【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第900話 逃げるんだおぉぉぉ!? なんでぇぇぇ!?
第900話 逃げるんだおぉぉぉ!? なんでぇぇぇ!?
ロキは藍大達の顔を見て顔を引き攣らせていたが、咳払いして気持ちを切り替えてから口を開く。
「よくぞここ」
「ヒャッハァァァァァッ!」
「おいおいおいぃぃぃぃぃ!」
ロキが何か言おうとしたけれど、舞が雷光を纏わせたミョルニルの柄を伸ばして上段から振り下ろした。
口上を邪魔されたロキは舞の攻撃を紙一重で避けて抗議しようとしたが、喋らせる余裕を与えないと言わんばかりにサクラが無数の深淵の刃をロキに向かって飛ばしたせいで回避に専念するしかなかった。
『ここだ!』
リルがロキの死角に回り込んで<
ところが、ロキの体が砂になって崩れてその少し後方に無傷のロキが現れた。
「いきなり攻撃とは酷いじゃないか。折角作ったみがぺっ」
やれやれと言いたげなロキだったが、パンドラの<
レーザーに当たった後、ロキは膝から崩れ落ちて四つん這いになった。
「もう駄目だ。生まれ変わったらヒモになりたい」
(それってネガティブじゃなくてクズじゃね?)
パンドラの<
「ヒモになりたいなんてとんだクズね」
「ふげっ!?」
サクラが<
ロキは短く情けない悲鳴を上げたが、再びその体が砂になって崩れてからその後方に無傷で出現した。
「少しは俺の口上を聞いてくれる!?」
ロキは自分が喋ろうとするのをなんで邪魔するんだと藍大達に抗議した。
「「「『『嫌だ』』」」」
藍大達の回答がシンクロした。
思わず息がぴったりになるぐらい全員がロキの話を聞きたくなかったようだ。
「そんなこと言うなよ! もっと俺に興味持ってよ! 特にリルは俺の息子だろ!?」
『僕には他者に迷惑ばかりかける父親なんていないよ。僕に父親がいるとしたらそれはご主人しかあり得ない』
「よしよし。愛い奴め」
「あぁ、もう可愛いな畜生!」
藍大に甘えるリルを見てロキはキレ気味にリルを可愛いと褒めた。
そんなことをしている間に、サクラは<
「捕まえた」
「甘いね。それは残像だ」
そう言った瞬間にはロキの体が消えており、藍大達の目の前にロキが現れた。
「近過ぎんだよゴラァ!」
「ぐえっ!?」
反射的に舞がミョルニルをフルスイングした結果、ロキは見事な放物線を描いて飛んで行った。
それでも、地面に墜落する瞬間にはその体が砂になって崩れ落ちて無傷のロキが適切な距離で姿を現した。
「ねぇ、君達はもう少し俺の話を興味を持とう? この数分で何個身代わりを壊せば気が済むんだい?」
「ロキがする話なんて胡散臭い」
「お爺ちゃんがロキの喋ることは話半分に聞けって言ってた」
「そもそも聞く価値がない」
『日頃の態度を考えてよ』
「やだー、俺ってば全否定されてるじゃないですかー」
ロキの発言の文字だけ見れば悲しそうに見えなくもないが、その表情に悲しみなんて少しも感じられないのが実情である。
藍大は段々面倒に思って来たので、思金神の考えをそのまま口にしてみる。
「どうせロキはコントロールできる邪神を誕生させ、それを自身で討伐するかあるいは誰かに討伐させようとしてるんだろ?」
「続けて」
「ロキは邪神誕生のメカニズムに興味を示してたし、リルの目を通して邪神を鑑定したから邪神について情報を入手できてる。しかも、邪神に自分のレプリカを創られてそれと俺達が戦った。邪神が自分を利用するんだったら、自分だって邪神を利用したって良いじゃないかと考えてる。今度はロキが邪神を玩具にしようってことだろ?」
「そこまでわかってるだなんて藍大は俺かな?」
「「『『それはない』』」」
藍大が実は自分と同じなんじゃないかと言い出すロキに対し、馬鹿なことを言うんじゃないと舞達が揃って否定した。
「今のは全て思金神の受け売りだ。もっとも、思金神も考え方が予想できても共感できるかは別問題だってさ。仮に邪神を自分の制御下で誕生させて倒せば生物の負の感情を回収効率が非情に良いと考えてたとしても、迷惑を被る者がいるんだから理解なんてできないのは当然だ」
「残念だ。そこまでわかってて理解してもらえないのは非情に残念だよ。俺が邪神という玩具で遊べるし、制御下にある邪神なら世界が滅ぶ前にどうとでも処理できるのに」
「OK。ロキとはわかり合えないし、これ以上話を続けても無駄なのがわかった。サクラ、やっちゃって良いぞ」
「わかった」
サクラは藍大から許可を貰って指をパチンと鳴らした。
それは<
「ちょっと待ってくれ。今、何をしたんだ?」
「さあ、なんだろうな」
「そんなつれないこと言うなよぉ。俺と藍大の仲だろ?」
「迷惑をかける者とかけられる者だよな。慈悲はない」
藍大の対応にロキは自分が圧倒的不利にあると察した。
サクラが<
そこまで考えれば、ロキの脳内に逃げるという選択肢しか浮かばなかった。
「藍大達は俺を追い詰めたと思ったかもしれない。だが、俺には唯一にして絶対の策が残ってる」
「唯一にして絶対? どんな策だ?」
ロキが自信満々かつ聞いてほしそうに言うものだから、藍大は仕方なくロキの策を聞くことにした。
藍大が聞く耳を持ってくれたため、ロキはニヤリと笑って自分のとっておきの策を披露する。
「逃げるんだおぉぉぉ!? なんでぇぇぇ!?」
ロキは今いる場所からゲートを開いてその中に駆け込み、別の空間に逃げようとしたが、その次の瞬間には藍大達の前で仰向けに倒れていた。
意味のわからない現象が起こったせいでロキは困惑しており、その間にサクラの<
『よくやってくれたね。助かったよ』
藍大の耳にデウス=エクス=マキナの声が届いた直後、藍大達はいつの間にか創世神界の画面がたくさんある部屋に来ていた。
サクラに拘束されていたはずのロキは小さくなっており、ガラス玉らしき球体の中に閉じ込められていた。
その球はデウス=エクス=マキナの手の中にあり、球体の中でロキはどうしてこうなったと言いたげな表情をしていた。
「やあ、ロキ。私が誰だか名乗らなくてもわかるよね?」
「そ、創世神様です」
デウス=エクス=マキナが目だけ笑っていない笑みを浮かべて問いかければ、ロキは球体の中で背筋を正して応じた。
「よろしい。まず、わからないままでいると気持ち悪いだろうから説明すると、逃げようとした君が気付いたら仰向けで藍大達の前で倒れてたのはサクラの<
「そんなのありですか」
「私の娘ならそれぐらいできるんだよ」
サクラがデウス=エクス=マキナの娘だと聞かされ、ロキは何も言えなくなった。
元はただのバンシーだったサクラがどうして彼女の娘になるのか考え、やがてロキはサクラを創造したのがデウス=エクス=マキナであることに思い至った。
口をパクパクさせているロキに対し、今度は自分の番だと言ってデウス=エクス=マキナは質問する。
「世界に数いる悪神の中からなんで悪樓を第二の邪神にしようとしたの?」
「日本ばかり上手くいってるし、トールが仕事を俺にぶん投げてシャングリラに遊びに行くから仕返ししようと思いました」
(トール様はどれだけロキに仕事を丸投げしたんだ?)
ロキの供述を聞いて藍大は苦笑した。
「お爺ちゃんにちゃんと仕事をしなきゃ駄目って言わなきゃ」
「それが良いと思うぞ。遊びに来るのは歓迎するけど、やることはやってから来るように言うべきだ」
舞がトールにきちんと注意しなければと言うと、藍大もそれに賛同した。
デウス=エクス=マキナも舞と藍大の話に頷く。
「そうしてほしいな。ロキには今からしばらく特別な牢獄で過ごしてもらうからさ」
次の瞬間、ロキは閉じ込められていた球体ごとどこかに消えた。
デウス=エクス=マキナが言った特別な牢獄とやらに転送されたのだろう。
それはさておき、彼女のお願いは2つとも聞き届けたのだからここからは藍大達が報酬を受け取る番だ。
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