第756話 アルジニウムって何?
通路を進んで行くと、藍大達の足元は再び砂で床が見えなくなった。
その先には巨大で黒い
「アダマスフィドラーLv100。<
「藍大~、食べれる~?」
「勿論だ。だから敵が守りに入る前にグチャグチャにしないで倒してくれよな」
「は~い」
藍大と舞の会話を聞いたアダマスフィドラー達は横一列に並んで一斉に<
「主、あれはそのアビリティ使ってる?」
「使ってる。今のアダマスフィドラーのVITは5,000に到達してるぞ」
「ふーん、それぐらいはあるんだ。だったら舞が殴ってもグチャグチャにはならないんじゃない?」
サクラは大して驚くことなく冷静に敵の打たれ強さを分析した。
藍大はその考えに頷いた。
「5,000あればまあ、思い切り凹むぐらいで済むと思うぞ。ということで、舞の出番だ」
「任せな!」
舞は一番左端のアダマスフィドラーの側面に回り込み、雷光を纏わせたミョルニルでフルスイングした。
殴られた個体はアビリティを発動していて動けず、舞のSTRにそのVITが負けて右に吹き飛ばす。
その攻撃が横一列に並んだ全てのアダマスフィドラーに伝わり、それらのHPは風前の灯火という段階まで追い詰めてみせた。
「後は私とリルで手分けしてとどめだね」
『そうだね』
もう一度舞に同じ攻撃をされたらオーバーキルなので、サクラとリルが瀕死のアダマスフィドラー達を最低限の力で順番にとどめを刺した。
サクラとリルが攻撃する時にはアダマスフィドラー達の<
「舞が弱らせてサクラとリルが倒す。見事なチームプレイだったな」
「ゆくゆくはアダマスフィドラー達の本気の守りも超えてみせたいな~」
「・・・それができたら戦神じゃなくて破壊神って認識されそう」
『舞、超えても良いけど食べられなくしちゃ駄目だからね!』
「勿論!」
サクラは舞の神様としての扱いが変わることを懸念していたが、リルはアダマスフィドラーが食べられなくならないならOKという認識である。
食いしん坊ズレベルにもなると小さいことは気にしないようだ。
その後も何度かアダマスフィドラーの群れと遭遇しては倒しを繰り返したところ、その先にはラクダ型の玉座に座るオリエンタルな装いをした女悪魔の姿があった。
「いらっしゃ~い」
「主、あの女は見ちゃ駄目」
「と言われる前に既にサクラに目隠しされたんだが」
サクラは敵モンスターを藍大に見せてはいけないと本能的に察して藍大に目隠しした。
それゆえ、藍大はチラッとモンスターを見て鑑定している途中に視界が真っ暗になった。
「一応伝えておくが、敵は”掃除屋”のグレモリーLv100。隠された物を探すのが得意で、”希少種”の称号のせいで男や雄を魅了する力に長けてる。リルは大丈夫か?」
『大丈夫。昼にウシュムガルとアダマスフィドラーでご主人に何を作ってもらうか考えてたからね。今は目を閉じてるから魅了されてないよ』
(食欲が魅了に勝るんだからリルを魅了するには並の実力じゃ足りないか)
リルならばあり得ると藍大は納得したけれど、こんな魅了対策ができるのはよっぽど食いしん坊なリルぐらいだ。
藍大の場合はゲンを憑依していたから魅了の効果も激減しているから別の意味で例外である。
「私の美しさを目で見て楽しめないなんて絶対に損してるわね」
「何言ってんの? 主には私達がいるし、リルには食欲・・・じゃなくてリュカがいる」
(サクラさんや、そこは迷わずにリュカと言ってあげなさいよ)
実際はそうだとしても、形だけでもそこはリュカと言ってあげるべきではと思う藍大だった。
「あんた達よりも私の方が美しいわ。だからその男と雄の目を開かせなさい」
「寝言は寝て言え!」
「げふっ」
グレモリーの発言にイラっと来た舞がミョルニルを投擲した結果、それがグレモリーの鳩尾に命中した。
グレモリーはかなりのダメージを負って膝から崩れ落ちた。
その隙を見逃すサクラではないので、<
「お前如きが私達よりも美しい? 自己認知がバグってるとしか思えない」
「痛い痛い痛い痛い!」
「えっ、何? 何か言った?」
「痛い止めて痛い止めて痛い止めて痛い止めて!」
「聞こえなーい」
「お願い赦してお願い赦してお願い赦してお願い赦して!」
グレモリーが自分の罪を赦してほしいと懇願するけれど、サクラは絶対に許さない。
実際のところ、グレモリーが舞やサクラに勝るぐらい美しいかと訊かれれば、10人中9人は即答でそれはないと言い、残る1人は一瞬悩んでそれはないと答えるだろう。
藍大のために美容には気を遣っており、過度なダイエットをしなくとも抜群のプロポーションを保っている舞とサクラに勝てる者はいないのではないだろうか。
余談だが、仲良しトリオも美容には気を遣っているけれど、舞やサクラと比べると可愛さの方が目立っている。
「サクラ、弱い者虐めは止めような」
「は~い」
藍大がサクラのドSっぷりを耳で聞いて止めねばと判断してそう言えば、サクラはおとなしく<
グレモリーが動かなくなれば魅了されることもないから、サクラは目隠ししている手を外してくれるのではないかと藍大は思っていた。
確かにサクラは目隠し止めたが、その場で藍大の体を横に180度回転させて抱き締めた。
「サクラ?」
「ごめんね主。ちょっとあいつが生意気なことを言うからムキになっちゃったの。アルジニウムを吸収して落ち着かせて」
「アルジニウムって何?」
「私もランタニウムを吸収する~」
サクラが藍大に抱き着いているのを見て、自分も抱き着くのだと舞が反対側からハグした。
藍大はゲンの力を借りれば脱出できたけれど、舞とサクラがこれで落ち着いてくれるならばと2人の好きなようにさせた。
舞とサクラが離れた後、リルが放置されていて寂しかったんだぞと藍大に甘えたので藍大はリルを甘やかした。
そのせいでグレモリーの解体と魔石の回収を始めるまでに時間がかかった。
今回魔石を貰えるのはサクラなので、藍大はサクラにグレモリーの魔石を与えた。
魔石を飲み込んだサクラの外見こそ変わらなかったが、内なる力が解放されたような雰囲気である。
『サクラのアビリティ:<
(・・・何これめっちゃ強力なんですけど)
藍大はモンスター図鑑で<
<
それに対して上書きして会得した<
つまり、サクラが汚いと思えば一般的には汚くないものも汚れ扱いで消されてしまうという訳だ。
これには藍大が戦慄するのも頷ける。
「サクラ、<
「邪魔者を簡単に消せるのに勿体なくない?」
『それは違うよ!』
「どう違うの?」
サクラがサラッと恐ろしいことを言うのに対してリルが反論した。
リルが何を言うのか気になり、サクラはリルの反対意見を詳しく聞くことにした。
『主に歯向かう身の程知らずだとしても、それが美味しいお肉の可能性もあるもん! 消しちゃったら美味しい料理が食べられなくなっちゃうから普段使いは駄目だよ!』
「はっ、確かに! 私もリル君に賛成!」
リルの言い分に舞もそうなったら困るとリルに賛成した。
食いしん坊ズは折角の美味しい食材が失われることを恐れているのだ。
そう言われるとサクラも自分の考えを一部改めた。
「わかった。主が美味しく料理できそうと判断した時や使える素材だって言った時は使わないようにする」
「サクラならそう言ってくれると思った」
『なんだかんだ言ってサクラもご主人の料理が好きだもんね』
「当然でしょ。だって、主の料理は美味しいもん」
舞とリルがサクラの発言にうんうんと頷いていると藍大も自分の料理を褒められて嬉しかったようだ。
「・・・今日の夕食は楽しみにしとけ」
「『やった~!』」
「うん!」
今晩の食事が豪華なものになるとわかり、残りはフロアボスだけという状態で舞達のやる気が格段に上がった。
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