第484話 私が2人いる~!?
翌日、藍大はシャングリラダンジョン地下14階にやって来た。
同行するのは舞とサクラ、リル、ゲンである。
「不思議な場所だね~」
「きっと迷路になってる」
『ブラドが意地悪してるんだよ』
舞達がそんな感想を述べたのは地下14階が天井と地面、壁の全てが鏡のように反射する素材で構成されているからだ。
上下左右に自分達の姿が映し出されていれば不思議な感じがするのも当然だろう。
「リル、壁とかの素材ってただの鏡なのか?」
『ほとんど鏡だけど強度が普段のダンジョンの壁と同じぐらいだよ』
「割れにくい鏡ってそれはそれで需要ありそうだな」
「割っちゃう? 藍大が欲しいなら割るよ~」
『それは勘弁してほしいのだ!』
舞がとんでもないことを言い出したため、藍大達の同行を見守っているブラドがテレパシーで止めてくれと訴えた。
「ブラドが止めてくれってさ。隠し部屋以外わざと壊すのは止めてあげよう」
『隠し部屋もないぞ! はっ、なんでもないのだ!』
(慌ててるせいでネタバレしちゃってるじゃんか)
ブラドはよっぽどダンジョンを壊されてほしくないらしく、うっかり藍大にだけ地下14階には隠し部屋がないことを漏らしてしまった。
舞達にネタバレするとブラドがかわいそうだと判断して藍大は耳にした内容を黙っておくことにした。
感想を一通り述べた後、藍大達は通路を進み始めた。
『ご主人、前に敵がいる。3体だよ』
リルが告げた通り、藍大達の前方には3体のモンスターがいた。
そのモンスターは花の代わりに山羊の頭を咲かせた自生する枝豆の化け物という外見である。
(正確な数が把握しづらい。このための鏡か)
ブラドが内装を鏡にした理由を理解して藍大はそう来たかと感心した。
モンスター図鑑によればこのモンスターはカプリビーンズという名前だった。
「カプリビーンズLv100。豆を飛ばしたり山羊の頭が状態異常系アビリティを使って来るぞ」
「藍大、質問!」
「どうした舞?」
「カプリビーンズの豆は食べられるかな?」
「食べられる。味は枝豆に近いらしい」
「よっしゃ行くぜゴラァァァァァ!」
食べられると聞いた途端、舞は戦闘モードのスイッチが入って駆け出した。
「「「メ゛ェェェェェ!」」」
自分達に接近する舞を恐れてカプリビーンズ達は豆を鞘からガンガン発射する。
「遅えんだよ!」
舞は発射される豆の軌道を見切って躱しながら接近し、左端のカプリビーンズの頭にフルスイングする。
メキッと音がして左端のカプリビーンズが倒れた。
残った2体が左端のカプリビーンズを囮に舞に攻撃しようとするが、サクラがそれをインターセプトする。
「やらせないよ」
<
その間に舞が両方とも頭をフルスイングして戦闘が終わった。
「サクラ~、ナイスアシスト~」
「フォローする身にもなってほしい」
「舞もサクラもお疲れ様」
「全然へっちゃら~」
「私も余裕」
藍大が舞とサクラを労っている横からリルが質問する。
『ご主人、カプリビーンズでどんな料理を作れるの?』
「う~ん、レモンバター炒めかガーリックバター醤油炒めが良いんじゃないか?」
「美味しそう!」
『食べてみたい!』
「よしよし。帰ったら作るから楽しみにしててくれ」
早く食べたいと言わんばかりの舞とリルの表情を見ると、藍大は昼食で作ることを約束した。
「麗奈が知ったらおつまみ欲しいって言って来ると思う」
「・・・確かに」
サクラの言い分を聞いて藍大はそんな未来を容易に想像できた。
実際、クラン掲示板でカプリビーンズについて報告したらすぐに麗奈が反応するだろう。
その後、曲がり角や分かれ道にカプリビーンズが待ち構えていたが、リルがその位置を正確に見抜いて安全な位置から仕留めていく。
藍大の収納リュックの中にどんどんカプリビーンズが溜まっていった。
カプリビーンズが出現しなくなってすぐにリルはピクッと反応した。
「どうしたんだリル?」
『あのね、前に鏡を纏ったペリカンがいるよ。ミラリカントだって』
「マジ? ・・・うわっ、いたのか」
藍大はリルがじっと見つめる方向を向いてモンスター図鑑を展開してみた。
その結果、確かに藍大の視界にはミラリカントのステータスが表示された。
「ミラリカントLv100。奇襲と隠密に長けたモンスターだな」
『ここからは僕のターン!』
リルは自信満々な様子で<
HPが尽きたことにより、ミラリカントの嘴だけが鏡のままでその体は灰色に変わった。
「リルは本当に見えない敵に強いな」
「クゥ~ン♪」
藍大に撫でられてリルは嬉しそうに藍大に頬擦りする。
「見えれば殴り飛ばせるのにな~」
「索敵能力じゃリルには敵わない。全部壊せば良いのかな?」
『騎士の奥方も桜色の奥方も発言が物騒である』
(俺もそー思う)
再びブラドのテレパシーが届いたことに対し、藍大もブラドのコメントに同意した。
これからしばらくはリルの独壇場だった。
ミラリカントを見つけては倒しを繰り返して藍大達は広間に到着した。
そこには黒いシルクハットとタキシードに薄気味悪い笑顔の仮面をつけた人型のモンスターがいた。
藍大はその姿を視界が入った次の瞬間にはモンスター図鑑を展開した。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ラプラス
性別:なし Lv:100
-----------------------------------------
HP:3,000/3,000
MP:4,000/4,000
STR:3,500
VIT:3,500
DEX:4,000
AGI:3,000
INT:3,000
LUK:3,000
-----------------------------------------
称号:掃除屋
到達者
百面相
アビリティ:<
<
<
装備:ラフィンマスク
エレガントタキシード
備考:私を覗くもの私からも覗かれる
-----------------------------------------
(わーい。こいつも備考欄で語りかけて来る奴だー)
藍大は心の中で投げやりな感想を抱いていた時、ラプラスが突然笑い始めた。
「クックック。面白い! 面白いぞ逢魔藍大!」
「初対面の奴に面白いって言われるのは心外だな」
「ああ、すまない。まさか私が模倣できない存在がいるとは思わなかったものでね」
「藍大が藍大しかいないのは当然だよ」
「主が唯一無二なのは当然。お前如きでは主を模倣できるはずがない」
『ワッフン、ご主人はすごいんだ!』
舞達はラプラスが当たり前なことを言うものだからドヤ顔で言ってのけた。
それがラプラスのプライドを傷つけた。
「貴様等に私の本気を見せてやろう。まずは貴様からだ!」
そう言った直後にラプラスは<
<
舞を模倣できても藍大を模倣できなかったのは”伊邪那美の神子”のおかげである。
ラプラスと言えど”伊邪那美の神子”までは<
「「私が2人いる~!?」」
ラプラスは<
「「真似っ子~」」
ラプラスは舞と同じ行動をすることで再現の完成度の高さをアピールしている。
だがそんなお遊びに付き合ってあげる程優しくない者がいた。
それはサクラである。
「遊びは終わりよ」
「ゴフッ!?」
サクラは<
藍大はサクラが攻撃するだろうと察して好感度バフを発動していたため、サクラの一撃でラプラスはあっさりと力尽きてしまった。
力尽きたラプラスは元の姿に戻り、サクラはそれを確認してから藍大に抱き着いた。
「流石は主。私の行動を予測して合わせてくれた。これが愛の力」
「サクラとは付き合いが長いからな」
「狡い! 私だって長いもん!」
『僕も!』
舞とリルも藍大に駆け寄ったことで家族サービスの時間に突入したのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます