第585話 僕が賢さNo.1従魔だよ♪
スクリーンに表示されたのはクイズだった。
モフリー武田はクイズのルールを説明し始める。
「各審査員からそれぞれ5問の問題が出される! それを従魔の皆さんにフリップもしくはタブレットで答えてもらう種目だ! 回答時間は30秒なんでよろしくぅ!」
リルは喋れるけれど、それ以外の従魔は残念ながら喋れない。
それゆえ、クイズはペンを咥えるか握るか操って書く方式なのだ。
「それでは第1問! 出題者は吉田さん!」
「問題です。目を開けると見えないのに目を閉じると見られるものはなんでしょう?」
(なぞなぞ対策ならばっちりだ)
藍大はリルが仲良しトリオにクイズを鍛えてもらったため、この程度の問題に引っかかることはないと思っている。
実際、リルは既にタブレットに藍大が思い浮かべた答えと同じものを打ち込み終えていた。
「時間だ! 一斉に答えを発表してくれ!」
スクリーンには全ての従魔が夢と答えているのが映し出された。
「吉田さん、答えをよろしくぅ!」
「皆さん正解です。答えは夢です。少し簡単過ぎたようですね」
「全員正解! 1点追加だ! 次行こう!」
モフリー武田に促されて次の出題者である理人にバトンが回った。
「問題です。運動方程式の公式を答えて下さい」
「なんとここで物理学の問題だ! 急にアカデミックな質問が出たぁ! これに答えられる従魔はいるか!?」
他の従魔が頭を抱える中、リルだけがすぐに回答を済ませて待機する。
その姿には圧倒的な自信が見受けられた。
回答時間が過ぎてモフリー武田が口を開く。
「時間だ! 一斉に答えを発表してくれ!」
スクリーンにそれぞれの答えが映し出された。
リルとガルフの答えは”ma=F”。
ニンジャの答えは”知らなくても生きていける”。
カームの答えは”知らない”。
マロンは未回答だった。
「ここでリルとガルフが1点リード! だが、ニンジャの答えに頷ける俺もいる!」
モフリー武田のコメントに観客席のモフラー達もそうだそうだと頷いていた。
3問目の出題者は重治だ。
「問題です。雰囲気の読みを答えて下さい」
「物理の次は国語ぉ! 文系の従魔は挽回のチャンスだぜ! 回答よろしくぅ!」
日本人でもうっかり読み間違えてしまうだろう問題を出すあたり、重治の腹黒王子という二つ名は簡単に変えられないのだろう。
回答時間が過ぎて一斉に回答がスクリーンに表示される。
リルとカーム、マロンは”ふんいき”と回答し、ガルフとニンジャは”ふいんき”と回答した。
「正解は”ふんいき”でした」
3問終了時点で得点はリルが3点でトップ、ガルフとカーム、マロンが2点で同率2位、ニンジャが1点でビリだった。
ニンジャは周りに負けていることに苛立って足ダンしている。
それが可愛いと思う観客もいるようだが、ニンジャはその評価が耳に入らないぐらい苛立っていた。
「私のターンですね。今回は○×問題です。今朝9時時点で発見されてる神話上の武器はレプリカを含めて2つである。〇でしょうか。×でしょうか?」
「唐突な時事問題! 吉田さんがなぞなぞだけ出すと思ったら大間違いだぁ!」
(今朝のニュースはリルも一緒に見てたから大丈夫なはずだ)
他の出場者達の中には呻く者もいたが、藍大はリルと一緒に朝のニュースでIN国にてヴァジュラ=レプリカが発見された報道を見た。
それを考慮すれば、舞の持つミョルニルと勇者(笑)で知られるランスロットのアロンダイト=レプリカと併せて3つが正解だ。
リルはちゃんとそれを覚えていたらしく、タブレットで×と答えていた。
制限時間が過ぎて答えが開示されると、リルとニンジャが×、それ以外がガルフとカーム、マロンが〇を選んでいた。
「正解は×です。現在確認されてるのはミョルニルとアロンダイト=レプリカ、ヴァジュラ=レプリカの3つです」
「「「あっ・・・」」」
短く声を漏らしたのは真奈と白雪、結衣の3人だ。
3人共今朝のニュースはばっちりチェックしていたようだが、アロンダイト=レプリカの存在を忘れていたらしい。
第1回国際会議でサクラとリルに恥をかかされたランスロットのことを失念したようだ。
これでリルが4点、それ以外が2点で並んだ。
「リルが2点リード! これが神狼の力なのかぁ!?」
『僕が賢さNo.1従魔だよ♪』
「愛い奴め」
「クゥ~ン♪」
藍大に顎の下を撫でられてリルが嬉しそうに鳴くと、観客席からモフモフコールが聞こえて来る。
「観客席の皆さん、落ち着いてくれ!
モフリー武田が大声でモフラー達のコールを中断させたことにより、次の出題者である理人が喋り出す。
「次の問題に移ります。泳いでる魚を見れるのは水族館ですが、止まってる動物が見れるのは何かんでしょうか?」
「なぞなぞだぁ! 運動方程式の次はなぞなぞだぁ! これはチャンス! サクッと答えちゃってくれ!」
この問題は理人からのサービス問題だった。
リルがここで点差を突き放してしまうと盛り上がりに欠けてしまう恐れがあるため、理人は全員が答えられそうな問題を用意したのだ。
流石は空気を読まない瀬奈をフォローし続ける苦労人である。
理人のサービス問題に対し、全員の答えが”図鑑”で一致した。
「皆さん正解です。答えは”図鑑”でした」
「青空さんの問題は全問正解! 次は黒川さん! 出題よろしくぅ!」
「○×問題です。北海道で発見されてるダンジョンの数は踏破、支配下に置かれた場所を除いて5つ以上ある。〇か×か」
この問題は北海道と東北地方のダンジョン探索を統括する重治ならではの問題だ。
これを出題することにより、冒険者達に北海道のダンジョンに興味を持ってもらうことも狙っているのである。
回答時間が過ぎてスクリーンにそれぞれの結果が表示されると、全員が○と答えていた。
「その通りです。答えは〇です。現在、6ヶ所発見されております。夏は暑いですから、この機会に北海道で涼みつつ探索してみて下さい」
「策士だぁ! 流石は黒川さん! 出題と同時にPRまでやってしまうなんて流石だ!」
そう言いながらモフリー武田はエア眼鏡クイクイをしている。
彼は精神的にタフで怖いものがないのかもしれない。
その後、3周目と4周目を終えて結果は以下の通りとなった。
リルが全問正解の12点。
ガルフが10点。
ニンジャとカームが9点。
マロンが8点。
「さぁ、これで残り3問! 吉田さん、出題よろしくぅ!」
「選択問題です。DMU本部にあるポーションサウナの数は3種類と5種類のどっちでしょう?」
(知らんて。誰得よこの質問)
藍大が心の中でツッコんだ。
「なんということだ! マニアック過ぎてわからない!」
「これはDMUのオフィシャルサイトに掲載されてる情報です。調べようと思えば調べられる問題ですよ」
「ということだ! 皆さん回答よろしくぅ!」
モフリー武田はコメントに困ってリル達に回答を促した。
その結果、全員が5種類を選択した。
「正解です。DMU本部に足を運んだ際は是非ともご利用下さい」
「宣伝じゃねえか! はい、次行くぜぇ!」
志保の回答を聞いてモフリー武田はサラッと流して理人に出題を促した。
「○×問題です。本日午前9時時点の”ブルースカイ”の無所属冒険者応援制度の合計利用者数は300人以上である。〇か×かお答え下さい」
(最後は宣伝縛りなのか?)
志保も理人も自分の所属する組織に関する問題を出すものだから、藍大はそのように思えて仕方なかった。
制限時間が過ぎてスクリーンに回答が映ると、リルだけが×でそれ以外が〇を選んでいた。
「正解は×です。現在の利用者数は299人です。無所属冒険者で当制度を使ってない方は是非ご利用下さい」
「またもや宣伝じゃねえか! 次だ次ぃ!」
この時点でリルが賢さNO.1であることは決まったが、総合点でMOF-1の王者は決まるから重治が最後の問題を出す。
「○×問題です。”ブラックリバー”の戦闘職新メンバー応援制度は職業に応じた属性武器プレゼントである。〇か×かお答え下さい」
「張り合ってるじゃねえか! ちゃっちゃと答えてくれ!」
モフリー武田は匙を投げて回答時間が過ぎるのを待った。
スクリーンに全員が〇と回答したのを見て重治はニッコリ笑う。
「ご認識の通りで正解は〇です。無所属冒険者の方、あるいはクラン丸々加入希望の方はご相談下さい!」
「勧誘は他所でよろしくぅ! さて、結果発表に移るぜ! 1位は15点のリル! 2位は12点のガルフ! 同率3位は11点でニンジャとカーム! 5位は10点でマロン! まだまだ種目は残ってるから頑張ってくれよな!」
第一種目はリルが満点で終わったが、勝負はまだこれからだ。
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