第657話 こうしちゃいられないよ。食いしん坊ズ集合~!

 昼食の後、藍大はメロとブラドと一緒に旧C国で手に入れた領地のリゾート化について相談を持ち掛けた。


 メロは<強欲女帝グリードエンプレス>で生産できること、ブラドは<解体デモリッション>でリサイクルして<創造クリエイト>で物作りができることから呼ばれた。


「さて、新しい領地のリゾート計画について話し合おうか。メロとブラドには何かこうしたらどうかってアイディアはないか?」


「あるです。折角3つのダンジョンが端にあるですから、エリアを3つに分けてそれぞれのテーマで楽しめるリゾートにするです」


「ふむ。続けて」


「例えばですが、S6ダンジョン方面はグルメエリア、E9ダンジョン方面は娯楽エリア、N12ダンジョン方面はアウトドアエリアがメインなんてどうです?」


「何それ楽しそう。あっ、待てよ? ”楽園の守り人”のメンバーだけじゃ回せないか?」


 メロの意見に賛成したいけれど、藍大は根本的な問題に気づいてしまった。


 それは圧倒的人手不足である。


 大企業がバックに控える三原色クランであれば、関連企業を巻き込んで自分達色のリゾート地を用意して運用できたに違いない。


 ところが、”楽園の守り人”は少数精鋭でバックに大企業はないクランだから、魔神軍をかき集めても日本のダンジョン管理で手の空いた者を僅かにしか用意できないだろう。


 そこでブラドが口を開く。


「待つのだ。別にリゾート地だからって大衆向けにオープンする必要はないのである。吾輩達の別荘みたいに考えれば良かろう?」


「そっか。それはそうだな。リゾート地って言葉に引っ張られて商業化しなきゃいけないって勘違いしてたわ」


「商業化の必要はあるまい。地下神域の他に出かける先が1つ増えたぐらいに思っとけば気が楽なのだ。ということで、メロの意見を部分的に採用しつつ、必要に応じてリゾート地に管理者を置けば良いのである」


「なるほど。流石は”ダンジョンロード”。管理に慣れてるな」


「であろ?」


 ドヤ顔のブラドを見て藍大がその頭を撫でていると、ブラドが油断している背後から抜き足差し足で近寄る者がいる。


 もしかしなくても舞だ。


「確保~」


「ぬっ!? 謀ったな!? 主君、謀ったな!?」


「いや、何の打ち合わせもなく舞がこっちに来ただけだ」


「そうだよ。私はブラドがドヤ顔してる気がしてこっちに来ただけだもん」


「そんな勘の良さは求めてないのである! 早く解放するのだ!」


 ブラドは舞に抱っこされた状態から抜け出そうとしたが、舞ががっちり抱き締めているので逃げられない。


 そこにユノを抱っこした優月がやって来た。


「ブラド、いつもママとなかよしだね」


「仲良し。ママはいつもブラド先輩を抱っこしてニコニコ」


「ママはブラドと仲良しだよ。ね~?」


「・・・そうであるな」


 藍大とメロはブラドの諦めて頷く姿に哀愁を感じた。


「折角来たんだ。舞達も新しく手に入れたリゾート地のアイディアをくれ。今のところ、一般公開しない別荘みたいな扱いにすることと3つのエリアでテーマを決めたデザインにすることは決まってる。1つぐらいグルメエリアなんて話もある」


「こうしちゃいられないよ。食いしん坊ズ集合~!」


 ほんわかした調子で舞が呼びかけた直後、リル達残りの食いしん坊ズが集結した。


伊邪那美様達神様組まで集まってるんだが」


「何か美味しい相談事の予感がしたのじゃ」


「僕は面白そうなことやってると思ってね」


「私も楽しそうだと思って来てみました」


 伊邪那岐と天照大神は加護を通して藍大達の話し合いを聞いていたらしく、伊邪那美だけは今までの話を知らずとも感じるがままに集合したらしい。


 実体化できる3柱の中で最も食いしん坊なのは伊邪那美に決定である。


 それはさておき、食いしん坊ズが集結したのを確認して舞が話し始める。


「諸君、旧C国にできた領土をリゾート地にして三分割し、その内一つをグルメエリアにしてもらうことが決まった。食べたい料理を言ってね~」


 (キャラがブレてる。最初は長官風だったのに最後はただの舞だ)


 藍大が心の中でそんなツッコミをしている横で、早速リル達がリクエストを述べていく。


『ハンバーグ!』


「ゲーミングうな重が良いニャ!」


『フィア、カレーライスが良いと思う!』


「待つのだ。メンチカツも欠かせぬのだ」


「妾はパフェを所望するのじゃ!」


「おにぎりも捨てがたいでござる!」


 食いしん坊ズは藍大とメロを置いてどんどん盛り上がっていく。


「あっという間に置いてかれたな」


「置いてかれたです」


「それなら私達で他のエリアの話をしよう」


 突然、いなかったはずのサクラの声が後ろから聞こえたので藍大は即座に振り返った。


「・・・サクラ、いつの間に来たんだ?」


「舞がブラドを抱っこした時には主達の近くにいたよ」


「わざわざ驚かせるような登場するなってば」


「主に抱き着いたらそのまま押し倒しちゃいそうだったから、どうにかその衝動を抑えてたら声をかけるのが今になった」


「うん。落ち着いてくれてありがとな」


 流石に昼間からサクラに捕まってしまうと大変なので、サクラが我慢してくれたことに藍大は素直に感謝した。


 藍大がホッとしたところに悔しそうな表情のゴルゴンとゼルがやって来る。


「出遅れたのよっ」


『(; ・`д・´)遅かったか』


「大丈夫。まだ決めることはいっぱいあるから」


「つまり、アタシ達を待ってたのねっ」


『ε=ε=ε=ε=(((((*ノДノ) 好きダァァー!!』


「よしよし。愛い奴等め」


 ゴルゴンとゼルが自分に抱き着くことで藍大は身動きが取れなかったが、2人が落ち着くまで好きにさせた。


 それから改めて藍大とサクラ、仲良しトリオで話し合いを再開する。


 今までの内容について簡単におさらいした後、藍大は4人に意見を聞く。


「食いしん坊ズがグルメエリアについて話してるから良いとして、娯楽エリアとアウトドアエリアについて意見はないか?」


「アウトドアエリアに地下神域のセットを作れば良いと思うわっ」


『(*´・∀・)SAS〇KEeee』


「ネタを2個被せるんじゃない。ツッコみ切れないから」


 ゼルの顔文字がネタにネタを被せるものだったため、藍大はどちらにツッコめば良いのか判断がつかなかったようだ。


 サクラは食いしん坊ズの口からどんどん出て来る料理のメニューを聞いて真剣そうな表情で口を開く。


「主、運動は大事だと思う。グルメエリアでたくさん食べた後、運動せずにいたら太っちゃう。アウトドアエリアで運動してスタイルを維持しないと駄目。ゴルゴンとゼルの意見に賛成」


「そうなのです。舞はいっぱい食べても太らないですが、それ以外はそうじゃないです」


「グラマラスボディになりたいけどお腹のお肉は駄目なのよっ」


『ヾ(。>﹏<。)ノポヨポヨハダメ! ポヨポヨハダメ!』


 サクラと仲良しトリオの心が一つになった。


 (我が家のメンバーならみんな楽しめるし良いよな)


 みんなが楽しめるならば、アウトドアエリアはSAS〇KEのような大規模セットを用意することに藍大も異論はない。


 これで残すところは娯楽エリアだけだ。


「娯楽って言っても何がある? 言ってしまえばグルメもアウトドアも娯楽みたいなものだけど」


「はい。主とゆっくりねっとり休憩する場所が良いと思う」


「中心部に別荘があるんだから要らないだろ」


 サクラが”色欲の女帝”の称号に恥じない意見を出すので藍大がすかさずブロックする。


 真剣な表情にうっかり騙されてしまえば、藍大は旅行中に別荘から出られなくなってしまうだろう。


「はいです! お祭りの屋台が良いです! それなら私達の子供も孤児院の子供達も連れて来て遊べるです!」


「それは良いな。うちの子達は地下神域で遊べるから良いけど、孤児院の子供達の気分転換ができるのはありだと思う」


 メロのアイディアはサクラのそれとは違って健全であり、藍大も受け入れやすかった。


 七つの大罪のメンバーの中で最も落ち着いているメロの意見は聞いていて安心できるというものだ。


「巨大迷路が良いと思うわっ」


『(/ω・\)ゲーセンナンテドウカナ?』


「ふむ。みんなの意見を聞くとアミューズメントパークが良さそうだな」


「それです!」


「それなのよっ」


『(σ`・∀・)σそれな』


「私も賛成」


 ボケたりしなければ藍大達の話し合いはスムーズに進んで行く。


 話し合いの結果、リゾート地の割り振りは以下の通りに決定した。


 グルメエリアは食いしん坊ズプレゼンツの料理の屋台を置き、好きな物を食べられるようにする。


 娯楽エリアはアミューズメントパークで老若男女問わず楽しめるようにする。


 アウトドアエリアは体を動かして健康な体を手に入れるために利用する。


 実際に開発作業を行うのは明日からと決定し、今日の話し合いはここまでとなった。

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