第634話 あの子はいずれ大物になる
しばらくの間、ルドラ達は各々の従魔をストーンゴーレムと戦わせてレベルアップした。
途中からはアイアンゴーレムが現れたので流石にルドラ達主人組も参戦したが、そのおかげでルーデウス達のレベルがぐんぐん成長した。
アイアンゴーレムの討伐数が10体に到達するとアリシアがLv30になり、マリッサは当然ながらアリシアを進化させた。
アリシアはクレセントウルフからハティに進化してマリッサは大喜びである。
『アリシア、モフみが増して最高だわ!』
「オン!」
アリシアはマリッサにモフられても嬉しそうに鳴いている。
「アリシアにはカームに通じる精神的タフさが感じ取れる」
『あの子はいずれ大物になる』
藍大とリルがこのように感想を述べるのはアリシアのステータスを確認したからだ。
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名前:アリシア 種族:ハティ
性別:雌 Lv:30
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HP:400/400
MP:440/440
STR:460
VIT:320
DEX:320
AGI:460
INT:240
LUK:220
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称号:アリシアの従魔
アビリティ:<
<
装備:なし
備考:ご機嫌
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おわかりいただけただろうか。
備考欄にはご機嫌と記されている。
リルが天敵認定したマリッサに撫でられてご機嫌なアリシアを見れば、アリシアが大物になるかもしれないと思ってもおかしくはあるまい。
仮にガルフがこの場所にいたとしたら、マリッサに撫でられてももっと撫でてほしいとアピールするアリシアに戦慄していたことだろう。
『アリシア、君はそのまま天敵4号を引き付けたままでいてね』
「その方がリルも安心できるか」
『うん』
アリシアがマリッサを自分に夢中にさせたならば、リルは身の危険を感じずに済む。
それゆえ、リルは遠くからアリシアにその調子だとエールを送っている。
藍大はそんなリルの考えを理解して苦笑しながらリルの頭を撫でた。
リーアム、シンシアの場合、自分の従魔が主人に撫でられることを嫌がっていないから従魔の頑張り次第ではリルも警戒度を下げることもできる。
しかし、真奈だけは別だ。
真奈はガルフ達モフモフ従魔をモフってもそのモフ欲を満たすことができず、事あるごとに他のテイマー系冒険者のモフモフ従魔をモフらせて欲しいと頼んでいる。
実際のところ、真奈にモフられていないモフモフ従魔は藍大の従魔だけだったりする。
「それはさておき、リルはアリシアのことをどう見る?」
『僕がハティに進化した時よりも能力値が物理攻撃寄りだね。僕は魔法攻撃や斥候みたいなこともできたけど、アリシアは物理攻撃メインだよ。ゴーレムとの連戦の影響じゃないかな』
「なるほど。ストーンゴーレムやアイアンゴーレムと戦い続けたから、硬い敵にもダメージを通せるようにする能力値やアビリティになった訳だ」
『そうだと思うよ』
リルが頷いたのを見て、今まで静かにアリシアの進化を見守っていたサクラが口を開く。
「それってアリシアが脳筋になるかもしれないってこと?」
「サクラ、どうして私のことを見るの~?」
「逆に訊くけど舞は自分が脳筋じゃないとでも思ってるの?」
「・・・藍大助けて~。サクラに何か言い返して~」
(自分で反論が思いつかないんかい!)
舞が自分で思いつかずに藍大を頼ったため、藍大は心の中でツッコミを入れた。
声に出さなかったのは舞を気遣ってのことだ。
藍大は舞をフォローできないか考え、これはと思えるものを閃いた。
「舞はほら、ヒャッハーしても俺の護衛だってことを忘れないだろ?」
「信じてたよ藍大!」
舞は藍大がフォローしてくれたことに感謝して抱き着く。
「舞ばかり贔屓するのは良くない。私も抱き着く」
『僕もいるよ』
「拙者を忘れては困るでござる」
サクラが舞に張り合うのに便乗してリルとモルガナも藍大に甘えた。
自分達だけなら家族サービスの時間に突入しても良かったが、今は合宿中なので藍大は自分に甘える舞達を落ち着かせて待機するルドラ達に声をかける。
「お待たせしてすみませんでした。皆さん、そろそろ”掃除屋”が出て来る頃合いですが大丈夫そうですか?」
『3階の”掃除屋”はどんなモンスターでしょうか?』
藍大に質問したのはルドラだったけれど、残りの4人も同じことが気になっているのは表情から見て取れる。
「シルバーゴーレムLv40です。銀なのに硬いのは言わないお約束のゴーレムですね」
『なるほど。ノッコのアビリティで熱すれば柔らかくなるかもしれませんね』
『任せて下さい。その後にアリシアがデバフを決めてくれればレベル差を埋めてダメージを通せるのではないでしょうか』
『アリシアにお任せです』
『拘束はバロンに任せて下さい』
『カイゼルがぶつかって倒したらタコ殴りにしましょう』
(よくよく考えたら国境を越えたパーティーってすごくね?)
ルドラ達がシルバーゴーレムを倒すために話し合う様子を藍大は感慨深そうに眺めている。
国際会議では参加者が自国や自分のことばかり考えており、話し合いと言いつつ少しでも自分達にとって得になることを中心に考えていただろう。
ところが、藍大の開いたテイマー系冒険者への転職合宿では参加者5人が同じスタートラインに立ち、1つでも多くのことを藍大から学んで帰るべく参加者全員に協調性が見られる。
これは冷静に考えてすごいことである。
一部のメンバーに不安を感じない訳ではないが、それでも5人と5体にとって最大の成果を出せるように話し合いが成立しているのは今の国際関係を考慮すれば奇跡とも呼べる。
そうこうしている間にシルバーゴーレムが通路の奥から現れた。
「皆さん、作戦がまとまったようですのでシルバーゴーレムを完封できるように頑張って下さい」
「「「「「はい!」」」」」
藍大のエールを受けてルドラ達は元気に返事してから行動に移る。
シルバーゴーレムが射程圏内に入ると、ノッコが<
細かく連鎖爆発することでシルバーゴーレムの体温が上昇したのを確認し、今度はアリシアが<
「グルゥゥゥ!」
アリシアが警戒するように唸り声を上げたことにより、シルバーゴーレムのVITが一時的に下がる。
計画通りに進むとバロンの<
『カイゼル、ぶちかましなさい』
「ヒヒィィィン!」
『ルーデウスも続け!』
「ピヨ!」
カイゼルが突撃してシルバーゴーレムの体が大きく後ろに傾くと、ルーデウスが追撃して敵を完全にひっくり返した。
後はシルバーゴーレムに立ち上がらせないように囲んでボコボコにする簡単なお仕事だ。
数分後にはシルバーゴーレムが力尽き、ルーデウス達従魔組は全員”掃除屋殺し”を手に入れた。
「おめでとうございます。作戦通り、シルバーゴーレムを完封できましたね」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「その喜びは私に向けるよりもそれぞれの従魔に向けてあげて下さい」
「「「「「はい!」」」」」
ルドラ達は各々の従魔達と勝利の喜びを分かち合う。
その姿を見てサクラ達がうんうんと頷く。
「主に褒められると次も頑張ろうってやる気が出るよね」
『そうだよね。ご主人に撫でてもらえると頑張って良かったって思うもん』
「ご褒美は大事でござるよ」
従魔は主人のために戦うからこそ、主人と戦って勝った喜びを分かち合いたいのだ。
ルーデウス達は自分の主人に褒めてもらって嬉しそうにしており、その様子を見る限りでは今後も上手くやっていけそうだと藍大も安心して見ていられた。
その後、藍大達はボス部屋まで移動してゴールドゴーレムをルドラ達に倒させた。
その戦闘でも問題なく勝利を収めて3階の探索が終了した。
時間も午後の部の終了時刻になったため、合宿1日目はこれで終了として懇親会に移る。
懇親会では藍大やその従魔が質問攻めされたけれど、舞とサクラが張り付いていたので女性冒険者達の色仕掛けは未然に防がれたとだけ記しておこう。
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