第697話 お肉置いてけ!
場面は戻って藍大達はアスタロトを追っていた。
リルの背中に藍大とミオが乗り、ドライザーとフィアが空を飛んで随行する。
もっとも、リルの<
藍大の中ではアスタロトはドラゴンに乗る悪魔という認識だったが、実際に目の前にいるアスタロトは悪魔の翼を背中から生やしたドラゴニュートだった。
鱗は深緑であり、手には見るからに強そうな槍が握られている。
金色の目は藍大達に追いつかれたことで見開かれていた。
藍大はアスタロトが驚いている内にモンスター図鑑を視界に映し出す。
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名前:なし 種族:アスタロト
性別:雄 Lv:100
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HP:3,000/3,000
MP:3,500/3,500
STR:3,000
VIT:3,000
DEX:3,000
AGI:3,000
INT:3,500
LUK:2,500
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称号:邪神代行者
蠱毒のグルメ
鉄の胃袋
到達者
アビリティ:<
<
<
装備:アスタヴァル
備考:驚愕
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(回復を上回るペースじゃなきゃ勿体ないことになりそうだ)
アスタロトのステータスを調べ終えた藍大はアスタロトを面倒な相手だと感じた。
<
しかも、<
このサイクルを突破できるダメージを与えられず、今までにアスタロトと戦った者達はアスタロトを追い詰められずにいた。
『ボス、前衛は任せてほしい』
「武器持ちのモンスターが相手だもんな。勿論前衛は任せよう」
「ミーが援護するニャ」
『フィアもやるよ』
『感謝する。サポートは任せる』
ドライザーは槍を使うアスタロトと戦ってみたくて仕方ないらしい。
ミオとフィアも戦うために来たため、ドライザーは一騎打ちしたい気持ちを我慢している。
『今回は僕がご主人の護衛だね』
「リル、頼んだ」
ミオはリルから降りたが藍大は乗ったままだ。
リルは藍大を乗せたまま基本的には観戦し、必要に応じて手を出すつもりらしい。
アスタロトからすれば舐められたものだけれど、それにとやかく言う余裕はなかった。
アスタヴァルを構えてドライザーにそれを突き出す。
「喰らえ!」
『効かぬ』
ドライザーはラストリゾートを槍の形に変え、槍VS槍の戦いを演出した。
アスタヴァルはアラドヴァルを模したアスタロトの槍だ。
アラドヴァルの発火機能の代わりに猛毒が仕込まれており、傷口からその猛毒が入ればすぐに身動きは取れなくなるだろう。
ただし、それは相手に状態異常が通用する無機物以外のモンスターだった場合に限る。
ドライザーは無機型モンスターなので傷口から猛毒が入ることはない。
「くっ、槍では勝てぬか!」
『槍以外でも勝てないだろう』
ドライザーの槍捌きにアスタロトが手も足も出ず、簡単に繰り出す攻撃を捌かれてしまえば悔しそうな表情になるのも頷ける。
そんなアスタロトに対してドライザーは煽るのを忘れない。
「ミーを忘れていないかニャ?」
その瞬間、アスタロトの右腕が爆発して吹き飛んだ。
<
今回仕掛けた罠は特定の位置を通過することでカウンターが溜まり、それが3になるとミオが指定した部位が爆発するというものだった。
ミオは今回、アスタロトの右腕を事前に選んでいたので肘から先が吹き飛んだ。
「おのれ!」
『フィアもいるんだよ!』
「ゲフッ!?」
フィアがアスタロトの死角から<
その隙にリルが<
『ご主人、回収したよ』
「グッジョブ。収納完了だ」
アスタロトに危険な武器を持たせたままでいる意味はないから、藍大はリルを褒めつつアスタヴァルを収納リュックにしまい込んだ。
フィアによって吹き飛ばされたアスタロトは<
「グラァァァァァァァァァァ!」
いきなりアスタロトが大気を揺るがすように吠えた。
それと同時にアスタロトの体がドラゴニュートのものからドラゴンへと変わっていく。
ドラゴンになったアスタロトを見てリルは期待に目を輝かせる。
『ご主人、あの状態ならアスタロトのお肉って食べられる!?』
「・・・毒袋を傷つけなければドラゴンの肉だな。毒袋は逆鱗付近にあるぞ」
『ドライザー達、後は僕に任せて!』
『了解』
「わかったニャ」
『は~い』
リルが参戦すると聞いてドライザー達はおとなしく出番を譲った。
ミオとフィアは絶対に毒袋を傷つけずに倒せる自信がなかったので、美味しいお肉のために後は任せたのだ。
ドライザーは武器を使った戦いで自分が完全にアスタロトに勝っていたから、ドラゴンに変身して正気を失ったアスタロトと絶対に戦いたいという拘りはなかったのである。
その上、リルが本気で戦うなら藍大を背中から降ろすため、ドライザーは藍大の護衛をすれば良いとも考えていた。
藍大を降ろしてドライザー達に任せると、リルは<
「グラァァァァァ!」
アスタロトは<
しかし、残念なことにアスタロトの攻撃は掠りさえもしない。
『お肉置いてけ!』
リルは<
肉質を落とさないようにするだけでなく、他の素材も駄目にしないようにするにはこれがベストだと判断したのだろう。
体の芯まで完全に凍ったアスタロトのHPは0になっており、戦いが終わったことを告げる伊邪那美の声が藍大の耳に届く。
『おめでとうございます。逢魔藍大が”邪神代行者”のモンスター3体を倒しました』
『初回特典として須佐之男命の力が70%まで回復しました』
(マジで? 60%回復のアナウンスをスキップしたぞ?)
須佐之男命は今朝時点で58%の回復率だったと記憶しており、藍大は自分の耳に届いた内容が本当ならば一気に12%回復したことになる。
”邪神代行者”3体を倒したと考えればこれぐらいの報酬はあって然るべきなのだろう。
帰ったら須佐之男命が煩そうだと藍大が考えていると、伊邪那美からテレパシーで連絡が来る。
『藍大よ、須佐之男命がお主に早く帰って来てくれと言っておるのじゃ。早く自分も加護を与えたいそうじゃぞ。騒がしくて迷惑しとるから早く帰って来てほしいのじゃ』
(既に煩かったか)
最初は須佐之男命が早く帰って来てくれと言っているだけかと思ったら、伊邪那美達に煩いと思われるぐらい須佐之男命が騒がしいと聞いて藍大は苦笑した。
了解と念じた後、藍大は期待して待っているリル達を労う。
「みんなお疲れ様。無事に倒せたのはみんなのおかげだ」
『今日は豪華なディナーだよね?』
「勿論だ」
『ワッフン♪』
「やったニャ!」
『ご馳走なの!』
食いしん坊ズはご機嫌な様子で踊り始めるので、その間に藍大はドライザーと一緒にアスタロトの解体を済ませた。
毒袋を傷つけずに回収したことにより、アスタロトの肉は食べても無害で美味しい状態である。
魔石以外全てを収納リュックにしまった後、藍大は魔石をドライザーに与えた。
ドライザーから感じる力がますます大きくなったのは間違いない。
『ドライザーのアビリティ:<
『ドライザーがアビリティ:<
(ゲンとドライザー、エルに憑依してもらったらどうなるんだ?)
徒手空拳も武器も完璧にできるパッシブアビリティ<
それを確かめたいと思ったことに加え、須佐之男命を放置するのも不味いので藍大達は帰宅した。
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