第538話 私、優月、大好き!

 昼食後、優月がユノと一緒に藍大の前にやって来た。


「パパ、ユノがつよくなりたいっていってるの。ダンジョンいきたい」


「キュイ」


 優月の隣でユノが強くなりたいという気持ちを込めて藍大に頭を下げる。


 そこにブラドの援護射撃が加わる。


「主君、ユノはルナに先を越されてショックなのだ。Lv50になるまで付き合ってほしいと言っておるぞ」


「キュイキュイ」


 そうなんですとユノは頷く。


 ユノは今日までにシャングリラダンジョンにちょくちょく挑んでLv40までレベルアップしている。


 あと10回レベルアップすればルナに追いつけるから、今からダンジョンに行けば余裕で追いつけるだろう。


「よし、行こうか」


「やった~!」


「キュイ~!」


 優月とユノが抱き合うのを見て藍大はほっこりした。


 その後、藍大と舞、優月、ユノ、ゲン、ブラドのメンバーでシャングリラダンジョン地下2階にやって来た。


 この階層の内装は鉱山であり、壁からバトロックアームが生えていることに優月とユノが気づいた。


「パパ、かべからいっぱいうでがはえてる!」


「キュイ!」


「あれはバトロックアームっていうモンスターなんだ」


「モンスターだって。ユノ、いける?」


「キュイ!」


 張り切るユノは<双光円刃ダブルサークルエッジ>でバトロックアームを細切れにした。


「ユノ、すごい!」


「キュイ♪」


「ふむ。バトロックアームが相手でも問題ないのだ。その調子でガンガン狩るのだ」


「キュイ!」


 ブラドの言葉にユノが敬礼するのを見て舞が藍大に話しかける。


「ユノちゃん可愛いよね~。今の写真撮れた?」


「勿論だ」


「後で私に送ってね」


「わかった」


 藍大も舞もすっかり運動会を見に来た親のようである。


 バトロックアームは壁から動けないので、見つけ次第ユノが一方的に倒していく。


 ハニワンは自由に動けるけれど、AGIで負けているからユノを捉えて攻撃できずにやられてしまう。


 ユノがバトロックアームとハニワンをサクサク倒していくと、一本道の奥から足音が藍大達の方に向かって近づいて来た。


 その音の正体は”掃除屋”のチタンリザードマンである。


「グルァァァァァ!」


 チタンリザードマンが吠えた直後に体を覆う鱗が光沢を放つ。


「敵はチタンリザードマンLv35。優月、あいつにユノが近づいて攻撃するとやり返されちゃうから気を付けるんだぞ」


「わかった! ユノ、とおくからやっちゃえ!」


「キュイ!」


 ユノは<双光円刃ダブルサークルエッジ>を巧みに操り、チタンリザードマンが反撃する余裕を与えないように続けて攻撃する。


 2つの切れ味抜群な円形の光の刃によってチタンリザードマンの尻尾が根元から切り飛ばされた。


「グルァ!?」


 VITには自信があったチタンリザードマンだったけれど、尻尾を斬り飛ばされた痛みで目から涙が零れ落ちる。


 それでも、チタンリザードマンは戦意を喪失した訳ではなかった。


 痛みを我慢して<硬化突撃ハードブリッツ>を繰り出す。


 しかし、翼を持つユノはチタンリザードマンと違って空を飛べるから、空に逃げてその突撃をあっさりと躱した。


 突撃を躱して背後を取ったため、ユノはもう一度<双光円刃ダブルサークルエッジ>を発動して敵の首を刎ねた。


「キュッキュイ~!」


 ユノは周囲に敵影がないことを確認し、優月に勝ったよと嬉しそうに抱き着く。


「ユノはつよいね!」


「キュイ!」


 優月に褒められてユノは幸せそうだ。


 ブラドは優月がユノを褒めている間、代わりに<解体デモリッション>でチタンリザードマンを無駄なく解体して魔石だけ取り分けていた。


 相変わらず優月とユノに甘いブラドである。


「優月よ、チタンリザードマンの魔石をユノにあげるのだ」


「わかった! ユノ、これあげる!」


「キュイ♪」


 優月から魔石を与えられたユノの鱗が白く輝く。


 藍大がモンスター図鑑で確認したところ、<魔力半球マジックドーム>が<魔力宮殿マジックパレス>に上書きされていた。


 ユノのパワーアップが済んで探索を再開し、途中で何度かバトロックアームとハニワンと戦って藍大達はボス部屋に到着した。


「どうする? 少し休憩するか?」


「ユノはきゅうけいしたい?」


「キュイキュイ」


「このままいく!」


「わかった。フロアボスが相手だから油断しちゃ駄目だぞ」


「は~い!」


「キュ~イ!」


 優月とユノが元気に返事したので藍大達はボス部屋の中に足を踏み入れた。


 部屋の中で待機しているのはガチャゴーレムであり、それは藍大達を見た瞬間に自身の戦力を増やさねばならないと悟った。


 本能的に<博打ギャンブル>では自分に不利な結果になると思ったのか、ガチャゴーレムは<稀籤レアガチャ>を連発して戦力を増やした。


 ガチャコンと音がして次々にカプセルが排出口から転がり出し、3つのカプセルがガチャゴーレムの前に揃う。


 3つのカプセルは光となって消え、それらの中からダマエッグとグサダーツ、ライスラインが1体ずつ現れた。


 地下3階の雑魚モブモンスターが2体と地下4階の雑魚モブモンスターが1体という結果は一般的に考えれば悪くない。


 だがちょっと待ってほしい。


 水のない鉱山にグサダーツが呼ばれて何ができるというのだろうか。


 水がないせいでグサダーツは瞬く間に衰弱して力尽きてしまった。


 ユノが戦う前からガチャゴーレムの戦力は減ってしまったのは、現時点でユノがガチャゴーレムにLUKで勝っているからである。


 ダマエッグは転がりながら突撃を開始し、ライスラインも敵にぶつかってこそ真価を発揮できるから突撃し始める。


 どちらにも翼が生えていないので、チタンリザードマンとの戦いと同様にユノは空を飛んで回避する。


 そして、ライスラインを<双光円刃ダブルサークルエッジ>で達磨状態にして倒した。


「ユノ、たまごはかたそうだよ! ブレスうっちゃえ!」


「キュイ!」


 優月の指示に頷いてユノは<光吐息ライトブレス>を圧縮させてダマエッグの中心を狙撃する。


 撃ち抜かれたダマエッグにHPを残っておらず、コロンと音を立てて倒れたまま動かなくなった。


 そうなれば残っているのはガチャゴーレムだけだ。


 時間経過で回復するMPはもう一度<稀籤レアガチャ>を発動するには足りない。


 藍大は静かに観戦していたが、ユノがこのままガチャゴーレムを倒すとLv49止まりになると気づき、Lv50になれた方が良いと思って口を出すことにした。


「優月、ちょっとだけ待たないか? もう一度カプセルで呼び出した敵を倒してからガチャゴーレムを倒せば、ユノはきっとLv50になれる。進化できるかもしれないぞ」


「わかった! ユノ、ちょっと待ってて」


「キュイ」


 Lv50になれるならばユノに反論するつもりはない。


 ガチャゴーレムは幼児とその従魔に舐めプされる屈辱に堪えて再び<稀籤レアガチャ>を発動する。


 ところが、カプセルから出て来たのは本日二度目のグサダーツだった。


 グサダーツがピチピチと数回跳ねて力尽きてしまい、ガチャゴーレムは絶望した。


 ユノは<光吐息ライトブレス>で絶望するガチャゴーレムを倒してLv50に到達した。


「ユノ、しんかしよう!」


「キュイ!」


 優月がユノを進化させることでユノが光に包まれ、その中でユノのシルエットが大型トラック並みに成長する。


 <収縮シュリンク>でデフォルメ姿が解除され、光が収まると緑の目をした銀竜になっていた。


「私、優月、大好き!」


「ユノすごい! ぼくもだいすき!」


 ユノはシルバードラゴンに進化して喋れるようになった。


 ガチャゴーレムの魔石を与えられてパワーアップした状態で藍大はユノのステータスを調べた。



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名前:ユノ 種族:シルバードラゴン

性別:雌 Lv:50

-----------------------------------------

HP:1,000/1,000

MP:1,200/1,200

STR:1,200

VIT:1,200

DEX:1,000

AGI:1,000

INT:1,200

LUK:1,000

-----------------------------------------

称号:優月の騎竜

   希少種

   ダンジョンの天敵

アビリティ:<双光円刃ダブルサークルエッジ><超級回復エクストラヒール

      <魔力宮殿マジックパレス><収縮シュリンク><極光吐息オーロラブレス

装備:なし

備考:幸福

-----------------------------------------



 (Lv50で能力値平均1,100ってすごくね? あっ、小さくなった)


 ユノは藍大がステータスを調べている間に<収縮シュリンク>でぬいぐるみサイズになって優月に抱き着いた。


 立派な姿も良いけれど、ユノに抱き締めてもらえる小さな姿も気に入っているらしい。


 帰宅してユノが喋れるようになったと発表すると、ユノが家族みんなから話しかけられて疲れてしまうのは仕方のないことだった。

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