【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第785話 甘いよご主人。食卓は戦場なんだよ
第785話 甘いよご主人。食卓は戦場なんだよ
天之狭霧神と国之狭霧神がコントをしている間に伊邪那美は藍大に声をかける。
「藍大よ、クロノスをシャングリラリゾートに呼んでも良いか? 藍大達の都合が良ければすぐにでもお礼を言いたいと申しておる」
「あんまり待たせるのも悪いか。わかった。今から行く」
「うむ。では、すぐに会えるよう手配するのじゃ」
伊邪那美が連絡を取ってから藍大はリルと伊邪那美と一緒にシャングリラリゾートの神域に移動した。
そこにはモノクルに懐中時計を装備したデキる執事風の男神がいた。
「お会いできるのを楽しみにしておりました。私が時空神クロノスでございます」
「丁寧にどうも。俺は”魔神”の逢魔藍大です」
「僕は”風神獣”のリルだよ」
「藍大様とリル様、この度は私を復活させていただきありがとうございます。今後はヘパイストスを補佐してG国の民を導いて参ります」
クロノスはかしこまった口調のまま深々と頭を下げた。
「そんな大げさに考えないで下さい。俺もリルも遠い所に一瞬で移動できる<
『このアビリティのおかげでご主人と一緒にいられる機会が多いよ。僕こそありがとうだよ』
「そうでしたか。であればリル様に1つアドバイスをさせていただきます。空間移動は頻繁にお使いのようですが、時間操作はまだまだ使う機会が少ないようです。日常生活でちょこちょこお使いいただければ、時間を止めたり他所と任意の対象の時間を切り離したりもできますので試してみて下さい」
『わかった。やってみるね』
「はい。また何かございましたら伊邪那美様経由でご相談下さい。できる限りお助けいたします。それでは失礼いたします」
クロノスは一礼して神域から去った。
「リルは確かに時間操作方面で<
『そんなことないよ。実は時々使ってる』
「何に?」
『ご主人のご飯の取り合いにならないように一瞬だけ時間を止めて確実に食べてる』
「・・・その使い方はどうなんだ?」
まさか逢魔家の食卓で神の名を冠するアビリティが使われているとは思わなかったため、藍大はリルにジト目を向けた。
『甘いよご主人。食卓は戦場なんだよ』
「戦場って物騒だな。もしかして、他の食いしん坊ズも何か使ってるのか?」
『ミオは<
「おい」
『フィアはいつも食事の前に<
「おいおい」
『他にもまだまだあるよ』
「おいおいおい・・・」
リルから逢魔家の食卓で食いしん坊ズがどのような戦いを繰り広げているのか聞き、藍大はそんなことになっていたのかと驚いた。
ミオとフィア以外では舞が瞬間的に限界突破して欲しいおかずを取りに行くとか、伊邪那美達も一瞬だけ結界を展開して他の食いしん坊ズと自分が欲しいおかずがぶつからないようにしているらしい。
「そんなことになってたとは知らなかった」
『当然だよ。食いしん坊ズ同士が競うことはあっても食いしん坊ズ以外には手を出さないのが食いしん坊ズの裏ルールなんだ』
「裏ルールなんてあったのかよ」
藍大はリルの言っていることが本当なのか気になり、伊邪那美の方を向いて確かめようとした。
しかし、伊邪那美は藍大と目を合わせようとしない。
どうやらリルの言っていることは事実のようだ。
『僕達には絶対に負けられない戦いがあるんだよ』
「そこまでして食べたいと思ってくれるのは嬉しいけどさ、アビリティを使って競うように食べるのは危ないだろ?」
『大丈夫だよ。サクラが<
(サクラ、いつもありがとう)
藍大はサクラがそんなところで活躍していると聞いて心から感謝した。
「オホン、藍大よ、そろそろ昼食の時間ではないかのう?」
「伊邪那美様、このタイミングで昼食の催促しちゃう?」
「お腹が空くのは生理現象なのじゃ!」
『ご主人、伊邪那美様を悪く言わないであげて。僕もお腹が空いて来ちゃった。きっとみんなもそうだと思うよ』
「しょうがないなぁ」
藍大は困った家族だと首を振ってからリルと伊邪那美と一緒にシャングリラに戻り、急いで昼食を用意した。
サクラには苦労をかけるが、こうして食事でも神の名を冠するアビリティを使えば神々の復活も早まるから、誰も怪我をしないようにすることを前提に藍大が黙認したのだ。
昼食後、藍大は茂に午前中の出来事を報告しようと電話をした。
『もしもし、何をやらかした? 午前中、急に胃が痛くなって胃薬のお世話になったぞ』
「やらかしたなんてとんでもない。必要なことをしたまでだ」
『そりゃそうなんだろうけど胃薬がいくつあっても足りない』
「そう思って特別価格で融通してるじゃん」
『そこについては本当に感謝してる』
茂は奈美から貰っている胃薬に対してしっかりと代金を払っている。
本来ならばそれだけでも給料がかなり持っていかれてしまうのだが、藍大は自分達がかける茂の胃への負担が多いことから材料費のみ貰っているのだ。
「さて、そろそろ何があったか共有しても良い?」
『大丈夫だ。既に胃薬もちゃんと飲んでる』
「今日の午前中に日本の神様2柱を保護してギリシャ神話のクロノス様を復活させた」
『はぁ、何がどうなったら半日でそうなるんだ』
電話の向こうで茂は胃の痛みに耐え切っていた。
茂も経験則で少し摂取量が足りないぐらいで済む程度には藍大の行動を胃痛によって予知できるようになったらしい。
「昨日、クラン掲示板で天姉から富士山の山頂にいるかもってアドバイスを貰って出向いたら、本当に天之狭霧神がいたんだ」
『富士山か。前にダンジョンを潰しに行った時は気づけなかったのか?』
「あの時はリルも今ぐらいの探知能力がなかったから気づけなかったんだ」
『なるほどな。あの頃は神様まで探知できるレベルじゃなかったのか。そうだとしたら、藍大達が以前出向いた場所で神様に縁がある場所って調べる価値がある?』
茂がそのように考えるのは当然だろう。
既に行ったけど何も見つかっていないというのはあくまでも過去の話であり、今もう一度調べれば弱っている神を見つけられるかもしれないのだから。
「価値はあるけどどの神が何処にいるかもう少し具体的な手掛かりがないと後回しだな」
『他に優先事項があると?』
「パンドラのパワーアップだ。あくまで俺の勘だけど、パンドラをダンジョンに連れてって強化すれば神の名を冠するアビリティを会得できる。それぐらいの強さは既に持ってるんだ」
『そっちの方が確実に藍大達の力になるなら優先すべきはパンドラだ。納得した』
パンドラは”水神獣”のミオと夫婦になった。
古臭い観念に拘っている訳ではないけれど、ミオに守られるだけというのはパンドラは嫌だと思っている。
だが、神の名を冠するアビリティを会得できておらず、神獣の称号もない今のパンドラはミオに実力で負けているのだ。
自分だっていざとなったらミオを守れるようになりたいというパンドラの願いを聞き、明日の藍大の予定はパンドラのパワーアップに決まった。
それをいるか未確定の神探しの方を優先するなんてことは藍大が選択するはずがない。
「とまあ、明日の予定は変わらないけど共有の続きだ。天之狭霧神をシャングリラに連れ帰った時、アビリティの使用回数が一定以上になってクロノス様が復活した」
『<
「そうそう。まさかウチの食卓が水面下で大変な戦いが繰り広げられてるとは思ってもなかったけど」
『大変な戦い? 何それ?』
「知りたいか?」
『・・・止めとく』
茂はこれ以上深入りすると胃薬を追加しなきゃならないと察して聞くのを止めた。
少しでも胃が落ち着いている時間を増やしたいのならばその方が賢明である。
「それはそれとして、天之狭霧神を助けた後、戦場ヶ原に国之狭霧神がいるって聞いて保護しに行った。あそこでは薩摩隼人の霊の群れが警備してて精神的に疲れた」
『うわぁ、そいつ等がチェストして来たのか?』
「そんな感じ。舞とリルが追い払ってくれたけどかなりヤバい連中だった。すまん、録画はしてないから見せられない」
『見たら胃薬案件なのでなくても全く問題ない』
藍大から茂への情報共有は終わり、藍大は午前中に色々あったので午後は家族とゆっくりとした時間を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます