【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第564話 これはミステリー、いや、ホラーかもしれない
第564話 これはミステリー、いや、ホラーかもしれない
ランパードが予想外な引出しを披露して驚いたけれど、睦美は気を取り直して宝箱を開けることにした。
「今回は宝箱を見つけたルシウスに開けてもらおうかな」
『承知』
「・・・心の準備とかする訳ないよね。だってロボットだもの」
自分だったら宝箱を開ける前に高揚する気持ちを一旦落ち着かせるが、ルシウスにはそんな手順は不要でさっさと宝箱の蓋を開けてしまった。
宝箱の中身は光輝くネジだった。
「何かしら?」
睦美は自分の手に持ってからドール図鑑で調べる。
ヴァーチェが<
以前、藍大がサクラに宝箱の中身を持ってもらってモンスター図鑑で調べたやり方と同じだ。
裏技で調べてみた結果、睦美の手が震えた。
「万能ネジってそんなのありなの?」
万能ネジとは無機型モンスター同士の融合を補助するアイテムであり、これを使えば本来は融合できないモンスター同士であっても融合できる。
自分にとってここまで都合の良い物が手に入ってしまったため、睦美は今日で人生の幸運を使い果たしてしまったのではないかと戦慄した。
通常はできない融合の組み合わせとして真っ先に思いついたのはヴァーチェとキュリーだ。
どちらも既に融合モンスターであり、自分が装着あるいは憑依しているという点が共通するこの組み合わせが融合したらどうなるのか気にならないはずがない。
ヴァーチェとキュリーにアビリティを解除させた後、睦美は万能ネジを使って2体を融合する。
「【
ヴァーチェとキュリー、万能ネジが光に包み込まれ、その中でそれらが1つに重なる。
6本腕のスリムな体であることは良いとして、背中には翼が等間隔に生えた車輪が2つ肩甲骨の後ろに見える。
光が収まってみれば、紫をベースとしたボディに青い分岐線の浮かび上がった女型機動天使の姿があった。
融合が完了して睦美の目はキラキラ輝いている。
「くぅ、何度見ても合体は最高だね! 名前はメリエルに決定!」
睦美は名付け終わったメリエルを改めてドール図鑑で調べてみた。
-----------------------------------------
名前:メリエル 種族:ファガン
性別:なし Lv:100
-----------------------------------------
HP:3,000/3,000
MP:3,000/3,000
STR:3,000
VIT:2,500
DEX:2,000
AGI:2,000
INT:2,500
LUK:2,000
-----------------------------------------
称号:睦美の従魔
ダンジョンの天敵
融合モンスター
歩く魔導書
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:高揚
-----------------------------------------
「メリエルの称号欄が大変なことになってる」
『マスター、早く二つ名が欲しいです』
「人目につけばすぐに付くわ」
『早く外に出たいです』
「その前に晴海ダンジョンを踏破しないと」
『当機ははしゃいでいます。サクッと倒してお披露目がしたいです』
「融合しておかしくなった!?」
ヴァーチェもキュリーも自分ははしゃいでるとアピールするような性格をしていなかったので、メリエルのまさかの発言に睦美は驚いた。
『早く行きましょう』
メリエルは睦美を急かすつもりで<
いつでも戦える準備をメリエルが済ませてしまえば、睦美としても先に行くしかないから睦美達は5階へと移動した。
5階はいきなり扉から始まるため、この先がボス部屋であることは間違いない。
「”ダンジョンマスター”か中ボスのどっちがいるのか。開けてみてのお楽しみね」
ルシウスが扉を開けて、そのままルシウス、睦美、ランパードの順番にボス部屋に入る。
その中で待機していたのは赤銅色の鰐っぽいリザードマンだった。
鰐の頭上には王冠があり、手にはトライデントが握られている。
「我の部屋に辿り着いたことを褒めてやろう」
「鰐が随分と偉そうね」
「我を鰐と間違えたことを後悔させてやる」
その瞬間、鰐っぽいリザードマンはトライデントを構えて突撃し始めた。
トライデントの刺突部を横に寝かせるように水平に繰り出し、もしも左右に避ければそのどちらかに振り払えるようにしている。
しかし、ルシウスは左右に避けることなく盾で弾き、隙だらけでがら空きの胴体にルシウスが刺突を放なった。
自分の刺突が刺さったと思いきや、手応えをまるで感じないからルシウスは首を傾げる。
『疑問』
「ルシウス、あそこ」
『・・・困惑』
槍で突き刺したはずの鰐っぽいリザードマンが初期のポジションにいつの間にか戻っていた。
「幻影を扱うのが今回の”フロアボス”ってこと? 本体は何処?」
『不明』
『まだわからない』
睦美の問いにルシウスもランパードも明確な回答を出せずにいる。
そんな問答をしている間に鰐っぽいリザードマンが再び槍を突き出すようにして突撃し始める。
「ランパード、迎撃してみて」
『了解した』
今度はランパードが<
「これはミステリー、いや、ホラーかもしれない」
『否』
『解せない』
不思議なことが起こっているせいで睦美達は困惑している。
三度突撃し始めた敵に対し、今度は睦美自身が<
睦美の腕から放たれた斬撃が命中して敵の幻影が消える。
元の位置に戻ったのかと思って睦美達がそちらを見ても、敵の姿はなかった。
「倒したのかしら?」
『不明』
『不可解』
「幽霊系のアンデッド型モンスターだったのかもしれないわ。魔石が落ちてないか確かめましょう」
そう言って魔石が落ちていないか探してみたけれど、元々鰐っぽいリザードマンがいた場所どころか部屋中探しても魔石は落ちていなかった。
睦美は従魔達に”ダンジョンマスター”の称号が付いていないことを確認すると、不気味なこの部屋から撤退することにした。
敵を倒せたかわからない以上、このままボス部屋にいたままでは危険だと判断したからである。
「これは魔王様案件だね。私達には手が負えないよ」
『賛成』
『同意する』
睦美達は晴海ダンジョンを脱出すると、メリエルの強い要望で目立つようにクランハウスまで飛んで帰った。
午後になり、睦美は逢魔家が昼食を取り終えた頃合いに藍大に電話した。
『神田さん、何かあった?』
「はい。晴海ダンジョンの5階で不思議なボスと出会いまして、ダンジョンの踏破を断念しました」
『マジ? 神田さんが断念するとかどんな奴?』
「王冠を被ってトライデントを持つ鰐っぽいリザードマンです。おそらく”ダンジョンマスター”だと思いますが、あれには攻撃が全く通じませんでした。攻撃が当たったと思えば、その敵が初期位置に戻るんです。断念したのは3回目の攻撃の後、姿が全く見えなくなったからです」
『倒した訳じゃなくて?』
「倒したのかもしれないと思って魔石を探しましたが、残念ながら見当たりませんでした」
睦美からの報告を聞いて藍大は少しだけ考えてから口を開く。
『よし、わかった。後で俺達が行ってみる。晴海ダンジョンの所有権は貰って構わないか?』
「構いません。私が倒せない以上、そこで所有権を欲しがるのはおかしなことですから」
『そう言ってくれると助かる。でも、なんだか悪いな』
”ダンジョンマスター”の討伐だけ掻っ攫うのは藍大にとっていい気分のするものではないが、睦美には藍大にそんな気持ちを抱かせないだけの成果があった。
「そうでもないですよ。宝箱からヴァーチェとキュリーを融合させられるアイテムをゲットしましたから」
『・・・なるほど。掲示板が騒ぎになってた神田さんの新形態って融合モンスターを装備した姿だったのか』
「その通りです。ダンジョンはまた探せば良いですから、晴海ダンジョンは魔王様にお譲りします」
『それならお言葉に甘えさせてもらうよ。今度その融合モンスターを見せてくれ』
「勿論です。それでは」
睦美は電話を切り、晴海ダンジョン探索の反省会を従魔達と行うことにした。
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