第841話 歌って踊れるモフモフがアツいのかな?

 参加者全員が会場に揃ったことでモフリー武田が第三種目を発表する。


「次が最後の種目! お待ちかねのPV対決だ! 今回はダンスがテーマだぜ!」


 審査員は見た動画にそれぞれ5点満点で採点するから、状況によっては大逆転も夢ではない。


「さて、PVを流す順番は籤引きで決めるぜ! 魔神様とリル様に箱から引いてもらった球に書いてあるペアの動画から放映するんでよろしくぅ!」


「わかりました」


 藍大が箱の中に手を突っ込み、その中にある球を無作為に取り出す。


「トップバッターは!?」


「天門政宗&エンリペアです」


 モフリー武田の質問に藍大はカメラに文字が書いてある方を見せながら発表した。


「エンリ、最初になっちゃったね」


「大丈夫。全力は尽くした」


 トップバッターは基準にされて高い点数は期待できないと思った政宗に対し、エンリは動画撮影に全力を尽くしたので後は評価を待つのみだと胸を張った。


 PVを流すために会場が暗くなり、スクリーンに映し出されたエンリのダンス動画が始まる。


 エンリが踊ったのはブレイクダンスが有名なアーティストの曲だった。


 特に学生世代に人気のアーティストの曲であり、会場内の至る所からエンリの再現度の高さに感嘆の声が聞こえた。


 PVが終わって会場の照明が元通りになると、モフリー武田や審査員、観客達から惜しみない拍手がエンリに送られた。


「キレッキレなダンスだったな! 審査員の皆さんも感想を聞かせてくれ!」


「エンリの体幹がしっかりしてるので、カッコ良いブレイクダンスでしたね」


『僕も踊りたくなるぐらい感動したよ』


「素晴らしいダンスを奉納いただきありがとうございました」


『リル先輩と同じで踊ってみたくなりました』


「モフモフでカッコ良い系なのもありですよね」


「ありがとう! それじゃあ採点よろしくぅ!」


 スクリーンにエンリのPVの得点が表示される。

 

「魔神様&リル様ペア4点! モフ神様&ガルフさんペア4点! 吉田さん5点! 合計13点! これはこの後の参加者にとって高い壁だぁ!」


 藍大と真奈のペアはこの後もっとすごいPVがあると判断して4点にしたが、志保はダンスのクオリティの高さから満点にした。


「おぉ、やったな! すごいぞエンリ」


「満点に届かなかったのが残念」


「何言ってるんだ。俺の中では満点だぞ」


「もう、マスターってば大好き」


 政宗はエンリに抱き着かれて優しく彼女を抱き留めた。


 今度はリルが理人とマーレのペアの球を引き当てた。


 マーレのPVの曲は水族館×ラブコメのドラマのエンディングテーマであり、マーレが水族館にいたペンギンやアザラシ、イルカ達の全員の踊りを単独で踊ったものだった。


「とっても愛らしいダンスだったな! 審査員の皆さんはどう思った?」


「我が家でもゴルゴン達が見てるので、先程のダンスに親しみがありました」


『やっぱり従魔だけあって水族館の動物よりも動きが良かったね』


「可愛らしいダンスを奉納していただきました。うん、モフ欲が高まりますね」


『マーレに逃げてと注意したくなるぐらいには完成度が高かった』


「私、水棲型のモフモフモンスターも好きになりました!」


「ありがとよ! それじゃあ採点よろしくぅ!」


 スクリーンにマーレのPVの得点が表示される。

 

「魔神様&リル様ペア5点! モフ神様&ガルフさんペア5点! 吉田さん4点! 合計14点! さっきの動画よりも1点高いぞぉ!」


 藍大とリルが5点にしたのはダンスのクオリティと親しみによるもので、真奈とガルフについては純粋に真奈がモフりたくなったからだ。


 理人は真奈にマーレを近づけてはいけないと判断し、マーレを抱っこして真奈から守る態勢に入った。


「よく頑張ってくれたね。素敵なダンスだったよ」


「プォ♡」


 マーレは理人に褒められて嬉しかったらしく、頬擦りして理人に甘えた。


 それを見て真奈が立ち上がりそうになったので、ガルフは嫌そうにしながら自分をモフって良いから落ち着けと言って真奈を座らせたままにした。


 ガルフの献身のおかげで放送事故にならなかったため、その間に藍大が次のペアの籤を引いた。


 藍大が引いたのは重治とダニエルのペアの球だった。


 ダニエルのダンスPVは自然溢れる背景でライオンを王様とするミュージカルのダンスの抜粋であり、気怠い感じのダニエルにこのダンスは不向きだった。


 そのせいで審査員全員から3点の合計9点という評価が与えられた。


 ダニエルの動き自体は悪くなかったのだが、チョイスしたダンスがダニエルに合っていないせいでこの評価になってしまったのだ。


「壮大なテーマだったな! 審査員の皆さん、コメントよろしくぅ!」


「良いテーマですし動きも良かったんですが、ダニエルのキャラとは少し外れてるように思いました」


『ダンスを頑張ってたのはわかるけど、ダニエルらしさが活かされてなくて惜しかったよ』


「自然界のモフモフパワーを感じました。ありがとうございました」


『キャラじゃないことをやるのって大変だよね』


「バックダンサーがいるともっと迫力があったかもしれません」


 藍大達の評価を聞いてダニエルはまあこんなものだろうと特に落ち込んだりはしていなかった。


「ダニエル、すまない。無理をさせたな」


『しょうがないよ。これもお仕事だもの』


 重治が謝るとダニエルは大人な対応をしてみせた。


 こういうところもモフモフらしさを感じさせない要因である。


 今度はリルが籤引きをしてルーカスとフォクシーの名前が書かれた球を引き当てた。


 フォクシーの動画は狐はどのように鳴くのかと問い続ける歌詞が有名なダンスを踊ったものだった。


 マギテイルズのフォクシーによる狐を模したダンスはぴったりであり、藍大とリルの隣の席では笑顔の真奈がノールックでガルフをモフるぐらいモフ欲を刺激する完成度になっていた。


「ファンタスティックですよこいつぁ! 審査員の皆さん、コメントよろしくぅ!」


「フォクシーとあのダンスの親和性が高くて素晴らしかったです」


『とても楽しそうに踊ってたね。見てただけの僕も楽しい気分になったよ』


「モフ欲が満たされる素晴らしいダンスを奉納していただきました。感無量です」


『フォクシー、君のダンスは危険だ。モフラー達がエアーモフモフしてるよ』


「どうしてここにアルルちゃんがいないんですか!? モフモフさせて下さい!」


「ガルフさんの言う通り、会場内のモフラー達がヤバいことになってるぜ! さて、採点よろしくぅ!」


 スクリーンにフォクシーのPVの得点が表示される。

 

「魔神様&リル様ペア5点! モフ神様&ガルフさんペア5点! 吉田さん5点! 合計15点! 本日最初の満点だぁぁぁ!」


 モフリー武田がそう言うと会場内が盛り上がる。


 この採点に文句なしということもそうだが、やはり満点が出たというだけで盛り上がりたくなるものなのだ。


『フォクシー、君はやっぱり1位が相応しいよ』


「コン♪」


 ルーカスに優しく頭を撫でられたことにより、フォクシーはとてもご機嫌になった。


 第一種目と第二種目では目立てなかったから、第三種目で目立てたこともフォクシーがご機嫌な要因である。


 フォクシーのターンが終わったため、藍大が箱の中に手を入れてその中にある球を適当に取り出す。


 藍大が箱から取り出したのはシンシアとヴィオラの名前が書かれた球であり、CN国の参加者が連続してダンス動画を流すことになった。


 ヴィオラはCN国で家族愛をモチーフにしたドラマのエンディングテーマで子役が踊る曲を選んでいた。


 そのエンディングテーマでは子役2人が踊りながら歌うのだが、動画を上手く編集することで2人分をヴィオラが踊って歌った。


 可愛い×可愛い=無敵と言わんばかりに会場内が沸いた。


「可愛過ぎかよ! 堪んねえな、おい! 審査員の皆さんはどうだったよ!?」


「ダンスが可愛いのは間違いありませんが、動画の編集技術がそれを支えてましたね」


『歌って踊れるモフモフがアツいのかな?』


「モフモフ可愛い! モフモフ最強!」


『主人がちょっと頭をやられるぐらいには完成度の高いダンスPVでした』


「もう一度見たいですね。とっても可愛かったです」


「まったく、モフモフ従魔は最高だぜ! 審査員の皆さんは採点よろしくぅ!」


 スクリーンにヴィオラのPVの得点が表示される。

 

「魔神様&リル様ペア5点! モフ神様&ガルフさんペア5点! 吉田さん5点! 合計15点! 連続で満点が出たぞぉぉぉ!」


 モフリー武田もテンションがどんどん上がっているが、まだ3組のペアが残っている。


 番組終了までモフリー武田の喉の調子とテンションが保てるのか藍大は心配になったが、いざとなったら喉の方だけはこっそりなんとかしてあげることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る