第703話 ご主人から何も奪わせないよ
4階はいきなりボス部屋だった。
(しまった。ブラドかモルガナを連れて来れば良かった)
思ったよりも探索に時間がかからなかったせいで、”ダンジョンマスター”がいると思しきボス部屋に到着してしまった。
藍大がこのまま”ダンジョンマスター”を倒したらダンジョンを消滅させるしかないのではと思った時、ブラドがベストタイミングでテレパシーを送って来た。
『問題ないのである。シャングリラリゾートから近い位置にあるE5ダンジョンならば、今の吾輩の力の届く範囲なのだ。”ダンジョンマスター”を倒したとわかれば支配権を奪うので安心して倒してほしいのである』
(そりゃ助かった)
予想外の事態が起きてしまったが、ブラドがパワーアップしていたおかげで無事にダンジョンの支配権を奪えると聞いて藍大はホッとした。
懸念事項がなくなれば挑む以外に選択肢はない。
藍大達はボス部屋の扉を開いてその中に入った。
ボス部屋の中には捻じれた角を持つ巨大な赤牛が待ち受けていた。
その赤牛は顔が人間に似ており、牛には本来存在しない虎の牙を生やしている。
牛との違いはそれ以外にもあり、本来蹄があるべき部分には人間と変わらない爪が生えているようだ。
キマイラ系列のモンスターだろうかと予想しつつ、藍大はモンスター図鑑で目の前の敵について調べ始めた。
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名前:なし 種族:トウテツ
性別:雌 Lv:100
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HP:3,000/3,000
MP:3,000/3,000
STR:2,500
VIT:3,500
DEX:2,000
AGI:2,000
INT:2,500
LUK:3,000
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称号:ダンジョンマスター(E5)
守銭奴
鉄の胃袋
到達者
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:お前等、金持ってるだろ? ほら、飛んでみいな
-----------------------------------------
(”ダンジョンマスター”がカツアゲかよ)
藍大は苦笑いしながら鑑定結果を読み上げる。
「敵は”ダンジョンマスター”のトウテツLv100。強欲でなんでも奪おうとするし、肉弾戦が得意な奴だ」
トウテツは藍大を金持ちだと察したのか下卑た笑みを浮かべながらロックオンしている。
「お前から金の匂いがする。私に全部寄越せ」
トウテツの言葉にリルがムッとした表情で藍大の前に出る。
『ご主人から何も奪わせないよ』
(リルがヒーローみたいに見える)
藍大がリルを眩しく思っていると仲良しトリオも藍大を守るように前に出た。
「マスターにおねだりするのはアタシ達の特権なんだからねっ」
「下卑た笑みを泣き顔に変えてやるです」
『( `Д´)ノてめえは私を怒らせた』
トウテツはリル達の地雷を踏んでしまったが、そんなの関係ないと全力で息を吸い込む。
これは<
しかし、リルと仲良しトリオは今のトウテツよりも強いし、藍大もゲンが<
『喰らえ!』
リルが<
立ち上がったトウテツは何も奪えなかったことに苛立ち、<
「攻撃じゃなくて金を寄越せぇぇぇ!」
「近寄るんじゃないわっ」
ゴルゴンがプンスカ怒って<
そこにメロとゼルが追い打ちをかける。
「狙い撃つです」
『(=゚ω゚)ノ ---===≡≡≡ 卍 シュッシュッシュシュシュッ!』
メロは<
「ギャァァァァァ!」
それがトウテツの発した最後の叫び声だった。
憐れなトウテツは藍大達に近づくことができないまま力尽き、今までにトウテツが<
『掌握完了なのだ』
ブラドはE5ダンジョンから”ダンジョンマスター”の気配が消えたのを察し、ダンジョンの支配権を奪取した。
その直後に藍大の耳に伊邪那美のアナウンスが届く。
『おめでとうございます。ブラドが日本列島の外にあるダンジョンを3つ支配下に置きました』
『初回特典として須佐之男命の力が90%まで回復しました』
(須佐之男の復活もあと少しか。天姉は大丈夫だろうか?)
アナウンスの内容を聞いて須佐之男命の復活が近いことを知り、藍大は天照大神が心労で病むのではないかと心配になった。
だが、今の須佐之男命には櫛名田比売がいるから言動はマシになっている。
いざとなれば自分もフォローすることにして、ひとまず藍大はリル達に感謝の言葉を伝える。
「みんなお疲れ様。守ってくれてありがとな」
『ワフン、僕達にかかればあんな奴大したことないよ』
「超余裕だったのよっ」
「ミッションコンプリートです」
『(ノ≧ڡ≦)それほどでもある!』
リルも仲良しトリオも揃ってドヤ顔だったので、藍大は順番にハグしてあげた。
それから、藍大達はトウテツのばら撒いた物品を回収しつつ、トウテツも解体して魔石以外を収納リュックにしまった。
「トウテツの肉って食べられるらしいぞ」
『ご主人、僕は唐揚げ以外も食べられるよ』
「よしよし。トウテツの肉を使って他にも作ってやるからな」
『やったね♪』
リルは唐揚げ以外にも楽しみが増えて尻尾をブンブン振っている。
その一方、ゼルが早く魔石をちょうだいとアピールするので藍大はゼルにそれを与えた。
それによってゼルの肌がキメ細かくなり、ゼルはとてもご機嫌である。
『ゼルのアビリティ:<
(ゼルは順調にサクラの後を追ってるなぁ)
今のゼルは<
既にサクラは<
ゼルのパワーアップも終わったところでやるべきことも終わり、藍大達はE5ダンジョンを脱出して帰宅した。
家に着いた藍大は早速サクラに宝箱を渡す。
「サクラ、ただいま。これ、今日の宝箱」
「おかえりなさい。今日は何を引き当てようか?」
「蒸し器が欲しいな。これから寒くなって来るだろうから役立ちそう」
「任せて。・・・はい、蒸し器だよ」
『ミスリル蒸し器だって。肉まん蒸すのに丁度良いね!』
リルは鑑定結果にちゃっかり自分のリクエストを添えている。
そんな愛らしいリルの頭を撫でながら藍大はサクラにお礼を言う。
「ありがとう、サクラ。百発百中だな」
「フフン。運命は私が掌握してるもんね」
そこにお腹を空かせた舞達がやってきたので、藍大は大急ぎで夕食の準備に移った。
リルと約束した通り、トリニティワイバーンの唐揚げだけでなく、トウテツの肉を使ったステーキも食卓に並んだ。
食べ応え十分な肉料理を食いしん坊ズはとても嬉しそうに食べていた。
夕食後、藍大は今日録画した動画を見やすく編集したものを”楽園の守り人”の掲示板に先行放映してみた。
その結果、2階のリル無双や3階のヒャッハーな悪魔達を見て盛り上がった。
”楽園の守り人”のホームページにその動画をアップロードすると、瞬く間に再生数が伸びて行った。
「おぉ、どんどん伸びてくじゃん」
『ワッフン、きっとモフラー達が僕の活躍を見て拡散してるんだよ』
「アタシだって大活躍したんだからねっ」
「私も今日はクールに決めたですよ」
『(^_^♪)リピート再生不可避』
藍大のコメントにリル達が渾身のドヤ顔を披露した。
少し時間が経ってから、アップロードされた動画に気づいた白雪から動画見ましたと興奮した声で電話が来たため、それがますますリル達をドヤ顔にさせたのは言うまでもない。
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