第631話 空を自由に飛びたいな
藍大がルドラ達をダンジョンの1階に連れて来たのはレベル上げのためだ。
転職させたから終わりという訳ではなく、ある程度の戦力になるようにしなければならない。
そうでなければルドラ達が帰国しても目を見張るような活躍をすることが難しいからだ。
幸いなことに、転職の丸薬を飲んでも能力値は引き継がれる。
最初は自分の従魔をパワーレベリングする可能性もあるけれど、アビリティを2つ3つ会得できたら従魔達も一緒に戦えるようになるだろう。
そうは言ってもいきなり高レベルモンスターに囲まれても困るだろうから、まずは1階で肩慣らしという訳だ。
藍大達は後ろで見守るだけで戦闘には一切関与しない。
ルドラ達とそれぞれの従魔のペアがローテーションで戦うことになったが、これも従魔達を比較的早く戦闘に参加させるためだ。
『スケルトン達、恨みはないけどルーデウスの経験値になってもらおう』
ルドラは現れたスケルトン派生種の群れを自分の槍でどんどん倒していく。
身体能力が落ちないのならば、Lv10にも満たない
途中からはルーデウスも体当たりで敵を吹き飛ばしていた。
出て来たモンスター全てを倒し終えるとルドラはルーデウスを褒めた。
『グッジョブ。お前も早く強くなりたいんだね』
ルーデウスは鳴きこそしないものの頷くように揺れた。
その後、ムハンマド達も順番に戦っていくことで無事に従魔達はレベルアップしていった。
”掃除屋”とフロアボスだけは全員が戦闘に参加して経験値を分け合っていたが、それは
経験値が分散されて少なくなったとしても0よりはずっとマシという考え方らしい。
まだ正午まで時間があるので藍大達は2階に進んだ。
2階にはリザードマン派生種が現れる。
レベルも最低20から始まるので、ここからがレベル上げの本番と言えよう。
『カイゼル、風のように走りなさい』
「ヒヒィン!」
順番が回って来たインゲルがカイゼルに騎乗したまま突撃し、敵とのすれ違いざまに剣を振るう。
リザードマン達はカイゼルの突撃を真正面から受け止めては危険だと判断して避けるが、避けた直後にはインゲルによって首を刎ねられて倒れていく。
「舞、インゲルの騎士っぷりはどう?」
「悪くないと思うよ。でも、私とリル君のペアには遠く及ばないけどね」
『ワッフン♪』
舞の言葉にリルはどんなもんだいとドヤ顔を披露した。
藍大がリルの頭を撫でている内にインゲルとカイゼルのペアが現れた敵を殲滅し終えた。
ノーブルホースのカイゼルはまだまだ先かもしれないが、そろそろ進化をしてもおかしくない従魔が2体いる。
”掃除屋”を倒したら進化するかもなんて藍大が考えていたからなのか、ボス部屋に向かう道で藍大達の正面に立ち塞がるようにしてリザードマンバーサーカーLv25が現れた。
『行くぞルーデウス!』
『ノッコ、デバフしっかり!』
『バロン、気合を入れなさい』
『アリシア、こいつを倒したらブラッシングよ』
『風になるのよカイゼル』
ルーデウスとアリシアが攻撃役、ノッコとバロンが支援役、カイゼルは囮役というように分かれてリザードマンバーサーカーとの戦いが始まった。
リザードマンバーサーカーが懸命に棘付きメイスを振り回して戦うけれど、ルドラ達主人も含めて1対10では勝ち目がなかった。
従魔達にとって格上の”掃除屋”だとしても、主人と一緒ならば恐れるはずもない。
リザードマンバーサーカーは10分かからずに討伐された。
”掃除屋”を討伐してルドラ達がそれぞれの従魔を労っている中、ルドラとムハンマドはルーデウスとノッコがLv15に達して進化できることに気づいた。
『ルーデウス、進化しよう』
『ノッコ、進化させるぞ』
ルーデウスとノッコが了承したことにより、ルドラとムハンマドがそれぞれの従魔を進化させ始める。
(エッグランナーの進化先って地味にわからないんだよな)
フィアはエッグランナーから特殊進化したことを思い出し、藍大はエッグランナーが普通に進化した場合にどうなるのか興味を示した。
シャングリラダンジョンに出て来るエッグホッパーはエッグランナーの派生種であり、シャインコッコはエッグランナーから進化することもあるという程度に過ぎない。
エッグランナーは普通の進化先が2つあり、シャインコッコはその内の片方でしかないのだ。
光の中のシルエットはシャインコッコとは異なっており、卵の殻の破片を鎧のように纏うコッコベビーの姿だった。
頭頂部と胸、尻尾に卵の殻の破片がぴったりとくっついており、どうやってくっ付いているのか気になる見た目である。
(コッコナイトってコッコベビーとは違うんだな)
藍大がモンスター図鑑で確認した結果は似ているようで別物だった。
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名前:ルーデウス 種族:コッコナイト
性別:雄 Lv:15
-----------------------------------------
HP:200/200
MP:200/200
STR:150
VIT:200
DEX:100
AGI:200
INT:50
LUK:100
-----------------------------------------
称号:ルドラの従魔
アビリティ:<
装備:なし
備考:空を自由に飛びたいな
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(進化したら空を飛べると思ってたのか。次の進化に期待しような)
ルーデウスの備考欄に進化した感想が記されており、藍大はルーデウスに同情した。
しかし、コッコナイトは飛べはしないものの物理攻撃や物理防御に強く、回避盾としてやっていけそうなモンスターだ。
エッグランナーの時は元々飛べなかった訳だし、飛べていたのに進化して飛べなくなった訳でもないのだから次の進化に期待するしかあるまい。
ルーデウスの進化が終わった一方でノッコの進化も無事に完了していた。
ノッコはドランクマッシュからリカーマッシュに進化した。
見た目は二足歩行する椎茸であり、軸の部分に顔が付いている。
藍大はノッコについてもモンスター図鑑で調べてみた。
-----------------------------------------
名前:ノッコ 種族:リカーマッシュ
性別:雌 Lv:15
-----------------------------------------
HP:200/200
MP:200/200
STR:150
VIT:200
DEX:100
AGI:200
INT:50
LUK:100
-----------------------------------------
称号:ムハンマドの従魔
アビリティ:<
装備:なし
備考:ウチに酔いなはれ
-----------------------------------------
(こいつは何でこんな自信満々なの?)
ノッコのステータスを確認して藍大が真っ先に思ったのがこれである。
人化も不完全で見た目から言えば不気味な椎茸の化け物であるにもかかわらず、自分の容姿とアビリティに自信があるのだろう。
その自信が良いか悪いかは別として、イラっと来る人がいてもおかしくない。
「あの茸からムカつく思念を感じる」
”色欲の女帝”であるサクラはその手の直感が鋭いようだ。
鑑定するアビリティがなくともノッコからイラっと来る思念を感じ取ったらしい。
何はともあれ進化したのはめでたいことなので、藍大は自分が無反応ではいけないと口を開く。
「おめでとうございます。ルーデウスとノッコが進化しましたね。ビアンキさんのバロンとライカロスさんのアリシアはLv30で進化します。ハンセンさんのカイゼルは未知数ですが、全く進化しないことはないでしょうから気長に頑張って下さい」
『『ありがとうございます!』』
『『『はい!』』』
この後、ルドラ達が2階のフロアボスであるリザードマンソードダンサーを倒したところで午前の部は終了した。
午後はテイマー系冒険者としてのレッスンを再開すると告げてから、藍大達はダンジョンを脱出した。
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