【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第834話 良かった。やっぱり主人は駄女神だった
第834話 良かった。やっぱり主人は駄女神だった
8月2日の土曜日、第3回MOF-1グランプリの1週間前の今日、真奈はガルフとニャンシーを連れて上野にある美術館ダンジョンに来ていた。
大地震の影響で個展を開いていた建物の所有者が亡くなり、放置されていたためにダンジョンになってしまったのだ。
それをDMUの探索班がスタンピードを阻止するべく挑戦し、鱗操士の沙耶が”ダンジョンマスター”を倒してミミに掌握させた。
この美術館ダンジョンの1フロアを改築し、今回のMOF-1グランプリでアスレチックタイムアタックを行うつもりである。
「昨日は逢魔さんとリル君一家がテスト走行しに来たって聞いたから、ガルフもやりたいと思って連れて来たよ」
『主人が俺を労ってくれる・・・だと・・・?』
「ガルフ、そんな信じられないものを見たような目をしないでほしいな」
いつも事ある毎に自分をモフる真奈が気を遣ってくれるという事態が余程衝撃的だったようで、ガルフは隣にいる真奈が偽者ではないかと疑っている。
その様子を察してそれはあんまりじゃないかと真奈が苦笑した。
『テスト走行させてくれるのは嬉しいけど、ニャンシーを連れて来たのはなんで?』
「え? ガルフがテストしてる間に私がモフるためだけど?」
「ニャ!?」
真奈の腕の中で目を閉じてうとうとしているニャンシーだったが、信じたくない発言を耳にして驚いた。
『良かった。やっぱり主人は駄女神だった』
「ガルフ!? 駄女神なんて言葉をどこで教わったの!?」
まさかガルフの口から駄女神なんてワードが飛び出すとは思ってもいなかったことから、真奈は驚きのあまり大きな声を出してしまった。
『ニンジャが言ってたよ。主人みたいにすぐに暴走して従魔を困らせる神は駄女神だって』
「・・・ニンジャとは一度しっかりO・HA・NA・SHIしないといけないね」
『MO・FU・MO・FUの間違いじゃないの?』
「そうとも言う」
『ニンジャ逃げて! 超逃げて!』
ガルフはこの
余談だが、別の場所にいたニンジャは急にゾワッと全身の毛が逆立つ感じがしてリーアムに甘えていたらしい。
リーアムでモフラー慣れしているとはいえ、ニンジャもリーアム以外にモフモフされるのは好きじゃないのだ。
ましてや大好きなリーアムの妻である真奈という存在は、自分にとって強敵であると認識しているから
真奈が帰宅した時、ニンジャはガルフに入れ知恵したことに対するO・HA・NA・SHIが強制される訳であり、今もリーアムの腕の中で震えていることだろう。
それはさておき、ガルフは沙耶がミミに作らせたアスレチックのテスト走行を始めた。
『主人、リル先輩はこのコースをどれぐらいでクリアしたの?』
「逢魔さん曰く、アビリティを使わないで20秒だったって。だから、制限時間としては少なくとも90秒は必要なんじゃないかって言ってた」
『そうなんだ。じゃあ、俺もやってみてどれぐらいの制限時間が相応しいか考えてみる』
「よろしくね」
”風神獣”のリルは藍大の従魔ということもあり、能力値がフェンリルという種族の中で最も高い。
そんなリルを基準にしてしまうと、第3回MOF-1グランプリに参加する従魔達にとって難易度が高くなる可能性が高いだろう。
それゆえ、ガルフのテスト走行も制限時間を決めるためのデータとして求められているのだ。
結果として、ガルフは35秒でアスレチックをクリアした。
「ガルフ、楽しかった?」
『偶にはこういうのも良いね。楽しかった』
ただ走るだけでは使わない筋肉を使って運動したため、ガルフはテスト走行を終えてスッキリした表情になっていた。
「シャングリラリゾートには外にもたくさんのアスレチックがあるらしいわ。ガルフ、今度お邪魔して良いか訊いてみましょうか?」
『訊いてくれるのは嬉しいけど、多分駄目って言われるよ』
「どうして? 逢魔さんはそんな意地悪言わない人だと思うけど?」
『だって俺が行く時に主人も付いて来るでしょ? 主人は特例でもないとシャングリラリゾートに呼ばれないと思うな』
「どうして? 逢魔さんはそんな意地悪言わない人だと思うけど?」
『壊れたロボットみたいに同じセリフを言わないでよ。というか、魔神様じゃなくてリル先輩が主人同伴を嫌がるんだよ』
二度同じ言葉を繰り返す真奈に対してガルフは苦笑するしかなかった。
「こうなったらリル君にとびっきりの高級食材を持って直接お願いしにいくしか」
『会ってもらえないとは思わないんだね。ポジティブ過ぎだよ』
仮に高級食材を持参したとして、リルが真奈と会う確率は極めて低い。
何故なら、シャングリラダンジョンで収穫できるモンスター食材の方が高級だからだ。
食いしん坊ズに属するブラドが拘りを持って配置したモンスターが他所のダンジョンのモンスター食材に劣るとは考えられない。
それに加え、リルは天敵から何か物を貰うことは警戒しているだろう。
高級食材で気を引きつつ、自分をモフろうとしていると察してむしろ警戒度合いがワンランクアップするに違いない。
ガルフは以上2つの理由から、真奈はリルに話を聞いてもらえないと判断した。
『主人がリル先輩にお願いできないのは横に置いといて、俺もアスレチックタイムアタックの時間制限は90秒で良いと思うよ』
「そう? 60秒でも良い気がするんだけど」
『リル先輩と俺はAGIの数値が高いし、跳躍する距離も長い。でも、そうじゃない従魔達も参加するんだから60秒じゃ足りないって従魔もそこそこいると思う』
「わかった。ガルフの判断を信じるわ。あっ、そうだ。モフモフ衰弱も試しにやってみる?」
真奈はアスレチックタイムアタックのテスト走行が終わったと考え、収納袋から特注サイズのカードの束を取り出した。
『俺とニャンシーでやってみろってこと?』
「その通り。第二種目だけ試しにやるなんて中途半端でしょ?」
『その論法だと第三種目のダンス動画も撮らなきゃいけなくなるよね。俺は踊らないよ』
「うっ、ガルフはガードが堅いなぁ。しょうがない。ニャンシーに踊ってもらいましょう」
「ニャ!?」
ガルフがなかなかモフらせてくれないので、ニャンシーは今まで真奈の腕の中でモフられていた。
それだけでもニャンシーは十分働いたつもりだったのだが、追加で踊ってみようかと言われてニャンシーは嘘だろと言いたげな表情になった。
ニャンシーに助け舟を出すべく、ガルフは真奈に声をかける。
『主人、どの道ここではモフモフ衰弱もダンス動画も止めた方が良いよ。ここは他所様のダンジョンなんだから、やるなら帰ってからだよ』
「それもそうね。ミミさん経由でジミ・リンにネタばらししちゃうと当日の楽しみが減っちゃうもんね」
協力者としてアスレチックタイムアタックの製作をしてもらった以上、沙耶にこれ以上第3回MOF-1グランプリの内容がバレてしまうのはよろしくない。
ガルフの言い分に納得したため、真奈はガルフとニャンシーを連れて帰宅した。
リーアム達は丁度外出していたため、真奈は自室でガルフとニャンシーにモフモフ衰弱を試してもらうことにした。
モフモフ衰弱はクイズにいち早く正解した従魔がカードを捲り、同じモフモフモンスターを当てればカードを捲る回数が2回追加されるゲームだ。
失敗したらクイズに答えるのは1回休みだけれど、カードを捲る順番は平等に回って来ないのがポイントだ。
今は試しでやるのがガルフとニャンシーなので交互にカードを捲ることになるが、本番ではいかに早くクイズに答えられるかが鍵になると言えよう。
ガルフとニャンシーの勝負はガルフが勝利した。
どちらも真剣に取り組んだのは負けた方がダンス動画のデモ動画の被写体になるからである。
「ニャーン・・・」
『ニャンシー、諦めて。敗者は踊るって条件でやったでしょ?』
「ニャ」
踊らないと宣言していたガルフも負けたら踊る覚悟でモフモフ衰弱に挑んだため、ニャンシーがここでごねても結果は変わらない。
『それにあっちを見てごらん。主人が手をワキワキして待ってるよ』
「ニャニャ・・・」
ガルフに言われてニャンシーが真奈の方を見てみると、真奈はとても良い笑顔でダンス動画の撮影準備を終えてニャンシーに迫っていた。
「ニャ! ニャ!? ニャアァァァ!」
止せ、何をするとニャンシーは抵抗したが、真奈には敵うはずがない。
1時間後には疲れ果てたニャンシーと完成した動画を見るご満悦な真奈、同情するガルフがいたとだけ言っておこう。
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