第911話 クールな表情の裏で考えてること怖過ぎ!?

 仲良しトリオが満足してから藍大はカロパスを解体した。


 その魔石は順番だからゴルゴンに与えることになる。


「ゴルゴン、カロパスの魔石をおあがり」


「いただくのよっ」


 ゴルゴンが藍大から魔石を貰って飲み込んだところ、ゴルゴンの全身が光ってからその光が消えた。


『ゴルゴンのアビリティ:<全半減ディバインオール>とアビリティ<拒絶リジェクト>がアビリティ:<拒絶体リジェクトボディ>に統合されました』


『ゴルゴンはアビリティ:<看破シースルー>を会得しました』


 (ゴルゴンらしいパワーアップだな)


 藍大がそのように思ったのはアビリティの効果をモンスター図鑑で調べたからだ。


 <拒絶リジェクト>はアクティブアビリティだったため、ゴルゴンが拒絶したいと思って発動しなければならなかったが、<拒絶体リジェクトボディ>はパッシブアビリティで害がある自分のVITの数値の攻撃や干渉を弾いて強制的に終わらせる。


 つまり、ゴルゴンが意識せずとも格下の攻撃は潰されてしまう訳だ。


 <拒絶体リジェクトボディ>を会得したのと同時にゴルゴンは<看破シースルー>を会得した。


 このアビリティは鑑定系ではなく、嘘を見抜いたり隠されたものを探し当てるパッシブアビリティだ。


 名探偵ゴルゴンに相応しいアビリティと言える。


「ゴルゴンに相応しいアビリティが会得できて良かったな」


「ドヤァなんだからねっ」


「はいはい。可愛いぞ」


「そ、そうよっ。アタシは可愛いのよっ」


 藍大がゴルゴンを可愛いと思ってそっと抱き締めると、ゴルゴンは照れて顔が真っ赤になった。


 ゴルゴンが抱き締められたのを見て、メロとゼルが無言でニコニコしながら列を作るものだから、藍大はその後に2人のことも順番にハグした。


 仲良しトリオは抜け駆けを認めないらしい。


 メロとゼルが藍大にハグされている間、ゴルゴンは早速<看破シースルー>の効果で広間の右側の壁に気になるものを見つけていた。


「マスター、こっちに来るのよっ。ギミックを見つけたのよっ」


 ゴルゴンに呼ばれて藍大達が移動したところ、ゴルゴンが示す壁は巧妙に誤魔化されているが一部幻影だった。


 試しに今日手に入れたヴォルパーティンガーの角で幻影の部分を突いてみると、壁をすり抜けて幻影が解除された。


 幻影が解除されたことにより、手を入れられるぐらいの横穴が出現した。


 その横穴にはスイッチがあり、藍大が鑑定してみるとシンクロスイッチであることがわかった。


「どうやらこの広間にこれと同じスイッチがあと2つ隠されてるらしい。3つのスイッチを同時に押せば、広間の床下に隠された何かが現れるってさ。ただし、スイッチを押すタイミングがずれると隠された何かは爆破して消し飛ぶ仕様らしい」


「フッフッフ。ここは名探偵ゴルゴンの出番なのよっ」


 キリッと良い表情で告げたゴルゴンはそれからすぐに幻影とスイッチの場所を見つけ出した。


 持ち前の推理力に加えて<看破シースルー>のアシストもあるのだから、リルがいなくてもギミックを全て探し出すぐらい余裕だった。


 残りのスイッチは右側の壁と反対の位置に1つと天井の中心に1つあった。


 左側の壁のスイッチはゼルが担当し、天井のスイッチはメロが<妖精粉ピクシーパウダー>で自身が空を飛べるようにしてから担当する。


「合図は俺に任せろ。カウントダウンで行くぞ。3,2,1,0!」


 0と藍大が口にした瞬間、仲良しトリオが同時にシンクロスイッチを押した。


 日頃から息ぴったりな仲良しトリオが失敗するはずもなく、広間の中心に床下から宝箱が現れた。


 それだけであれば順調だったのだが、宝箱には黒い影が憑いていた。


『やはり保険をかけといて正解だったのだ』


 (ブラド、最近見つかるのはしょうがないから番人を配置するようにしてるだろ)


『リルが来ないと知って手を抜いたらあっさりバレたのだ。これぐらい許してほしいのである』


 ブラドはテレパシー越しにこれぐらい良いじゃないかと訴えるので、藍大はやれやれと首を振った。


 実際、リルがいればこの程度のギミックは秒で発見から解除できてしまうので、藍大はブラドの主張を認めることにした。


「黒い影はラックデビル。全ての能力値が遭遇した敵の素のLUKの数値と同じになる。今のあいつの全能力値はメロと同じLUKの数値らしい」


「真似っこされたですか。生意気な奴です」


「アタシに任せなさいっ」


 メロがムッとしている隣でゴルゴンが<緋炎支配クリムゾンイズマイン>で攻撃を開始する。


 ラックデビルは宝箱から離れ、牛の角を持つモノアイのヘルメットから悪魔の体が生えた。


 ゴルゴンが緋炎の弾丸を乱射するせいで、ラックデビルの行動は自然とそれを避けることに専念する。


『(^o^)丿踊れ踊れ』


 ゼルも深淵の弾丸を乱射してラックデビルを追い詰める。


 ラックデビルの体は成人男性ぐらいの大きさなので、ゴルゴンとゼルが広範囲に向けて攻撃をすれば、ラックデビルはその攻撃を避けられずに少しずつ被弾していく。


 ダメージが着実に増えていくと、ラックデビルは<怒蒸気アングリースチーム>を発動して全身から蒸気を放出する。


 その蒸気がラックデビルを守る壁になり、ゴルゴンとゼルの攻撃が蒸気の壁を壊した時には<自動再生オートリジェネ>の効果で受けたダメージの半分を回復していた。


 だが、ゴルゴンとゼルが攻撃している間に力を溜めていたメロが戦闘に加わることで戦況が変わる。


「待たせたです。喰らうです!」


 <元気砲エナジーキャノン>がラックデビルに命中し、そのHPがごっそり削れた。


 ラックデビルが弱ったのを見て、ゴルゴンがすかさず追い打ちをかける。


「ドカンなのよっ」


 <爆轟眼デトネアイ>を連発することで、ラックデビルの体は更にボロボロになった。


『(´・ω・)とどめ、いただきます』


 ゼルが爆炎の収まった瞬間に<創氷武装アイスアームズ>で創り出した大砲から氷の砲弾を放てば、それが命中した瞬間にラックデビルの体は氷漬けになって動かなくなった。


 ラックデビルが力尽きた結果、氷の中でラックデビルの体が消えて魔石と牛の角とモノアイのヘルメットだけを残して消えた。


 ゼルが氷を融かしてヘルメットを回収し、藍大は魔石をメロにあげる。


「次はメロの番だな。はい、これ」


「ありがとなのです」


 メロが藍大に貰った魔石を飲み込んだ結果、メロの身長が少し伸びて胸が少し大きくなった。


『メロのアビリティ:<植物支配プラントイズマイン>がアビリティ<森林支配フォレストイズマイン>に上書きされました』


「なんでなのよっ」


『(ー_ー)また育ったな!?』


 ゴルゴンとゼルのコメントをスルーしてしまうぐらいメロはご機嫌であり、その気持ちを抑え込まずに藍大に抱き着く。


「マスター、私は強くなったですよ!」


「よしよし。愛い奴め」


 素直に甘えられて嬉しくないはずがなく、藍大はメロが満足するまで甘やかした。


 それが落ち着くまで5分程かかり、その間に藍大はメロの頭を撫でつつ<森林支配フォレストイズマイン>の確認を済ませた。


 <植物支配プラントイズマイン>の時は植物しか操れなかったが、<森林支配フォレストイズマイン>になったことで植物と大地を自在に操れるようになった。


 つまり、土属性の魔法系アビリティも再現できるようになったということだ。


 これならメロが強くなったと大喜びするのも納得である。


 メロが落ち着いてから宝箱を回収し、藍大達はボス部屋を目指して探索を再開する。


 ボス部屋はすぐに見つかり、ゼルが自分もパワーアップしたいと急かすので休むことなく藍大達はその中に侵入した。


 そこにはサファギンよりもスマートでフランベルジュを手にした魚人が待っていた。


 道場ダンジョン15階で登場するフロアボスが下の階のルキフゲスよりも弱いなんてことは考えられない。


 だからこそ、藍大は慢心することなくすぐに敵の戦力分析を始める。



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名前:なし 種族:ラハブ

性別:雌 Lv:100

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HP:3,500/3,500

MP:3,500/3,500

STR:3,500

VIT:3,500

DEX:3,500

AGI:3,000

INT:3,500

LUK:3,000

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称号:15階フロアボス

   到達者

アビリティ:<剣術ソードアーツ><水支配ウォーターイズマイン><魅了眼チャームアイ

      <重力領域グラビティフィールド><吸収触手ドレインテンタクルス><怪物解放モンスターリベレイト

      <自動再生オートリジェネ><全半減ディバインオール

装備:ギルティペイン

   禁欲晒し

   サーペントメイル

備考:アハッ、早くあの雄をめった刺しにして中身を食べたい♡

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 (クールな表情の裏で考えてること怖過ぎ!?)


 無表情で自分を見るラハブの備考欄を確認し、藍大は戦慄した。

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