【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第536話 私理論さんも”ブラックリバー”にいたんですか!?
第536話 私理論さんも”ブラックリバー”にいたんですか!?
モフランドで真奈と白雪の従魔を治療した翌日、藍大は膝の上に小さくなったリルを載せてノートパソコンの前に座っていた。
その隣には舞もいる。
今日は”楽園の守り人”と三原色クラン、白黒クランのWeb会議が開かれるのだ。
「では、定刻となりましたので会議を始めます。皆さん、本日はお忙しい中ご参加いただきありがとうございます」
時計の針が午前10時を指すと藍大が口を開き、それに応じるように参加者のカメラとマイクがオンに切れ変わる。
”レッドスター”の画面には赤星誠也と赤星真奈。
”ブルースカイ”の画面には青空瀬奈と青空理人。
”グリーンバレー”の画面には緑谷大輝と緑谷麗華。
”ホワイトスノウ”の画面には有馬白雪とマネージャー風の男性。
”ブラックリバー”の画面には黒川重治と目を隠す程の長髪の女性。
どのクランからもクランマスターとサブマスターの2名が藍大のパソコンの画面に映った。
『逢魔さん、ウチのサブマスターがWeb会議に初参加なので挨拶させて下さい』
『ブラックリバーも同じくです』
「わかりました。”ホワイトスノウ”と”ブラックリバー”の順番でお願いします」
白雪と重治に言われて藍大が許可すると、マネージャー風の男性がぺこりとお辞儀する。
『初めまして。”ホワイトスノウ”のサブマスターを務める
『初めまして。”ブラックリバー”のサブマスターの
『私理論さんも”ブラックリバー”にいたんですか!?』
雲母の自己紹介を聞いて白雪が真っ先に反応したが、藍大もかなり驚いている。
『は、はい。重治と全然釣り合ってませんがサブマスターなんです』
「そ、そんな自分を卑下しないで下さい。私は私理論さんの投稿も好きですよ」
『ありがとうございます』
『オホン。雑談はそこまでにしませんか?』
『青空さん、すみませんでした。逢魔さん、お時間をいただきありがとうございました』
瀬奈の前でこれ以上脱線できないと判断して白雪は謝った。
会議の空気を悪くする訳にもいかないので、藍大は早速本題に入る。
「いえいえ。では、本題に入ります。今日は魔熱病がメインの会議です。最初に各クランが管轄するエリアの感染状況について教えて下さい」
『関東エリアは全体の6割が魔熱病でダウンしてます』
『中国は3割ですが、関西は5割がダウンしてます』
『沖縄と九州、四国はいずれも3割程度の被害です』
『中部は6割がダウンです』
『東北は8割で北海道はほぼアウトです。雪でやることがなかったせいで家で動画を見て感染してます』
各クランマスターからの報告によれば、魔熱病の罹患率は東高西低だった。
重治の言う通り天候の影響で外出できなかった者達が暇を持て余し、止せば良いのにブエルの動画を視聴して魔熱病に罹患したようだ。
「北日本の状況が不味いですね。間引きの人手が足りないようであれば、”魔王様の助っ人”と”迷宮の狩り人”を派遣しましょう」
『すみませんがよろしくお願いします』
重治は自分の統括するエリアが壊滅的状況のため、藍大の申し出を素直に受け入れた。
いざとなったら”ブラックリバー”が責任を取って総出で動かねばと考えていたが、総出で動いても人手が足りないから援軍はウェルカムなのだ。
「全国の被害状況はわかりました。次は魔熱病の特効薬ですが、”楽園の守り人”以外で完成したところはありますか?」
藍大の質問にどのクランも眉間に皺を寄せるか苦笑する。
『今回もゴッドハンドには勝てませんでした。華も頑張ってくれているのですが』
『僕も一度ぐらいゴッドハンドに勝ちたかったんだけどね』
『私も難航しております』
答えたのは誠也と大輝、仁志だ。
結果を聞いて藍大は焦らさずに話を進める。
「わかりました。それならば、本人から許可は取ってますのでゴッドハンドのレシピを開示します」
藍大のその言葉で画面上に映る参加者の顔がホッとしたものに変わった。
いつも”楽園の守り人”に先を行かれるのは悔しいが、そうも言っていられない状況なのだから当然だ。
特効薬の素材さえわかれば、テイマー系冒険者の統治するダンジョンでそのモンスターを召喚して素材を集められる。
これで日本の魔熱病患者の容体は快方へ向かうことだろう。
『重治も転職してダンジョンを支配下に入れられた? 先週転職したんだよね?』
『はい。緑谷先輩のおかげで俺が
理人が釣教士に転職して以降、大手クランの中で”ブラックリバー”だけがテイマー系冒険者のいない状況に陥った。
重治はクラン総出で宝箱の探索をさせたが、宝箱の数も限られていてテイマー系の
困った重治は大学時代の先輩である大輝に頭を下げ、もしも宝箱が手に入ったら”ブラックリバー”に売ってほしいと頼んだ。
コスモフこと小森結衣が調教士になって余裕があったため、大輝は重治の頼みを聞いてあげた。
テイマー系冒険者が1つのクランに複数いた方がクランは大きくなるけれど、このまま”ブラックリバー”だけがテイマー系冒険者を持たない状況が続くと余計な騒動が起きるかもしれない。
そう考えて大輝は重治に宝箱を売った。
重治は大輝に売ってもらった3つ目の宝箱で転職の丸薬(蔦教士)を手に入れ、植物型モンスター限定テイマーの蔦教士に転職した。
もしもあと少し重治の転職が遅ければ、”ブラックリバー”内部の空気が悪くなって脱退する者も現れたかもしれない。
そういう意味で重治は大輝に頭が上がらなくなった。
『そりゃ良かった。重治、君の従魔を見せてよ。まだ見せてもらってなかったし』
『みなさん、ここで召喚しても構いませんか?』
重治は全員に向けて質問したけれど、実際のところ気にしているのは瀬奈だけである。
かと言って瀬奈だけに訊くと角が立つため、参加者全員に自分の従魔を召喚して良いか訊ねたのだ。
瀬奈も”ブラックリバー”の新たな戦力が気になっていたため、これは脱線したとはみなさないらしい。
許可が下りれば重治は出し惜しみしない。
『それでは失礼します。【
重治が召喚したのは人型のサボテンだ。
そのサボテンは棘付きグローブを装備しており、頭には白い花を咲かせている。
藍大は初めて見るモンスターだったからモンスター図鑑で調べてみた。
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名前:サボ 種族:カクタスチャンプ
性別:雄 Lv:65
-----------------------------------------
HP:1,200/1,200
MP:1,200/1,200
STR:1,500
VIT:1,300
DEX:1,000
AGI:1,500
INT:1,000
LUK:1,000
-----------------------------------------
称号:重治の従魔
希少種
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:緊張
-----------------------------------------
(名前がサボでもアビリティは勤勉だな)
サボりのサボではなくサボテンのサボだとわかっていても、音で考えてしまったせいで藍大はそんな感想を抱いた。
カメラ越しとはいえ視線が自分に集まっているとわかって緊張しているらしく、サボは気持ちを落ち着かせるためにシャドーボクシングを始める。
「大勢にみられると緊張するよね~」
『軽快な動きだね』
舞は記者会見の時に見られた感覚からサボに共感しており、リルはサボのステップに注目していた。
サボのお披露目が終わると、藍大達は魔熱病の特効薬を各統括エリア毎に作成して提供することに決めて本日の会議は終わった。
「会議っていつやっても疲れるね」
「堅苦しいと特にそうだな」
『ご主人、今日はいつもより撫でてくれる回数少なかったからもうちょっと撫でて』
「よしよし。愛い奴め」
「私もブラドをハグしに行こ~」
その後、全力で逃げるブラドの姿が藍大達に目撃された。
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