第776話 斬り捨て御免
翌朝、ブラドがシャングリラダンジョン地下19階の増築を完了させたと報告したため、藍大は四神獣とゲンを連れて地下19階にやって来た。
「迷路だな。床や壁は雲で構成されてるみたいだけど」
『ブラドも考えたね』
「どゆこと?」
『雲の床はその上を歩けるような設定がされてるけど、しれっと底なしの部分もあるみたい。それと同じように壁も通り抜けられる所と密度が濃くて通り抜けられない所があるよ』
リルの説明を聞いて藍大はなるほどと頷いた。
「見極めが重要な訳だ」
『ワフン、僕がいれば道に迷うことも罠に嵌まることもないから安心してね』
「よしよし。頼りにしてるぞ」
「クゥ~ン♪」
藍大はリルの頭をわしゃわしゃと撫でた。
リルが藍大に甘えている横でミオが眉間に皺を寄せていた。
「ミオ、何かあったのか?」
「迷路の専門家であるミーに迷路で挑むとはブラドも良い度胸なのニャ」
「一体いつからミオは迷路の専門家になったんだ?」
「<
(確かにその頃には迷路での嵌め殺しがミオの最も効率的な戦い方だったもんな)
ミオの言い分を聞いて藍大は納得した。
『ご主人、あそこの雲の壁の中に敵がスタンバイしてるよ』
『ボス、攻撃してもよろしいか?』
「OK。ドライザーに任せる」
リルが
藍大から許可が下りたらドライザーは<
それによって放たれた斬撃が雲の壁を通過し、壁の中に隠れていたモンスターの血が周囲に飛び散る。
「ゲェ!?」
斬られた痛みで声を上げた
その時には既にドライザーが斬撃を放っており、その斬撃が命中して羽が生えた緑色の蛇のようなモンスターが真っ二つになって倒れた。
『斬り捨て御免』
「お見事。ドライザーが倒したのはアンピプテラLv100。ワイバーンの仲間らしい」
『ご主人、アンピプテラは食べられるんだよね!?』
「落ち着くんだリル。アンピプテラはちゃんと食べられるから」
『ステーキ!』
「ハンバーグも良いニャ!」
『メンチカツも良いと思う!』
藍大がアンピプテラは食べられると断定した瞬間、食いしん坊ズがどうやって食べたいのかリクエストを始めた。
リル達は藍大に自分のリクエストを通してほしいと甘えるから、藍大は順番にリル達の頭を撫でて落ち着かせる。
「お昼は料理する時間の都合上ステーキになると思うが、夜は時間があるからハンバーグとかメンチカツも作れるぞ」
『ワフン、やる気が出て来たよ!』
「いっぱい狩るニャ!」
『お肉たくさん狩るよ!』
食いしん坊ズのやる気スイッチが入ったようだ。
『10m先の床と15m先の壁の両側にもアンピプテラが隠れてる』
『床のは貰う!』
「ミーは右ニャ!」
『フィアは左だね!』
リルが潜伏するアンピプテラの場所を嗅ぎ当てると、ドライザー達が自分の攻撃する相手を宣言して仕掛ける。
ドライザーは<
「ゲェ!」
余りの激痛に床の上に跳び出すと同時に短く鳴き、アンピプテラは地面に触れた時には既に力尽きていた。
ミオは右側の壁周辺に<
それらが多段攻撃となって右側の壁を吹き飛ばし、壁の中にいたアンピプテラが爆発の衝撃で吹き飛ばされたまま動かなくなった。
フィアは<
雲の水蒸気が一気に蒸発してアンピプテラは蒸し焼きになって力尽きた。
ドライザー達は順調に神の名を冠するアビリティを使ってアンピプテラを倒せていると言えよう。
倒したアンピプテラ達を無駄なく回収した後、藍大達はリルの案内で迷路を進む。
少し進んだ所でリルがピタリと止まった。
「何か罠があるのか? それとも宝箱?」
『残念ながら前者だよ。この先に薄く線状の雷があちこちに張り巡らされてる』
「潜入ミッションの赤外線センサーみたいな感じ?」
『うん。でも、こっちは触れたら警告音が鳴るどころか雷の出力が上がって黒焦げになるよ』
「ブラドめ、殺意の高い罠を仕掛けよって」
リルに<
その一方で仲良しトリオがこの罠を知ったら挑んでみたいと目を輝かせるのではないかとも思った。
この手の罠はゲームや漫画でも出て来るから、リアルにあるなら是非とも見たいと彼女達なら言うに違いない。
「リル、この罠はどうやって突破するニャ?」
『僕が壊すから安心して』
ミオの問いに対してリルは<
壁の雲を力技で散らしたことにより、薄く線状に張り巡らされた雷が完全に消えた。
『ふむ。ビリビリする感じがなくなった』
「ドライザーにもわかるのか」
『感覚を研ぎ澄ませればわかる』
「ミーも罠が消えたってわかったニャ」
『フィアもだよ』
ドライザー達も一旦気づいてしまえば感知できるらしく、罠の消滅を確認できたようだ。
「リル、もう通って大丈夫か?」
『大丈夫だけどご主人とミオは僕の背中に乗って。罠を破壊したら床が所々落とし穴に変わったみたい』
「二段構えとはブラドも力を入れてるじゃないか」
『ワフン、それでも僕が見抜いちゃうけどね』
得意気に言うリルの顎の下を撫でた後、藍大はミオと一緒にリルの背中に乗る。
そして、リルが安全なルートを進んでドライザーとフィアは空を飛んで落とし穴を回避した。
しばらくは落とし穴ゾーンだったのだが、今度は前方から旋風が藍大達に接近する。
『ワッフン!』
リルが目視確認した旋風に向かって<
『後は任せろ』
ドライザーがラストリゾートを
派手な音がするのと同時に氷のオブジェが粉々に砕かれ、藍大達の進路がクリアになったはずだった。
ところが、アンピプテラの群れがいつの間にか通路いっぱいに広がっており、藍大達の邪魔をしている。
アンピプテラ達は一斉に旋風を発生させて藍大達を攻撃し始めた。
「あの旋風はアンピプテラ達の仕業だったのか。リル!」
『任せて!』
リルは<
藍大の好感度バフによって威力が膨れ上がっているから、アンピプテラ達の攻撃がリルの攻撃に勝てるはずがなかったのだ。
『ミオ、フィア、援護は任せた』
「合点承知ニャ!」
『任せて~!』
ドライザーが<
ミオは<
ミオの攻撃を無視できないアンピプテラ達は<
ドライザーは大太刀に変形させたラストリゾートでバッサバッサとアンピプテラ達を倒していき、3体の連係プレーで敵は全滅した。
「みんなお疲れ様。見事なチームプレーだったぞ」
『ワフン、僕達にかかれば楽勝だよ』
『造作もない』
「超余裕だったニャ」
『フィアもへっちゃらだよ』
ドヤ顔の四神獣を藍大は順番に撫でて労った。
もっとも、ドライザーは撫でてもらうには硬すぎたのでグータッチだったが。
リルは最初に頭を撫でてもらっており、自分以外が労ってもらっている間に周囲を警戒していた。
その時に右側の雲の壁の中に隠れた何かを見つけたらしく、<
「リル、敵がいたの?」
『うん。豪華な宝箱に見せかけたジュエリーミミックがいたよ。ムカついたから倒しちゃった』
そう言ってリルは<
藍大が鑑定してもジュエリーミミックLv100であり、欲が深い者程騙されやすい外見だと理解して苦笑した。
宝箱じゃなくてしょんぼりするリルを励まし、藍大達は戦利品を回収して先へと進んだ。
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