【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第552話 拙者は屈しないでござる! とても美味しかったでござるが拙者は屈しないでござる!
第552話 拙者は屈しないでござる! とても美味しかったでござるが拙者は屈しないでござる!
藍大は早速テイムしたモルガナを召喚する。
「【
召喚されたモルガナは貝殻に引き籠らずに出現した。
「拙者、参上でござる!」
「モルガナ、提案して早々に悪いがいくつか訊きたいことがある」
「ばっちこいでござる。拙者、なんでも答えるでござる」
倒されずにテイムされたため、モルガナは死の恐怖から解放されて今ならなんだってしても良いと思うぐらいご機嫌だ。
「よし。じゃあ、最初の質問だ。モルガナは八王子ダンジョンの”ダンジョンマスター”になった時の記憶はあるか?」
「鮮明に覚えてる訳ではござらんが、何か声が聞こえた気がするでござる。よく聞き取れなかったでござるが、その声が聞こえなくなったら拙者は”ダンジョンマスター”としてこのダンジョンにいたでござる」
「・・・そうなのだ。思い出したのである。吾輩も何か声を聞いた気がするのだ。残念ながら、なんと言われたのかは全くわからなかったし今まで思い出せなかったのだが」
モルガナの証言を聞いて記憶が刺激されたのか、ブラドもぼんやりと思い出したらしい。
「ブラドに以前質問した時、気づいたら”ダンジョンマスター”だったって言ってたよな。相変わらず以前の記憶はないままか?」
「うむ。恐らくであるが、吾輩達はダンジョンと共に誕生したのだ。そうでもなければ何一つ思い出せないなんて変である」
「そうかもな。ということは、ダンジョンを生み出したその声の主が存在する訳だ。これは伊邪那美様達のような神の仕業ってことか?」
「その可能性は否定できないのだ」
藍大の仮説を聞いてブラドは首を縦に振った。
そのタイミングで伊邪那美の声が耳に届く。
『藍大よ、ダンジョンを生み出したのは妾達と同じ神であろう。じゃが、そんなことができる神は滅多にいないはずじゃぞ。妾の全力とて影響範囲は日本全土がやっとじゃから、妾よりも上位の神が地球を今の姿に変えたと考えるべきじゃな』
(伊邪那美様よりも上位の神か。敵じゃないと良いんだが)
藍大の心配はそれに尽きる。
伊邪那美の力だって十分過ぎる程すごいのだから、伊邪那美よりも上位の神が力を振るえばとんでもないことが起こるだろう。
それが自分達にとってプラスに作用すれば良いものの、マイナスに作用することは避けたいと思うのが藍大の正直なところである。
「何もわからない状態から少しでも進んだだけ良しとしよう。伊邪那岐様が完全復活したら、また事態が何か変わるかもしれないし」
「そうであるな」
「あのー、ちょっと良いでござるか?」
「どうしたモルガナ?」
「殿はさっき神と口にしたでござる。その様付けした2柱とはお知り合いでござるか?」
『それだけじゃないよ。ご主人は伊邪那美様と伊邪那岐様の神子なんだよ』
リルはすごいだろうとドヤる。
藍大はリルにとって自慢の主人だから、ここぞとばかりに自分のことのようにアピールしている。
ドヤ顔なリルが藍大に撫でられるのはさておき、モルガナは藍大に平伏した。
「ははーっ」
「面を上げよ」
モルガナはスッと頭を上げた。
時代劇では高貴な相手を前に一度目で頭を上げてはならないなんて流れもあったかもしれないが、モンスターがそんなの知る由もないのでモルガナは素直に頭を上げたのだ。
「モルガナ、其方には八王子ダンジョンを管理し己を高めることを命ずる」
「謹んでお受けするでござる」
「主、何やってんの?」
「時代劇の真似事。モルガナの反応に釣られてやってみた」
「ゴルゴンちゃん達が喜ぶと思って録画しといたよ~」
「サンキュー」
サクラは藍大の口調が急に変わって首を傾げる一方、舞は後で仲良しトリオに今のやり取りを見せるために録画していた。
この動画を見ている隙に仲良しトリオを後ろからハグできたら良いなと企んでいるけれど、それぐらい可愛いものと言えよう。
「お遊びはこの辺にするとして、モルガナには<
「恐れながら拙者は外に出たくないでござる」
「外に出ろ。俺の従魔がニー活なんて許さん」
「働きたくないでござる! 外に出たくないでござる!」
藍大の発言に置いてゲンは良いのかとツッコむ者はいない。
ゲンは<
シャングリラの外ではいつも藍大を護衛しているゲンだから、実体が張り付いているだけでもサボっているとツッコまれることはない。
「主君、吾輩に良い考えがある」
『僕もあるよ』
「私も~」
「私もある」
ブラドを筆頭に外へ出たがらないモルガナがどうすればダンジョンの外に出たいと思うようになるか閃いたらしい。
無論、藍大も1つだけ策を思いついていた。
「OK。順番に聞こうか」
藍大は多分みんなの考えが一致するだろうと思っていたが、順番に読んで耳元で回答してもらった。
「うん、やっぱり全員一緒だ。餌付けしよう」
「「「『やっぱり』」」」
やはり考えることはみんな同じだった。
ブラドがテイムされた時もハンバーグで餌付けされたのだから、今回もそれで行けると思ったのだ。
藍大は良い感じに余った作り置きがないか収納リュックの中を漁り、丁度良い物を見つけて取り出す。
「ミラリカントの唐揚げが少しだけ余ってたからこれにする」
「美味しそ~」
『じゅるり』
「良い匂いがするのだ」
モルガナが釣られるよりも先に食いしん坊ズが釣られるのはお約束だ。
それはそれとして、モルガナも藍大が持つ皿の上に乗った唐揚げに目が釘付けになっている。
ダンジョンにおいて”ダンジョンマスター”は食事を必要としない。
だが、良い匂いがする食べ物を見て気にならないはずもない。
「なんでござる? 拙者、こんなに美味しそうな匂いを初めて嗅いだでござる」
「これは俺達が家で食べてる料理だ。気になるようだな」
「拙者の目の前に出しておいてその言い方はあんまりでござる」
「食べたいか?」
「いただけるならば食べてみたいでござるよ」
「よろしい。ほら、おあがり」
モルガナは素直に食べたいと口にしたので、藍大はモルガナに唐揚げを食べさせる。
唐揚げが小さいからモルガナは目を閉じて食べることに集中した。
じっくりと咀嚼してから飲み込み、モルガナは目をぱっちりと開く。
「美味いでござる! 拙者もっと食べたいでござる! これっぽっちじゃ満足できないでござるよ!
(釣れたな。こうなってしまえばこっちのもんだ)
モルガナのリアクションを見て藍大はニヤリと笑った。
「モルガナ、このダンジョンの外には今味見した唐揚げよりも美味い物がいっぱいあるぞ」
「拙者は屈しないでござる! とても美味しかったでござるが拙者は屈しないでござる!」
そう言っているモルガナの目は滅茶苦茶泳いでいる。
ミラリカントの唐揚げよりも美味しい料理があると聞いて興味津々のようだ。
そこに舞達が援護射撃する。
「藍大のチーズinハンバーグは美味しいよ~?」
『メンチカツも好き!』
「吾輩、ステーキ丼も好きである」
「アップルパイや桃のタルトも美味しかった」
『トロリサーモン』
ゲンの声は藍大以外に聞こえていないが、ゲンもちゃっかりリクエストするぐらいには藍大の料理が大好きだ。
モルガナは自分の知らない料理の名前を次々に出されて好奇心が引き籠りたい気持ちに勝ったらしく、<
モルガナの分体はブラドの分体のようにデフォルメキャラのようであり、分体が現れた直後に舞がハグした。
「この子お持ち帰りする!」
「そのつもりだから安心してくれ」
「やった~!」
「殿、この者の力が半端ないでござる! 本当に人間でござるか!? 苦しいでござる!」
舞にハグされて身をもってその力の強さを知り、モルガナは舞が見た目通りの人間ではないのではないかと疑った。
「舞は人間だ。俺の妻だぞ。サクラもな。他にも家に3人妻がいる」
「殿はハーレムでござったか。く、苦しい。本当にそろそろヤバいでござる」
「舞、モルガナをこっちに渡してくれ」
「は~い」
モルガナは舞から藍大に引き渡されてホッとした。
「さて、モルガナもこうして俺の腕に収まった訳だし帰るか」
「芹江さんがびっくりするね」
「胃薬がぶ飲みするかも」
『どうせ一杯飲むならジュースが良いな』
「吾輩、カレーを飲みたいである」
「『それだ!』」
ブラドのカレーは飲み物発言でカレーの口になったため、今日の昼食はカレーに決まった。
藍大達はモルガナを連れて八王子ダンジョンを脱出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます