【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第563話 偉そうなワンコね。少佐を嗾けるよ?
第563話 偉そうなワンコね。少佐を嗾けるよ?
藍大が箱根ダンジョンを探索していた頃、睦美は従魔達を連れて晴海ダンジョン4階から探索を始めていた。
「マルオ君が中尊寺ダンジョンを今日にも踏破予定って言ってたし、私も負ける訳にはいかないね」
睦美はマルオを妬むことはないけれど、マルオをライバルだと思っている。
”楽園の守り人”の傘下にある”迷宮の狩り人”と”魔王様の助っ人”には上下関係はできておらず、対等な横の関係である。
だからこそ、テイマー系冒険者としては後輩の睦美もマルオに負けるつもりはないのだ。
既にヴァーチェとキュリーにそれぞれ<
それに加えてルシウスともう1体の従魔を召喚している。
その従魔とはサリバンと道場ダンジョン”11階フロアボス”のバトルグリモアを融合したモンスターであり、種族名はサイバードレイクという魔法陣が体に刻まれた機械竜だ。
サイバートリドランだった時は三つ首の機械竜だったけれど、サイバードレイクになった今は首が1つになっている。
それでも三つ首の時よりも強いのは融合して力を付けたからに違いない。
サイバードレイクはランパードと名付けられ、睦美の主な戦力として今日も召喚されている。
それはさておき、晴海ダンジョンは東京国際展示場近くにある空きテナントがダンジョン化したもので、内装は展示場そっくりだったりする。
晴海ダンジョンの探索が難航しているからこそ、睦美はルシウスに支配させようとしているのだが、このダンジョンの探索が進まない理由はその複雑さである。
どのフロアもとにかく選択肢が多くて内部は迷路になっているのだ。
通路にはあちこちに部屋があって冒険者を迷わせてしまうことで有名で、1~3階に出現するモンスターは不意打ちや待ち伏せが得意な種類が多い。
しかも、晴海ダンジョンの”ダンジョンマスター”が1ヶ月毎にボス部屋に辿り着く道を変えてしまうから地図を作り込むのも難しい。
これらを原因として冒険者達から敬遠された訳である。
そんな晴海ダンジョン対策が睦美にはあるから行くしかない。
既に4階まで進んでいるため、どんどん進んで今日中に晴海ダンジョンを制圧したいところだろう。
「早速頼むわね、ランパード」
『任されよ』
ランパードは<
そのスキルを使えばダンジョンの壁を壊して進めるから、睦美達は迷ってもひたすら前進できる。
モンスターは強くなれば強くなる程気配に敏感になるので、強いモンスターの気配がする方向に進んで行けばおのずとボス部屋に辿り着ける。
壁があるならば壊して進めば良いじゃないのとは脳筋な発想だが間違いとも言えまい。
ランパードがT字路で<
冒険者がドアを開けて来ると思っていたモンスター達は壁を壊して現れた敵に驚く。
「ルシウス、ランパード、やっておしまい」
『承知』
『了解した』
睦美の指示を受けてルシウスとランパードはモンスター達を狩り始める。
モンスター部屋にいたのは各種ハイコボルドだった。
ルシウスが槍を振るい、ランパードがアビリティを使って戦えば勝負は物の数分で決まってしまった。
「ハイコボルドなんていくら集まっても
『左様』
『次に行くべき』
「そうね。戦利品の回収を済ませたら先に進みましょう」
散乱した各種ハイコボルドの死体から売れる物だけ剥ぎ取り、睦美達は探索を再開した。
モンスター部屋の反対側の壁に<
それは傭兵と呼ぶべき外見のハイコボルドであり、最初のモンスター部屋にいたどのハイコボルドよりも強そうな風格があった。
睦美の記憶では目の前の敵はハイコボルドハイランダーという種類である。
「なんだこのヘンテコな奴等は?」
「ロボ好き垂涎のスタイルをヘンテコだと・・・? ハイコボルドハイランダーなんてハイが2回被った名前のくせに」
「なんだと!?」
ハイコボルドハイランダーは睦美に種族名を馬鹿にされてキレた。
だがちょっと待ってほしい。
キレているのは睦美も同じだ。
ロボットを馬鹿にする者に対して睦美は一切容赦するつもりがない。
ヴァーチェとキュリーのおかげで大幅に上がったAGIでハイコボルドハイランダーに接近し、6本の腕で敵を殴り始める。
「お前が、死ぬまで、殴るのをやめないッ!」
言葉を区切って1フレーズに2発入れれば、能力値の差があり過ぎてハイコボルドハイランダーは物言わぬ死体になっていた。
4階で倒したモンスター数からして、ハイコボルドハイランダーは”掃除屋”だと考えるのが妥当だけれど、睦美にとっては
「ふぅ。失礼なワンコだったわね」
敵をサンドバッグにして少しは気持ちがすっきりしたのか、睦美の声には達成感が感じられた。
戦利品を回収してみると、装備しているナイフは初心者を卒業した冒険者が使うナイフよりは上等なものだった。
魔石は誰も欲しがらなかったので売却することにして、睦美達は先程から視界に映っていた大きな扉に向かって進む。
それはボス部屋の扉であり、その中には立派な革鎧を着て大剣を背負ったコボルドがいた。
そのコボルドの毛並みはハイコボルドとは異なっており、その上位の存在であることは想像に難くない。
「俺様のいる場所に辿り着いたのは貴様が初めてだ。褒めてやる」
「偉そうなワンコね。少佐を嗾けるよ?」
「しょ、少佐? なんだその不吉な言葉は? 初めて聞いた言葉なのに怖気がするぞ」
少佐とは向付後狼少佐、つまりは真奈のことだ。
晴海ダンジョンから出たことのないはずのフロアボスは、少佐と聞いて本能的に危機を察したらしい。
初めて聞いた者からも恐れられる真奈はやはりリルに天敵認定されるだけあると言えよう。
睦美が知らない目の前のコボルドはエルダーコボルドというコボルドの中ではトップクラスに強い種族なのだが、その強さがあってもモフラーは脅威のようだ。
「知らないなら教えてあげる。少佐はモフモフを愛し過ぎてモフモフと一体化する術まで会得した冒険者なの。モフモフ界最強のフェンリルだって少佐を天敵だと公言してるわ」
エルダーコボルドは睦美の説明を聞いてゴクリと唾を飲み込む。
もしも睦美の言っていることが本当ならば、自分なんてあっという間にモフられてしまうと思ったに違いない。
『嘲笑』
その言葉が聞こえた時には、エルダーコボルドの胴体をルシウスが槍で貫いていた。
敵を前にしてのんびりお喋りをするなんて隙だらけで笑えると言いつつ、容赦なく致命傷を狙うあたりルシウスもちゃっかりしている。
「クソが!」
『無駄』
ルシウスに反撃しようと大剣を振るうけれど、エルダーコボルドが攻撃した時にはルシウスが盾でそれを弾く。
「これで終わりよ」
睦美が接近して6本の腕で乱打を繰り出せば、エルダーコボルドのHPは一気に0まで削られる。
エルダーコボルドの敗因は超弩級のモフラーの存在を知って動揺したことだった。
それさえなければもう少しまともに足掻いてから倒されただろうが、真奈という存在に動揺してできた隙は戦闘において大き過ぎた。
睦美はエルダーコボルドから魔石を取り出し、それを順番待ちしていたルシウスに与える。
自身の<
『感謝』
「これからも頼むわよ」
『承知』
そう返したルシウスがいつもよりもソワソワしているので、睦美はその理由にすぐ思い当たって微笑む。
「試し撃ちしてみる?」
『是非』
ルシウスは自分達に危害が及ばないように注意し、壁際に向かって<
「火力上がったわね」
『羨ましい』
睦美とランパードがそんなことを話していると、<
「ダンジョンの壁ってこんなに脆かったっけ?」
『<
気になって壊れた壁を調べてみたところ、壁の奥に宝箱が隠されていた。
「ルシウス、お手柄よ! 宝箱だわ!」
『偶然』
偶然と言いつつルシウスの声は弾んでいたため、睦美に褒められて嬉しかったのだろう。
「さて、いつ開ける?」
『今でしょ』
「ランパードってばそのネタ知ってたのね」
睦美はランパードが昔流行ったフレーズを知っていたことに驚いた。
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