【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第729話 魔力機関ですか? いいえ、兵器です
第729話 魔力機関ですか? いいえ、兵器です
雑食帝の参加した議論で食料不足を美味しく解決できる可能性が見えたところで次のテーマに移る。
「本日最後のテーマは魔力機関です。概況報告では取り上げられませんでしたが、昨年に逢魔さんからモンスターのドロップアイテムでMPを燃料とするバイクが提供されました。次世代型の移動手段としてお話ができればと思います」
『魔力機関・・・ですと・・・?』
『産業革命が起きますよ、これ?』
『『『・・・『『さすまじ!』』・・・』』』
志保の発言によって会場が沸いた。
どうやら日本以外でデーモンライダーが見つかったという報告はなかったらしい。
もしもあったならば日本よりも先に発表して報告し、称賛を受けていたに違いない。
志保がデーモンライダーの乗っていたバイクをスクリーンに映し出す。
「こちらがそのバイクです。そのまま使うとMP効率が非常に悪いので、現在日本のDMU職人班がMPバイクと呼ぶこれの改良とMPの動力化に取り組んでおります」
(そういえばミスリル製の調理器具の中にMPで動くやつがあったな)
魔力機関と呼ぶには少し違うかもしれないが、MP調理器具もまたMPで動く。
藍大がMP調理器具のことを考えていたのと同様にリルも考えていたようだ。
『ご主人、今更だけど僕達に料理を作ってくれる時に使う調理器具もMPで動いてるよね』
「俺も今そう思ったところ」
『ワフン、僕とご主人は考えてることが一緒の仲良しだね♪』
「よしよし、愛い奴め」
藍大はリルをわしゃわしゃと撫でた。
会場がMPバイクでざわついている中、藍大とリルは平常運転だった。
志保もテーマを提示した者なので驚いている様子はなく話を続ける。
「先程どなたからか聞こえましたが、MPを動力とした機械製品が増えれば本当に産業革命も夢ではありません。逢魔さんの家ではミスリル製の調理器具でMPを消費して動く物がありましたよね?」
志保も藍大とリルと同じことを思いついていたらしい。
彼女はリルと同じことを考えていたため、自分とリルも仲良しなのではと心の中でテンションが高まっているけどなんとかそれを表に出さないようにしている。
話を振られれば藍大は回答する。
「そうですね。よく使うのはミスリルヒーターやミスリル炊飯器、ミスリルトースターですかね」
『いつも思うのですが東洋の魔神は世界の最先端を進んでます』
『宝箱からミスリル製の調理器具をバンバン当ててるという噂は本当でしたか』
『魔神メシ、味が気になりますね』
『師匠メシ、とても美味しそうでした』
最後のコメントはN国のインゲルのものだ。
彼女はN国のオーロラダンジョンを探索する際に藍大の作った弁当を見ていたため、藍大の料理のすごさを知っている1人である。
もっとも、それと同時に食いしん坊ズの食欲のすごさも思い知ったのだが。
あっという間に会場内がミスリル製の調理器具の話に移り変わっていたが、E国のキャサリンの質問で話が戻る。
『東洋の魔神に質問です。ご自身のクランでMPバイクは改良してないのですか?』
「ドライザーが改良しました。折角ですから写真と動画をお見せしましょう。吉田本部長、データを送るのでスクリーンに映して下さい」
そう言って藍大は志保に写真と動画を送る。
志保は受信したメールに添付された写真からスクリーンに投影する。
そこには黒光りしたバイクが映し出されていた。
「このバイクはリルの鑑定結果によるとレギンレイヴと言います。リル、機能について説明してくれるか?」
『任せて!』
藍大に頼まれてリルは嬉しそうに応じる。
尻尾をブンブンと振るリルを見て会場内のモフラー達が可愛いと騒いでいるがそれはスルーしよう。
『レギンレイヴはMP効率を大幅に改良した舞専用の乗り物だよ。アダマンタイト製だから頑丈だし、静かに動くから騒音に悩まされることもないんだ。車体の横からブレードが飛び出してモンスターの横を通れば斬って攻撃することもできるんだよ』
「その動画がありますのでお見せします。吉田本部長、お願いします」
「かしこまりました」
藍大に言われて志保が画面をレギンレイヴの写真から動画に切り替える。
それにより、レギンレイヴに乗った舞が多摩センターダンジョンでケリュネディアーと戦う動画が流れ始める。
余談だが、舞はいつもの鎧ではなくドライザーがふざけて作った長ランを着ている。
その背中には
『ヒャッハァァァッ! ぶった斬ってやるぜぇぇぇ!』
戦闘モードの舞がレディース時代を思い出したかのようにバイクを巧みに操り、ケリュネディアーを真っ二つにしてみせた。
『魔力機関ですか? いいえ、兵器です』
『暴食戦神半端ないです。ミョルニルを使わなくても普通に強いじゃないですか』
『彼女に逆らってはいけないということですね、わかります』
レギンレイヴのお披露目のはずが、レギンレイヴの評価よりも舞の恐ろしさの方が注目されてしまった。
『やっぱりレギンレイヴだけじゃ舞の強さは引き出せないよ。僕が乗せた方が良いね』
「よしよし。リルと舞のコンビはパワーとスピードの頂点だもんな」
「クゥ~ン♪」
リルがレギンレイヴに張り合っているのを見て藍大はリルを褒めた。
藍大に自分の方がすごいとわかってもらえてリルはご機嫌そうに鳴いた。
レギンレイヴのお披露目が終わった後、志保が話を魔力機関に戻す。
「今はバイクだけですが、自動車や特殊車両、発電等魔力機関を使って人々の生活を向上させられれば良いと考えております」
『確かにそうですな。環境問題に目に見えた効果を与えてくれるでしょう』
『研究し甲斐のありそうな分野であることは間違いありませんね』
『今日の会議が終わったらダンジョンにデーモンライダーを出してもらいましょう』
最後のコメントは各国のDMU本部長の総意だろう。
きっと今日の夜には会議参加国のダンジョンにデーモンライダーが現れ、暴走族のようにダンジョンを走り回ることだろう。
欲をかいた国が現れれば世紀末ダンジョンなんてものができてしまうかもしれない。
そんなことになればきっと掲示板が大盛り上がりになるのは間違いない。
ある程度話がまとまったところでD国のDMU本部長がふと思いついたことを口にする。
『東洋の魔神がダンジョンでデーモンライダーに出くわしたということは、ダンジョンの間引きが遅れるとデーモンライダーがスタンピードで外に出て来てしまうということでしょうか?』
『そうなったら本当に世紀末な世界になってしまいますね』
『国力の低い国では頻繁にスタンピードが起きてるはずです。我々が把握できていないだけで既に世紀末モードな国があるのかもしれません』
MPバイクの発見は産業革命に繋がるかもしれないが、デーモンライダーがスタンピードでダンジョンの外に出て来てしまうのはよろしくない。
それだけで治安は悪化するし、モンスターの機動力が上がって悪いことはあっても良いことはないからだ。
志保は丁度良い機会だと思って自身の懸念も口に出す。
「デーモンライダーなら
ここで言う不味いポイントは2つある。
1つ目は強いモンスターが元から機動力のあるMPバイクを持っているということだ。
機動力さえなければ倒せる相手なのに、機動力があるから攻撃が当たらなくて倒せないなんてことがあり得る。
2つ目は強いモンスターに人類が改良したMPバイクを奪われることだ。
バティンやダンタリオンのように人間に化けられる強敵が改良されたMPバイクを手にしたとしよう。
確実に碌なことにはならない。
志保の発言を受けてMPバイクは細心の注意を払って扱うことがここに決まった。
午後の時間は雑食と魔力機関の話で意見が活発に交わされ、今回で5回目になる国際会議の中でもかなり有意義なものだったと言えよう。
時間もそろそろ頃合いということで午後の部はこれにて終了となり、この後は情報交換会と称した懇親会が行われるのだった。
藍大達と少しでも話がしたいと会議参加者が群がったのは言うまでもない。
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