第467話 睦美、行きまぁぁぁぁぁす!
昼食後はDMU本部の訓練室に移動して模擬戦を行う。
昨日は主人と従魔1体のタッグバトルだったが、今日は強者との戦闘に備えるべく藍大とその従魔VS2組の主従の組み分けである。
「最初は私がやる」
「わかった。サクラ、手加減するように」
「大丈夫。舞じゃないから再起不能にしたりしない」
戦闘中は力加減をしないというよりもできない舞を例に出すのだから、サクラはきっちりと手加減をするつもりなのだろう。
「では、最初に戦いたい人達はいますか?」
「「はい!」」
手を挙げたのは真奈とゲテキングだった。
「わかりました。最初は真奈さんとゲテキングの組と戦いましょう」
藍大達は1階に降り、それ以外のメンバーは観戦のために2階に移動した。
「【
「【
真奈とゲテキングはサクラと戦うべく従魔を召喚した。
「ガルフ、<
「ワォン!」
真奈の指示に了解したと吠えてガルフは<
「カムカム、<
「キィッ!」
ゲテキングの指示に従ってカムカムが<
真奈もゲテキングも従魔の力を借りて自分が主体となって戦うつもりらしい。
「茂、審判頼んだ!」
「わかった! 2人の準備は良いですか?」
「「はい!」」
「それでは始め!」
茂が開始の合図を告げた途端、ゲテキングがサクラとの距離を詰めるべく駆け出して真奈は背負っていた弓から矢を放つ。
「狙い撃ちます」
「無駄」
サクラは真奈が放った矢を<
「なっ!?」
ゲテキングは咄嗟に剣で矢を弾くが、投げ返された矢の威力で手が痺れてしまった。
「どーん」
「えっ!?」
サクラが特に力むことなく言った直後にゲテキングの額に衝撃が走り、そのまま後ろに吹き飛ばされた。
カムカムの<
サクラが何をしたかと言えば、<
カムカムがサクラの攻撃に寄って気絶したことにより、<
ゲテキングもカムカムに守られていたおかげで気絶こそしていないが、デコピンのせいで体が痺れてまともに動けなくなっていた。
真奈は弓矢での攻撃は通じないと判断して接近戦を仕掛けようとした。
「無駄」
「う、嘘? 動けない?」
真奈は全方向に移動しようと試したが、少しも移動できなかった。
サクラが<
「参りました」
「えぇっ!?」
真奈が降参を宣言したことで2階で観戦していた白雪が驚きの余り声を上げた。
サクラが何もしていないように見えるのに真奈が降参したからだ。
茂はこれ以上続行することができないだろうと判断して口を開いた。
「そこまで! 勝者は藍大&サクラペア!」
「サクラさん半端ねえっす!」
「これが魔王様の筆頭従魔!」
「自分達にはできないことを平然とやってのける!」
マルオと睦美、泰造はサクラが<
状況を理解できていない白雪は隣にいたリルに訊ねる。
「リルさん、今何があったんですか? 私には真奈さんの矢がゲテキングさんを攻撃して、その後真奈さんが降参したように見えたのですが」
『サクラは<
「そんな”大災厄”いたら勝てる訳なくないですか? 見えなくて音も聞こえない攻撃だなんて」
『僕にはわかるから避けるぐらい余裕だよ?』
「魔王様パーティーはヤバいですね」
『ワッフン!』
戦慄する白雪にリルがドヤ顔を見せた。
そんなやり取りが行われている一方で、茂が藍大に声をかけた。
「藍大、2組のペアと戦うんじゃなくて1人の主人とその人の召喚できる従魔全てと戦うようにしたらどうだ? これじゃ模擬戦にならないだろ」
「私は一向に構わない」
茂に間接的に自分が強過ぎると言われてサクラは余裕を見せる。
「次からそうするか。次に挑みたい人はいますか?」
藍大の質問に手を挙げたのは睦美だった。
「私が挑みます! あっ、でもサクラさんじゃなくてリルさんと戦いたいです!」
「なんで?」
「サクラさんとやったら今の模擬戦と同じ結果になりそうなので、もう少しまともに戦えるリルさんと戦いたいです」
「むぅ、仕方ない。ここはリルに譲る」
『やった! 僕の出番だね!』
サクラが自分だと強過ぎて模擬戦の相手にはならないと言われて不本意ながらリルと交代した。
リルは自分の出番が来たので嬉しそうに1階に降りて来た。
「リル、よろしく頼む」
「クゥ~ン♪」
藍大に頭を撫でられてリルはもっとご機嫌になっていく。
睦美は1階に降りてからサモナーズホーンを吹き、その後すぐに召喚できる従魔全てを召喚し始めた。
「【
メカメカしい従魔がパワーアップされた状態で勢揃いした。
勿論、睦美の準備はまだ終わっていない。
「ヴァーチェ、キュリー、合体よ!」
『オーダーを実行します』
『OK』
睦美の指示によってヴァーチェが<
それにより、睦美は青白のタイガーパターンのヴァーチェを着込んだ姿へと変わった。
「準備完了です!」
睦美の準備が整ったことを確認して茂が開始の合図を告げる。
「試合開始!」
「睦美、行きまぁぁぁぁぁす!」
「いつか言うと思ってました。リル、迎え撃て!」
「アォォォォォン!」
リルは<
「動きの鈍った奴から倒していけ!」
『うん!』
リルは<
ルシウスを助けようとサリバンが体を張って受け止めるが、その時にはリルがサリバンの背後に回っていた。
『痛いけど我慢してね』
リルは手加減して<
手加減したとしても<
「ルシウス! サリバン!」
『僕はサクラよりも優しいけど弱い訳じゃないからね』
「リル、何か言った?」
『なんでもないよ』
リルはサクラを怒らせたら大変だとわかっているのですまし顔で答えた。
下手に動揺しているとそこを突かれてボロが出てしまう。
だからこそのすまし顔なのだ。
リルがサクラと話している隙に睦美は<
「油断禁物!」
『してないよ』
リルはヒラヒラと睦美のラッシュを躱していく。
「全然当たる気がしない! 腕が6本もあるのに!」
『えい』
睦美が自棄になって大振りになった瞬間、リルは<
そして、仰向けに倒れた睦美を踏みつけて立ち上がれないようにすれば勝負は決まりである。
「勝負あり! 勝者は藍大&リルペア!」
『ご主人、勝ったよ!』
「よしよし。ちゃんと手加減できて偉いぞ」
「クゥ~ン♪」
リルは藍大に駆け寄ると、顎の下を撫でられて気持ち良さそうに鳴いた。
「やはりモフモフしか勝たん」
「真奈さんはブレないっすね」
「当然です。モフモフは至高なんです。ね、ガルフ?」
「・・・アォン」
ガルフ的にはモフモフが至高というよりも
しかし、先程の模擬戦で感じたサクラの力による疲れが癒えていなかったので適当に真奈に合わせた。
この後、残った泰造と白雪が一緒にブラドを相手にして戦ったけれど、その模擬戦でもブラドが手加減した状態で圧勝した。
強化合宿2日目の模擬戦では藍大のパーティーがどれだけ強いか再確認する機会になったのは間違いない。
ちなみに、消費されたポーションの数は昨日の倍以上だったりする。
手加減してもサクラやリル、ブラドは強いの当然と言えば当然の結果だろう。
この結果を受けて茂は苦笑いするしかなかった。
「もう藍大がラスボスで良いんじゃないか?」
「茂、俺はラスボスじゃないからな?」
「主は魔王。この世界の頂点」
「サクラさんや、そんな面倒な地位は嫌だからフラグを立てないように」
「は~い」
フラグを侮ってはいけないと藍大が注意すれば、サクラはフラグが回収されても良いと思ってもとりあえず頷いた。
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