【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第468話 行きましょう! サウナが待ってます!
第468話 行きましょう! サウナが待ってます!
模擬戦で藍大のパーティーの強さが改めて知れ渡った後、茂が訓練室にいる全員に向けて提案した。
「皆さん、DMU職人班が試験開発したポーション風呂に興味はありませんか?」
「ポーション風呂? もしかして、人工ポーションケトルの技術を転用した感じ?」
「正解。探索班の面々もダンジョン探索の後に入って疲労を翌日に残さないようにしてるぞ」
藍大がもしやと思って予想を口にしたところ、茂はその通りだと頷いた。
「またDMUの職人班に差を付けられてしまいましたね」
真奈は”レッドスター”のサブマスターとしてグループ会社の生産職が実現できていない設備の開発を知って苦笑した。
そんな真奈とは違って泰造が期待した目で質問する。
「芹江さん、ポーションサウナはありますか!?」
「持木さん、まさか貴方はサウナーですか?」
「Yes, I am!」
泰造はとても生き生きとした表情で答えた。
「もしよろしければ、懇親会まで時間もありますしポーション風呂とサウナを利用しませんか? 皆さんの意見も聞けると助かります」
「行きましょう! サウナが待ってます!」
(持木さん、キャラ代わってますよ)
泰造のノリが雑食を目にした時のゲテキングのようになっていたため、藍大は苦笑するしかなかった。
その場の空気が大浴場に向かうものになり、茂の案内でテイマー系冒険者一行は訓練室から移動した。
大浴場は当然ながら男湯と女湯に分かれており、その暖簾を見た瞬間にサクラが不満そうな表情を浮かべる。
「主と一緒に入りたい」
「サクラ、他の人もいるんだから我慢して。ここじゃ駄目」
「わかった。他の人のいない家で一緒に入る。反論は受け付けない」
「謀られた!?」
サクラも外で家族以外の男性がいるのに一緒に混浴したいとは思っていない。
あくまで藍大と混浴できるように言質を取ろうとしたのだ。
その目論見は見事に成功した。
それから男性と雄の従魔は男湯に移動し、女性と雌の従魔は女湯へと移動した。
男性陣はそそくさと服を脱いで男湯の戸を開けて中に入る。
銭湯の内装だがお湯がポーションの風呂とサウナがあった。
「ポーションの匂いがする」
「そりゃポーション風呂だからな」
「温泉のお湯を飲むと体に良いなんてありますけど、これは本当に体に良いですよね」
「閃きました! ポーションを入れた雑食レシピもいけるかもしれません!」
「サウナ! サウナ!」
藍大と茂、マルオはおとなしくしているが、ゲテキングと泰造のテンションはかなり高い。
『ご主人、体洗って~』
「吾輩も頼むぞ」
「任せてくれ」
「クゥ~ン」
『ガルフもお願いしますだって』
「わかった。一緒に洗ってやろう」
「アォン!」
リルとブラドが体を洗ってほしいと藍大にリクエストするのを見てガルフも一緒にお願いしますと頭を下げる。
藍大もガルフだけ仲間外れにするつもりはないから快く引き受けた。
藍大は早速リル達の体を洗いに行く。
「主君、スポンジを用意したぞ」
「サンキュー」
「ブラドさん、お背中お流しします」
「うむ。それもまたよかろう。死王、頼むのだ」
ブラドが体を洗う用のスポンジを<
子犬サイズになったリルの体をシャワーで流してから洗っていく。
ブラドは背中を流すと言ってくれたマルオに任せることにしたようだ。
「リル、痒い所はないか?」
『ないよ~』
リルは気持ち良さそうにされるがままにされていた。
「ブラドさん、どうですか?」
「悪くないぞ」
「あざっす」
藍大達が体を洗っている頃、茂はサウナに入って後悔していた。
「ポーションドレッシングやポーション蒸しもありですよねぇ」
「サウナと水風呂を何回かくり返した後、椅子やベンチでゆっくりと休憩をすると血液が体を酸素が脳を駆け巡り、とてもリラックス状態になります。このとてつもなく気持ち良い天国に達するような快感こそととのったと呼ぶに相応しいのです」
テンションがおかしい2人と同じ密閉空間にいれば後悔するのも当然だろう。
茂がすぐにサウナを出たのは言うまでもない。
男湯が従魔を洗ったりサウナでカオスな状況を迎えていた頃、女湯では女性冒険者と従魔達が浴槽に浸かりながら交流していた。
「サクラさんのプロポーションが羨ましいです。とても一児の母とは思えませんよ。私にももっと胸部装甲があればセクシー路線もいけるのに」
「主のために注意してる。周りに大食いが多いから大変」
「あぁ、なるほど」
サクラのプロポーションに白雪は羨望の眼差しを向けるが、サクラの周りの食いしん坊ズがいる中でこの体型を維持することがどれだけ大変か察して同情した。
「納得がいかないのは舞がいくら食べても太らないこと」
「えっ? そんなのありですか?」
「なしだと思いたいけど現実は非情。舞がダイエットしてるのを見たことがない」
「なん・・・ですと・・・」
「舞さんは女性の敵でしたか」
サクラの発言に白雪だけじゃなくて睦美まで戦慄した。
「主のご飯が美味しいから努力せず好きに食べていられる舞は本当に羨ましい」
「魔王メシ美味しそうですよね。ホームページに時々アップされる料理でよく飯テロされてます」
「私もホームページでアップされた料理を見る度に月見商店街に食材を買いに行きます」
”楽園の守り人”のホームページではダンジョン関連の報告だけでなく、舞のモンスターまとめや藍大の料理紹介記事も掲載される。
藍大の料理紹介記事は舞とサクラ、リル、仲良しトリオが順番に書き込んでおり、それぞれが好きな料理について書いている。
その記事が飯テロを起こして月見商店街の売り上げに貢献しているのは間違いない。
平和な話をしている3人だったが、ソワソワしている真奈を見て代表して白雪が声をかけた。
「赤星さん、そんなにソワソワしてどうしたんですか?」
「男湯でリル君とガルフを逢魔さんが洗ってるのだと思うと逢魔さんが羨ましくて」
「ブ、ブレないですね」
「当たり前です。ガルフは水に濡れるのがあまり好きではないのでなかなか私と一緒に水浴びをしてくれませんから、リル君に釣られてお風呂に入ったガルフを逢魔さんが洗ってるに違いないと思うと羨ましくて仕方ないです」
モフラーはブレることなくモフラーである。
モフモフの話題で真奈が暴走すると落ち着かないので、サクラは別の話を振ることにした。
「ところで、3人は好きな人とかいないの?」
「良い人がいないんですよねぇ」
「今は従魔の育成が楽しくてそれどころじゃないです」
「ガルフが人の姿になれれば考えなくもないです」
その瞬間、男湯でガルフがブルッと震えたのだがそれはとりあえず置いておこう。
恋バナが始まるとローラ達従魔組がすいすいとサクラ達に合流する。
アイボは口で喋れないしディアンヌも恥ずかしがり屋だが、恋バナに興味がない訳ではない。
結婚までしているのだから、むしろ恋バナに興味があると言えよう。
「ずっと気になってたんですけど、ローラさん達ってマルオさんのこと好きじゃないんですか?」
白雪はローラ達を見てからずっと気にしていたことを訊ねた。
「好きってlove? それともlike?」
「勿論loveの方ですよ」
ローラが首を傾げると白雪は当然じゃないかという風に答えた。
「難しい質問。マスターのことは好きだけど、アンデッド型モンスターの私達はマスターの子供を産めない。だから、マスターのためにも結婚したいとも言えない」
「主様のことは大好きだけど、主様に恋愛対象として見られてない」
ローラとポーラがそのように言うと、メジェラも同感だと頷く。
なお、テトラとドーラは風呂とは無縁なので召喚されておらずこの場にはいないが、ローラ達と同じ気持ちである。
ちなみに、ローラ達はこの場で口にしていないがマルオは現在進行形で藍大の従姉である花梨と付き合っている。
花梨のことは口外しないように言い含められているので口にできないし、ローラ達は花梨を気遣って恋心を表に出していない。
「それなら質問を変えます。子供を産めるようになったらマルオさんと結婚したいですか?」
「「したい」」
「そうですか。では、もしもそんなアイテムが見つかったら差し上げます。私、悲恋が嫌いなので」
「感謝」
「ありがとう」
ローラ達の白雪への好感度が上がった。
だがちょっと待ってほしい。
こんな話を聞いて”運命の紡ぎ手”たるサクラが黙っていられるだろうか。
案外ローラ達の願いが叶うのはすぐかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます