第777話 お肉にお肉扱いされるなんて認めない!

 ジュエリーミミックはその後も何度か出現した。


 普段宝箱が隠されてそうな位置にジュエリーミミックは配置されており、5体目を倒した後にリルはムスッとしていた。


『舞にブラドが寂しがってるって念じてやるんだ』


『な、なんて悪質で効果的な仕返しなのだ! むっ、騎士の奥方! 何故こっちに来る、ぐぁぁぁぁぁ!』


 (リルの念が舞に届いたらしい。ブラド、どんまい)


 自分の頭の中にブラドが迫って来る舞を前にして逃げ場がない臨場感が伝わって来たため、藍大はリルの頭を撫でながら落ち着かせる。


「リル、ブラドが舞に捕まって抱き着かれてるらしいぞ」


『ワフン、因果応報だよ』


 ブラドが舞に抱き着かれていると聞いてリルの溜飲が下がったようだ。


 ジュエリーミミックはそれ以降出現しなくなり、その代わりに現れた雑魚モブモンスターを見てリルの尻尾が横にブンブンと動く。


「ワイバハムートLv100。ワイバーンが特殊進化してバハムート要素が加わったらしい。当然美味しいぞ」


『お肉~!』


 ワイバハムートは巨大魚と翼竜を足して2で割ったような外見だった。


 リルは嬉しそうに<雪女神罰パニッシュオブスカジ>でワイバハムートを冷凍保存した。


『ご主人、お肉ゲットした! こっちもステーキにしてね!』


「夜はハンバーグも忘れないでほしいニャ!」


『メンチカツもだよ!』


「よしよし。ステーキも焼くし、夜はアンピプテラと合挽肉にしたハンバーグやメンチカツも用意してやるからな」


「クゥ~ン♪」


「やったニャ♪」


『流石パパ♪』


 食いしん坊ズはご機嫌な様子で藍大に甘えた。


 特にリルは先程までのムスッとした感じが嘘のようである。


 ワイバハムートはその後も頻繁に現れたが、出現する度に食いしん坊ズが嬉々として狩ってみせた。


 それから藍大達は雲で構成された闘技場によく似た広間に辿り着いた。


 そこには犬の頭部に鯨の巨体を兼ね備えた群青色のモンスターが空中を泳いで待っていた。


 藍大はすかさずモンスター図鑑を視界に映し出して目の前の敵を調べ始めた。



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名前:なし 種族:ケートス

性別:雌 Lv:100

-----------------------------------------

HP:4,000/4,000

MP:4,000/4,000

STR:3,000

VIT:3,500

DEX:3,000

AGI:2,000

INT:3,500

LUK:3,000

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称号:掃除屋

   到達者

   悪食

アビリティ:<百万雨槍ミリオンランス><氷河時代アイスエイジ><螺旋水線スパイラルジェット

      <魔攻城砲マジックキャノン><吸引捕食ドローイート><震撼体潰クエイクプレス

      <自動再生オートリジェネ><全激減デシメーションオール

装備:なし

備考:胃に収めてしまえば全部栄養

-----------------------------------------



 (よくよく見ればケートスは俺達のことも捕食する気らしい)


「お前等美味そうだな」


 ケートスは空間を揺らすような低くて大きな声でそう告げた。


 その瞬間、食いしん坊ズがピクッと反応した。


『ご主人、こいつ食べられるよね?』


「ケートスは食べられるぞ。しかも美味しいらしい」


「食べ応えがありそうニャ」


『食べるのはあいつじゃなくてフィア達だよ』


 藍大が美味しく食べられると告げたことにより、食いしん坊ズがやる気になる。


 その目は既に捕食者のそれと言っても過言ではなかった。


「狩りの始まりニャ!」


 ミオは<猫神悪戯トリックオブバステト>で迷宮の幻影を創り出してケートスを閉じ込めた後、<運命神罠トラップオブノルン>で嵌め技コンボを発動する。


 ケートスは<百万雨槍ミリオンランス>で自分にダメージが入る前に罠を壊そうとしたが、ケートスの予想よりも罠が自分にぴったりくっついた位置にあって爆発の威力が増した。


 結果的に威力マシマシの爆発の連鎖に巻き込まれてしまい、ケートスにじわじわとダメージが入っていく。


『みんな頑張れ~!』


 フィアは<火神応援エールオブアグニ>でパーティー全員の底上げを行う。


 ケートスの使う属性と自分の相性が良くないから、今回はサポートに徹するようだ。


『お肉にお肉扱いされるなんて認めない!』


 その直後にリルが<時空神力パワーオブクロノス>でケートスの近くにより、<雷神審判ジャッジオブトール>をケートスにお見舞いする。


 大ダメージがケートスに入るけれど、<全激減デシメーションオール>で凌いで<自動再生オートリジェネ>でHPを回復することでケートスは力尽きずに済んだ。


 ワンテンポ遅れてドライザーが自身の射程圏にケートスを入れると、<英雄神力パワーオブヘラクレス>で強化した後に<竜鎮魂砲ドラゴンレクイエム>をケートスに放つ。


「やられて堪るか!」


 ケートスは一方的にやられてなるものかと<魔攻城砲マジックキャノン>で応戦する。


 しかし、自身とフィアのバフに加えて藍大の好感度バフの恩恵まで受けたドライザーの砲撃がケートスに撃ち破られるはずがない。


 すぐにケートスの<魔攻城砲マジックキャノン>が押し負けてドライザーの<竜鎮魂砲ドラゴンレクイエム>がケートスのHPを削り切った。


「みんなグッジョブ! 良い戦いだったな!」


『ワフン、僕達にかかれば勘違いお肉との戦いも楽勝だよ!』


『全力で攻撃できてスカッとした』


「ミーも久し振りに手応えのある敵と戦えたニャ」


『フィアもいっぱい応援したよ!』


「よしよし。愛い奴等め」


 藍大はリル達を順番に労った。


 その後、藍大達は協力してケートスの巨体の解体を始めた。


 ブラドがいれば<完全解体パーフェクトデモリッション>で解体も一瞬だが、この場にいないのでその手は使えない。


『吾輩としては誰かと入れ替わりたい気持ちが山々なのだが、まだ吾輩は騎士の奥方に捕まったままなので身動きが取れぬのだ』


 (まだ抱っこされたままなのか。それなら無理に入れ替えはできないな)


 ケートスが倒されたことを察知したブラドは自分が解体したいと思っていたらしいが、舞にまだ捕まったままであることを藍大にテレパシーで伝えた。


 流石に今のブラドと従魔の誰かの位置を入れ替えるのは舞や入れ替わる従魔がかわいそうだと判断し、藍大は自分達だけで解体したのだ。


「うわぁ、まさかジュエリーミミックまで飲み込んでたとはなぁ」


『”悪食”って称号欄にあったからしょうがないよ。それは置いといて宝箱があったよ』


「やっと本物が見つかったか。いや、だからブラドのテレパシーに悲壮感が漂ってたのか」


 ブラドが自分で解体したかったのは宝箱を隠すためだったようだ。


 もっとも、その企みは舞が知らぬ間にインターセプトしていたことで防がれたのだが。


 とりあえず、収納リュックに収納できるものから次々にしまってケートスの魔石だけが藍大達の手元に残った。


 宝箱は帰ってからサクラに開けてもらうので、発見してもこの場でできることは何もないのである。


 そうなると残った魔石を誰に使うかだが、今回はミオに与えることになった。


 理由としてはケートスの使える属性がミオと被る部分があったからだ。


 ミオもこの魔石が欲しいと主張したので藍大はミオの意見を尊重した訳である。


「ミオ、ケートスの魔石をおあがり」


「いただくニャ!」


 藍大の手から魔石を食べさせてもらった直後、ミオの毛並みがワンランク上の美しさに変化した。


『ミオのアビリティ:<螺旋水線スパイラルジェット>がアビリティ:<水精霊砲ウンディーネキャノン>に上書きされました』


「リルに続いてミオも精霊を冠するアビリティを会得したか」


「ニャハ、ミーも精霊の力を使えるのニャ!」


 ミオは<水精霊砲ウンディーネキャノン>を会得できたことでドヤ顔になった。


 藍大がミオの頭を撫でている横でドライザーとフィアがミオに羨ましそうな視線を送る。


土精霊ノームの力が欲しい』


『フィアも火精霊サラマンダーの力が欲しいな』


『大丈夫だよ。ドライザーもフィアも強く願えば魔石で強化した時に会得できるよ』


『ならば強く願っておこう』


『フィアもお願いする』


 リルが最初に精霊を冠するアビリティをゲットした存在なので、ドライザーもフィアもリルの言うことを信じて精霊の力が欲しいと願った。


「リルも言った通りきっと会得できるさ。今までは曖昧だったものがはっきりと狙いが定まったんだ。会得した時の自分のイメージを強くしておけば大丈夫だろ」


『ボスがそう言うならやってみよう』


『フィアもパパの言う通りにするね』


 そろそろミオを甘やかし続けると動けなくなるぐらいデレデレになってしまうので、藍大はミオの頭から手を放して探索を再開した。

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