第804話 その見た目は駄目であろう
地上に降りた球体状の邪気を見て、これは間違いなくモンスターではないと判断した藍大は<
(邪神第一形態。この時点で既に形態変化するってわかるね)
「あれは邪神の第一形態だ。全方位に無差別に攻撃するってさ」
藍大がそう言った瞬間、球体から大量の触手が生えた。
それらの触手の先端にはどれも刃が付いており、邪神が何をしでかすか容易に想像できる。
「やらせないニャ!」
『燃やし尽くすよ~』
ミオが藍大達の前に<
「近づけさせないわっ」
ゴルゴンは爆発による衝撃波を<
そのおかげで邪神の触手の大半が焼失した。
しかし、たったこれだけで邪神を弱らせられたなら苦労はしないだろう。
現に邪神は何事もなかったかのように球体から無数の棘を生やし、藍大達に向かって突撃し始めた。
「バランスを崩してやるのだ」
ブラドが<
「私も続くです!」
メロが<
『(∩´∀`)∩ワッショイ!』
ゼルが<
殴った部分が凍り付いたのを見て舞は雷光を纏わせたミョルニルを投擲する。
「ぶっ飛べゴラァ!」
ミョルニルが凍った部分に命中すると同時に派手にその部分が砕けた。
それだけでは終わらず、邪神の球体が雷光によって追加ダメージを受けて壁まで吹き飛ばされた。
(邪神すら吹き飛ばす。それが舞)
舞の力が邪神に通用したので藍大は素直に舞の強さに感心した。
もっとも、まだ邪神の気配が消えないので気が抜けるなんてことはあり得ないのだが。
壁まで吹き飛ばされた邪神だが、地面に落下してからその形が人型へと変わる。
「う、嘘だと言ってほしいのよっ」
「最悪の展開です!」
『/('Д')\ナンテコッタイ』
「その見た目は駄目であろう」
「あ、悪夢ニャ」
仲良しトリオとブラド、ミオの顔が青ざめたのは邪神が舞の姿に化けたからだ。
舞にハグされることに怯えるメンバーにとって、舞は味方だから今までは冗談で済んでいた。
邪神が舞に化けて両手を挙げてハグしようとする構えを見せれば、仲良しトリオやブラド、ミオが冗談では済まない恐怖を感じても仕方あるまい。
邪神は自身に無視できないダメージを与えた舞に化けただけだったが、予想外にも敵が怯えてくれたので邪悪な笑みを浮かべた。
「おい、舞の顔でそんな邪悪な笑みは浮かべないでもらおうか」
藍大がそう言った瞬間、邪神が地面に這いつくばった。
これは藍大がサクラの<
邪神は藍大の拘束を解きたかったけれど、十億もの腕に全方位から押し付けられてしまえば今のままだと出力が足りない。
そう判断して邪神はただの変身ではなく力を増しながら変形した。
その姿は舞を真似た姿ではなく、ブラドの本体のようなドラゴンだった。
『ご主人、邪神が第二形態になってる!』
「だろうな。俺の拘束が無理矢理引き剥がされた」
リルの報告を受けて藍大はやれやれと言わんばかりの表情になった。
「グルァァァァァァァァァァ!」
「アォォォォォォォォォォン!」
邪神の咆哮を相殺するようにリルが<
リルの機転が利かなかったならば、藍大達はその咆哮のせいで能力値がカットされていただろう。
「主君、吾輩も本体に代わるのだ」
「わかった」
ブラドがぬいぐるみの分体と本体の位置を入れ替え、この場にブラドの本体が現れた。
そして、ブラドは<
「ドラゴンに負ける訳にはいかんのだ!」
藍大の好感度ブーストとフィアの<
邪神も邪気をブレスとして放って応戦する。
「脇がお留守だね」
こっそりと邪神に気づかれないように移動していたサクラが死角から<
ところが、邪気で形成された荘厳な門が五重に展開されてサクラの攻撃の威力を削いでいった。
門が全て破壊された時には邪神がブラドとの競り合いを打ち切って後退し、サクラの攻撃を避けることに成功していた。
「なかなか手強いな。追い詰められそうで追い詰められない」
「追い詰めたと思ってもまだ余裕を残してるとは面倒な奴」
「それなら私が隙を作ってやる! 援護しな!」
舞はそう言って邪神に向かって距離を詰めていく。
邪神が両前脚を前に出し、爪を触手のように伸ばして舞を近づけさせないようにする。
「援護してあげる」
サクラが<
邪神が飛び上がって離れようとした瞬間、リルが邪神の上の位置に移動して<
『舞、今だよ!』
「サンキュー! オラァァァァァ!」
舞はサクラとリルに感謝しつつ、光で全身を覆ってから邪神の尻尾を掴んでジャイアントスイングをお見舞いした。
「吾輩、舞に一生勝てる気がしないのである」
「ブラド!? 気をしっかり持つのよっ」
「そうです! 戦いはまだ続いてるです!」
『|応援隊|*’v`)ノ*’v`)ノ*’v`)ノ ガンバレェ!!』
自分と同じ大きさになっている邪神が簡単にジャイアントスイングされるのを見てしまい、ブラドがしょんぼりしてしまった。
そんなブラドを仲良しトリオが慌てて励ましたのは、ブラドが簡単に舞にハグされるようになってしまった場合、舞がブラドの反応に飽きて自分達を優先してハグしてくるかもしれないと思ったからだ。
ブラドには今まで通りいじられキャラでいてもらわなくては困る。
仲良しトリオの気持ちはそうとしか言い表せないだろう。
「ほらそこ、戦いに集中する」
藍大はブラドと仲良しトリオを注意しつつ、パンドラの<
炎の刃が刺さった途端、邪神の体に炎が燃え広がる。
「アタシも追撃するわっ」
ゴルゴンが<
爆炎で視界が塞がれた後、その中から邪気を纏った大禍津日と八十禍津日が現れて藍大達に向かって突撃する。
『ご主人、あいつらは邪神じゃない! 幻覚の中に攻撃が仕込まれてるんだけだよ!』
「舞とサクラでそれぞれ対処してくれ」
「任せな!」
「了解!」
舞は雷光をミョルニルから伸ばし、ミョルニルを柄に見立てた雷光の大剣を操って大禍津日の幻影とその中に仕込まれた攻撃を消滅させた。
その一方、サクラも<
舞とサクラが邪神の攻撃に対応している間、邪神は自身の体を圧縮しながら今度はアーリマンとアザトースの幻影を藍大達に向かわせた。
「アォォォォォン!」
リルが<
「次は私の番です!」
『( *¯ ꒳¯*)私を忘れちゃ困る』
メロとゼルがそれぞれ<
こうしている間に邪神は次の形態へと変化していた。
ドラゴンの巨体から圧縮された体は人型であり、その見た目はデウス=エクス=マキナに瓜二つだった。
違いを挙げるとするならば、その体は隅から隅まで邪気で塗りたくられて真っ黒であることだろう。
「邪神最終形態。お前の名前はナキマ=スクエ=スウデだったのか。マキナとは力も名前も正反対らしいな」
藍大はようやく<
その名前がデウス=エクス=マキナの逆から読んだものであり、彼女が創世神ならばナキマ=スクエ=スウデは世界を滅亡に追いやるあらゆる負の力を持つ邪神であることを理解した。
戦いは最終ラウンドに突入する寸前だった。
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