第532話 和食が進化するの!? ビッグニュースだね!

 翌日、藍大達は新設された道場ダンジョン11階にやって来た。


 藍大に同行するのはリルとリュカ、ルナ、ゲンである。


 シャングリラダンジョンではなく、道場ダンジョンに来たのはこのダンジョンに魔熱病に効く薬の素材となるモンスターをブラドに配置してもらったからだ。


 昨日、藍大が魔熱病の薬について奈美に相談したところ、DEXとINTだけが1,500以上のモンスターの魔石をはじめとしたいくつかの素材をリクエストされた。


 そのモンスターをダンジョンに配置してほしいとブラドに頼んだところ、食べるのには向かないモンスターだったことや遠からず藍大以外も素材集めをする必要があると察して道場ダンジョンに配置することが決まったのだ。


『ルナ、戦闘は僕とリュカがやるからしっかり見て勉強するんだよ?』


「ワフ!」


 ルナはリルに言われて元気に頷いた。


 家族でお出かけに行けるのが嬉しいのか尻尾をブンブン振っている。


「リルとルナに良いところを見せるチャンス。頑張らないと」


「よしよし。リュカも変に気負わずいつも通りで良いぞ」


「うん!」


 リュカもルナには負けるが気合十分のようだから藍大は肩の力を抜くように言った。


『ご主人、早速来たようだよ』


「そうらしいな」


 リルが知らせてくれた直後に藍大の視界には宙に浮かぶ本の群れが近づいて来た。


 それらの本は赤青緑黄の4種類に分かれていた。


「レッドグリモアとブルーグリモア、グリーングリモア、イエローグリモア。いずれもLv85。それぞれ火水風土の属性攻撃が得意だ」


 藍大が敵について簡潔に伝えるとリュカが動き出す。


「先手必勝!」


 獣人形態のリュカは敵集団に接近して<深淵拳アビスフィスト>で攻撃する。


『僕も負けてられないね』


 リュカに負けじとリルが<蒼雷審判ジャッジメント>を発動する。


「クゥン」


「リュカもリルも強くて誇らしいか?」


「ワフ!」


「よしよし」


 ルナが両親の強さを目の当たりにしてドヤ顔なのが可愛くて藍大はその頭を撫でた。


『ルナがLv15になりました』


『ルナがLv16になりました』


『ルナがLv17になりました』


      ・

      ・

      ・


『ルナがLv30になりました』


『ルナが進化条件を満たしました』 


 (経験値が全部ルナに流れたらこうなるよな)


 ルナが急激にレベルアップするのはルナ以外がLv100なのだから当然だ。


「ワフン!」


『ご主人、ルナが進化したいって言ってるよ』


「わかった。リルもリュカもお疲れ様。ルナ、進化させるぞ」


「ワフ!」


 藍大はルナの意思を確認してから進化させた。


 それによってルナの体が光に包まれ、光の中でルナのシルエットに変化が生じ始める。


 元々は小型犬サイズだったが、光の中でそのサイズが中型犬まで大きくなった。


 光が収まった時にはルナの額の三日月マークはそのまま残り、体表は青白く変化した。


『ルナがクレセントウルフからハティに進化しました』


『ルナがアビリティ:<隠者ハーミット>を会得しました』


『ルナがアビリティ:<収縮シュリンク>を会得しました』


『ルナのデータが更新されました』


『おめでとうございます。従魔同士の子供が初めて進化しました』


『初回特典として伊邪那岐の力が30%まで回復しました』


『報酬として逢魔藍大の収納リュックに神豆しんずの種が贈られました』


「ワフン♪」


 進化したルナがご機嫌に尻尾を振っているのを見てリルは驚いていた。


『ルナが<隠者ハーミット>と<収縮シュリンク>を会得してる! やっぱりルナは優秀なんだよ!』


 どちらのスキルもリルにとってなくてはならないスキルだったため、それらをルナが会得できたことをリルは喜んだ。


 <隠者ハーミット>は今の<知略神祝ブレスオブロキ>になっており、リルは藍大が調べられないモンスター以外の情報を調べて藍大に伝える役割を担っている。


 また、<収縮シュリンク>を会得するまで大きくなったら亜空間にいなければならなかったから、娘が大きさ自在になってホッとしているのだ。


「流石はルナね!」


「クゥン♪」


 ルナはリルとリュカに近寄って甘えた。


 褒めてもらえたおかげで尻尾がはち切れそうである。


 リルとリュカに十分甘えた後、ルナは藍大に甘えた。


「よしよし。優秀なスキルを会得できるなんてすごいじゃないか」


「ワフ~♪」


 両親に褒めてもらうのも良いが、主人である藍大にも褒めて貰いたいルナは頭を撫でてもらって嬉しそうだ。


 ルナが満足するまで撫でた後、レッドグリモア達を回収してから藍大はリルとリュカに大事なお知らせをする。


「リルとリュカに美味しい知らせがある」


『「美味しい知らせ?」』


 リュカの尻尾ははてなマークになっており、リルは美味しいという言葉から期待して尻尾をブンブン振っている。


「ルナが進化したことで伊邪那岐様の力が30%で戻った。その報酬として神豆の種が手に入った。これで醤油と味噌を作ったら我が家の和食が進化するぞ」


『和食が進化するの!? ビッグニュースだね!』


「ルナは偉い子ね。リルが大喜びだよ」


「ワフ?」


 よくわかっていないけれどリュカに褒められたのでルナは嬉しくなった。


 伊邪那岐の力が30%まで戻った記念に手に入れた神豆とは大豆である。


 神豆をメロに預けて数を増やし、<強欲グリード>も使って醤油や味噌を作れば逢魔家の和食がグレードアップするに違いない。


 藍大のお知らせを聞いてリルはそこまで把握したから大喜びなのだ。


 神豆ゲットで喜ぶリルとルナを褒めるリュカはしばらくそのままにさせて置き、藍大は進化したルナのステータスを確認した。



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名前:ルナ 種族:ハティ

性別:雌 Lv:30

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HP:380/380

MP:540/540

STR:400

VIT:280

DEX:320

AGI:460

INT:260

LUK:220

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称号:藍大の従魔

   風聖獣の子

アビリティ:<三日月刃クレセントエッジ><刃竜巻エッジトルネード

      <隠者ハーミット><収縮シュリンク

装備:なし

備考:ご機嫌

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 (リルがハティに進化した時より能力値がMPに寄ってる)


 藍大はリルが初めて進化した時のことを思い出した。


 その時のリルはルナよりもMPが低く、その代わりにHPとSTRが高かった。


 同じハティでも個体によって成長の仕方が違うのだと改めて感じた瞬間である。


 ルナのステータスを確認し終えたらダンジョン探索を再開する。


 今日のメインの目的はルナのパワーレベリングでもなければ和食のグレードアップでもない。


 あくまで魔熱病に効く薬の素材を集めることだ。


 それゆえ、藍大達は別の素材を求めて先に進む。


『ご主人、別のモンスターの群れが天井スレスレを飛んで来たよ』


「ワフ!」


「リルとルナに見えて俺には見えないってことは透明になれるのか」


『そうだよ。僕が倒しちゃうね』


 リルは一歩前に出て<風精霊砲シルフキャノン>を放つ。


 自分達が見つかっていないと思っていたモンスター達は油断しており、リルの攻撃であっさり力尽きた。


 HPが尽きたことで透明ではいられなくなり、4対の翼と一つ目の紫色のモンスター達が色づきながら地面に落下した。


『ルナがLv31になりました』


『ルナがLv32になりました』


『ルナがLv33になりました』


      ・

      ・

      ・


『ルナがLv40になりました』


『ルナがアビリティ:<闇爪ダークネイル>を会得しました』


「イビルアイオルタLv85。厄介な敵なのにリルにかかれば瞬殺だったな」


『ワフン♪ 僕に見えない敵なんていないんだよ!』


「よしよし、愛い奴め」


 ドヤ顔のリルの頭を撫でた後、藍大は期待した表情で待っているルナの方を向く。


「ルナも新しいアビリティを会得できたな。強化していけばリュカと同じスキルになるはずだから頑張ろう」


「ワフ!」


 藍大に撫でられて嬉しそうなルナを見てリュカも喜んでいる。


 ルナが自分と同じアビリティを会得できると知って嬉しそうだからだ。


 今のルナのアビリティ構成はリルの使用するアビリティに近いので、上書き前とはいえ自分の使うアビリティをルナが会得してくれてリュカが喜ばないはずがない。


 藍大がリュカのことも撫でたため、うっかり家族サービスの時間に突入したのは仕方のないことだろう。

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