
藍大に頭を撫でられているリルを見て、ソルが目を輝かせていたから涼子はその頭を優しく撫でた。
1階の掃除が終わった所で藍大はブラドに声をかける。
「ブラド、早速召喚を頼む」
「よかろう。臨時収入もあったからDPは潤沢なのだ」
リルが<
ニコニコしているブラドは最初に咲夜が従魔にしたいモンスターを呼び出した。
そのモンスターとはピクシーだった。
エサソンだったアンリは涼子と智仁と共にダンジョンで成長した結果、シルキーに進化していた。
アンリは支援と防御の役割を担っていたが、どちらかというと支援寄りなので攻撃や回復のアビリティを覚えるであろうピクシーを選んだ。
ブラドが召喚したピクシーは絵に描いたような女の子の妖精であり、キラキラ輝く粉を纏いながら咲夜の周囲をグルグルと回っている。
調べるのが終わったのか、ピクシーは頷いて自分の前で止まったから咲夜はピクシーの上に図鑑を被せる。
「テイム」
おとなしくテイムされたピクシーは紫色の目と髪の色からスミレと名付けられた。
「【
改めて召喚されたスミレは活発に咲夜の周りを飛び回り、それから咲夜の肩に止まってその頬にキスをした。
「いけません」
メイド服を着たアンリがスミレを摘まみ上げて注意した。
先輩に睨まれたスミレはごめんなさいとしょんぼりしたが、アンリがわかればよろしいと言うと気持ちを入れ替えたのかおとなしくなった。
咲夜のテイムが終わったら、次は静音がテイムする番だ。
「静音、何を召喚してほしい?」
「ウッドマンでお願いします」
「
「任せるのだ」
静音がウッドマンをテイムしたいと考えた理由に思い当たり、藍大はなるほどと頷いてからブラドに召喚を依頼した。
メディチは攻撃と支援の役割を担うが、支援はデバフでアビリティの数も少なく攻撃寄りだ。
回避盾の役割をするにはAGIの数値が低めであり、だったら防御ができる
ウッドマンは木でできた人形だが、顔があって武器を持たせることもできる。
剣と盾を持たせれば騎士の真似事だってできるだろう。
静音はブラドに召喚してもらったウッドマンの頭に図鑑を被せてテイムした。
「【
エディと名付けられたウッドマンは召喚されてすぐに片膝を地面につけ、忠誠を誓うようなポーズを見せた。
「静音、逢魔さんにお礼言わないと」
「そうでした。逢魔さん、ありがとうございます」
「どういたしまして。今回は後発組の支援がメインのイベントだからね。マルオに少しでも追いつけるよう頑張ってくれ」
「はい!」
静音は藍大の期待を裏切らないように頑張らなければと気を引き締めた。
その次にテイムを行うのは睦月だ。
「召喚するのはガンドアームズでお願いします」
「ほほう、合体狙いだな?」
「おっしゃる通りです」
睦月が召喚を依頼したガンドアームズとは機械の両腕だけのモンスターであり、それぞれ得意な武器を装備して現れる。
ガンドポッドと融合させられるモンスターなので、藍大は睦月の狙いをすぐに悟った。
ブラドに召喚してもらったガンドアームズをテイムした後、睦月はそれらをエルアールと名付けた。
既に”近衛兵団”で覚醒の丸薬Ⅱ型を用意してもらっていたようで、二次覚醒者になっていた睦月は従魔達の融合を始める。
「【
その瞬間、ダンジョン内を眩い光が包み込んだ。
光の中でゼロとエルアールのシルエットが重なって一つになる。
融合した姿のベースは主砲と副砲を装備したドローンと表現すべきシルエットであり、光が収まると薄紫色の武装ドローンが現れた。
「小さいけどメ〇ウスじゃないですか! やったー!」
自分が大好きなモ〇ルアーマーに見た目が近づき、睦月は万歳して喜んでいる。
融合して誕生したモンスターの種族名はメビィで狙っているのか疑いたくなる。
それはそれとして、睦月はメビィにガーティと名付けた。
「逢魔さん、ありがとうございます! 理想のモ〇ルアーマーに少しずつ近づいてますよ!」
「後は進化して乗り込めるようになればばっちりだな」
「はい! 頑張ってその方向に育てます!」
睦月はテンションが上がったままガーティの撮影会に入った。
涼子と智仁のテイムが終わるまでは良いだろうと思って藍大達はそれを容認した。
前回は涼子が先にテイムを行ったが、今回は智仁が順番を譲ってもらったらしい。
「藍大、俺はダマスカスタンクが良い」
「
「そうだ。ジークルーネは攻撃と回避盾って感じだから、攻撃に専念してもらおうかと思ってね」
「特化させるのもありだもんな。了解」
ダマスカスタンクは進化するとドライザーの融合素材であるアダマントタンクになる。
智仁はアダマントタンクが他のモンスターの融合素材にもなることを調べたため、まずはダマスカスタンクをテイムしてそこからアダマントタンクまで育て上げるつもりのようだ。
図鑑をダマスカスタンクに被せてテイムが完了し、智仁はダマスカスタンクにダァトと名付けた。
「さて、真打ち登場ね」
「違うね。で、母さんはプリースリスで良いんだよな?」
「藍大、母さんの扱いが雑。それは良くない」
「そう思うなら雑に扱われない振舞いをしようか」
「は~い」
藍大はやれやれと言いながらブラドにプリースリスを召喚してもらった。
「チュ?」
「あらやだ可愛い」
藍大に雑に扱われてしょんぼりするふりをしていた涼子だったが、いきなり召喚されて首を傾げるプリースリスを見てすぐに意識がそちらに向かった。
「こっちおいで~」
「・・・チュウ」
涼子がしゃがんで優しく声をかけたところ、プリースリスは警戒することなく涼子が差し出した手に近づいていった。
プリースリスが手の上に乗ったのを確認して立ち上がり、涼子はもう片方の手でプリースリスをの体を撫でる。
その瞬間、プリースリスの体に雷が走る。
「チュア!?」
このナデナデスキルは恐ろしいと戦慄したのだ。
しかし、戦慄したところで涼子のナデナデには抗えず、気持ち良くなってだらけてしまったところに図鑑を被せられてしまい、プリースリスはあっさりとテイムされてアリスと名付けられた。
その一連の流れを見て藍大の隣でリルが唸る。
『むぅ、あれがご主人に並ぶ涼子のナデナデ。天敵のテイムダンスとは違った意味で恐ろしい』
「と言うと?」
『天敵のテイムダンスも涼子のナデナデも音と動作によって獣型モンスターを誘惑してるよね。天敵の方はネタ枠だけど涼子の方は不純なオーラを感じないんだ。あれは天然のモフモフホイホイだよ』
「母さんにそんな力があったのか」
『ご主人もその力を受け継いでるけどね』
リルは藍大の撫で方が涼子仕込みだとわかっているから他人事じゃないんだぞと告げた。
それはさておき、後発組全員がテイムを終えたのでプログラムは次に移る。
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