第464話 オペレーションハンバーグを開始しま~す

 藍大が四聖獣とゲンを連れてDMU本部で強化合宿に参加している頃、舞とサクラ、仲良しトリオ、ブラドはリビングに集まっていた。


「今日は藍大の代わりにみんなで夕食を作りま~す」


「異議なし。主は疲れて帰ってくるはず。ここで私達が料理を作って待っててあげるのはポイント高い」


「嫁度を上げるのよっ」


「嫁度ってなんです? でも、マスターにご飯作ってあげるのは賛成です」


『(^з^)ゴハンニスル? (^з^)オフロニスル? (^з^)ソレトモ・・・ワタシ?』


 そんな夕食を作るのに賛成する舞達に対してブラドが待ったをかけた。


「待たれよ。吾輩の<創造クリエイト>で創れば良かろう? 主君の料理で舌を鍛えられた今の吾輩ならば、主君の料理に近い再現度で夕食を用意できるぞ」


 ブラドがそう言った瞬間には舞がブラドを確保していた。


「駄目だよブラド~」


「ぬぐっ!? 速い!? 離すのだ!」


「今のはブラドが悪い」


「同感なのよっ」


「自業自得です」


『∵ゞ(≧ε≦o)プププ!』


 舞に素早く抱っこされたブラドを助ける者はいなかった。


「味も大事だけど今日最も大事なのは私達の気持ちだよ~」


「ブラドは乙女心がまるでわかってない」


「おとなしく舞に抱かれてれば良いんだからねっ」


「舞はニコニコで私達も安全でみんな幸せです」


『(σ゚∀゚)σそれな』


「待て! 吾輩だけ不幸なのだ! 異議ありである!」


 ブラドが断固として抗議するが舞達はそれを受け入れない。


 料理を作り出すまでブラドのポジションは舞の腕の中になった。


「何を作ろっか~?」


「変に見栄を張らない方が良いと思う」


「ありのままのアタシ達の実力を見せれば良いのよっ」


「私達がお手伝いしたことのある料理にするですよ」


『ハ٩( 'ω' )وン٩( 'ω' )وバ٩( 'ω' )وー٩( 'ω' )وグ‼』


「賛成!」


「良いと思うわ」


「それなのよっ」


「グッドアイディアです!」


 舞達の意見がハンバーグで統一された。


 ブラドはハンバーグなら<創造クリエイト>で作れると言おうとして留まった。


 もしも口にしたのなら、今日が終わるまでずっと舞に抱っこされたままになる気がしたからだ。


 ブラドは同じミスを繰り返すような間抜けではない。


 黙っていたおかげでハンバーグ作りが始まってすぐにブラドは舞の腕から解放された。


 まずは挽肉の準備だが、ミスリルミンサーで挽肉にするのはブネの肉である。


「オペレーションハンバーグを開始しま~す」


「最初は舞の出番だもんね」


「そうだよ! 回すよ~! 超回すよ~!」


 舞がサクラに補助を頼んでミスリルミンサーを回し、ブネの挽肉をガンガン量産していく。


 その間に仲良しトリオが玉葱のみじん切りを行う。


「な、泣いてないんだからねっ」


「ゴルゴン、ちゃんとゴーグルを着けないからそうなるです」


『( ̄∀+ ̄)ドヤァ』


 ゴルゴンはみじん切りで活躍したくて焦ってしまい、ゴーグルを着用せずにみじん切りを行った。


 そのせいで玉葱が目に染みてしまったのだ。


 メロとゼルはしっかりとゴーグルを着用していたこともあり、涙が出ることもなくてきぱきと作業を進められた。


 みじん切り作業を途中離脱したゴルゴンは、みじん切りが終わってからミスリルフライパンで玉葱をサッと炒める。


 炒めた玉葱が冷めた頃には舞とサクラの挽肉作りも終わっており、それらをボウルに移して卵とパン粉、塩、胡椒を入れてしっかり捏ねていく。


「今度は私が頑張る」


 サクラが<透明千手サウザンドアームズ>を発動して捏ねた。


 自身の手で長い間捏ねると手の熱でハンバーグのタネの脂肪分が液体の油になって溶け出してしまうので、ここはアビリティ頼みである。


 サクラが捏ねている途中で優月とユノ、蘭が様子を見に来た。


 そして、ハンバーグを作っていると察して無邪気にリクエストする。


「ママ、チーズはいってるのたべたい」


「わたしもチーズすきー」


「キュルン」


「ふむ。チーズinハンバーグだな。トロリサーモンが残ってたからできるのだ」


 子供達のお願いにブラドが<無限収納インベントリ>からトロリサーモンのチーズを取り出した。


「みんなチーズinハンバーグ好きだもんね~」


「今日もやってみよう。主をびっくりさせられるかも」


「チーズinハンバーグは正義なのよっ」


「我が家は美味しい物が正義なのです」


『(*>ω<)ゞジャスティス!』


 舞達もチーズinハンバーグが好きだから子供達のリクエストは悩むまでもなく承認された。


 サクラがしっかり捏ねたハンバーグのタネを舞達5人で手分けして丸く形成する。


 当然のことだが、トロリサーモンのチーズをタネの中に埋めるのも忘れない。


 後は焼く作業がメインだから、ご飯やサラダ、ハンバーグにかけるソースの準備を分担して行う。


 ミスリルフライパンを使って丁寧に焼き、焼き上がった物はブラドが<無限収納インベントリ>にしまうから時間経過で冷めずに美味しく食べられる。


 全ての用意が終わった頃に藍大達が帰って来た。


「ただいま」


「お帰り~」


 藍大達を出迎えに行ったは舞だった。


 リルは尻尾をブンブンと振るいながら舞に訊ねる。


『舞、今日はチーズinハンバーグだよね!?』


「リル君ならわかっちゃうか~」


『やったね! 家の外から良い匂いしてたからすぐにわかったよ!』


「チーズinハンバーグなのニャ!」


『お腹空いたの!』


「良い」


 リルが自信満々に応じた後に続いてミオとフィア、ゲンが嬉しそうに反応した。


 舞はリル達が喜んでくれたのはわかったけれど、肝心の藍大はどうだろうかと表情を伺う。


 藍大は優しく微笑んでいた。


「ありがとう。夕食、みんなで作ってくれたんだな」


「うん。藍大が作るハンバーグには勝てないと思うけど」


「勝ち負けなんてないよ。舞達が作ってくれたことが嬉しいんだから」


「藍大~!」


 舞は嬉しくなって藍大に抱き着いた。


 そうしていると、玄関からなかなか戻って来ない舞の様子を見に仲良しトリオがやって来た。


「何やってるのよっ」


「1人だけ狡いです!」


『٩(๑òωó๑)۶オコダヨ!』


 仲良しトリオはプンプンしながら藍大達を洗面所経由でリビングへと連れて行った。


 リビングでは配膳作業を進めるサクラとブラドの姿があった。


「お帰りなさい」


「お帰りなのだ」


「ただいま。サクラとブラドも夕食作ってくれてありがとな」


「ご飯の後にお風呂入ったら私ね?」


「・・・新婚の三択を訊く前から潰す発想はなかった」


「サクラ、舞が抜け駆けして帰って来たマスターに抱き着いてたんだからねっ」


「抜け駆け良くないです!」


『プンプン ( `Д´)ノ』


「告げ口するのは誰だ~」


「離すのよっ」


「離すです!」


『(≧□≦)HA☆NA☆SE』


 チクった仲良しトリオは舞に捕まって抱き締められ、早くその手を放せと抗議した。


 舞のSTRの高さから仲良しトリオは自力で脱出することができずにじたばたするばかりである。


 そんな4人を見てサクラはやれやれと首を横に振った。


「馬鹿なことしてないで早く席について。せっかく作った料理が冷めちゃう」


「は~い」


「か、解放されたのよっ」


「力が欲しいです」


『(;n;)マスター』


「よしよし、もう大丈夫だぞ。ゴルゴンとメロ、ゼルは日向と大地、零を連れておいで。みんなが作ってくれた料理を食べようか」


 全員が揃ってから手を合わせて食事の時間が始まる。


「「「・・・「『いただきます!』」・・・」」」


 号令してすぐに藍大はチーズinハンバーグに箸を伸ばした。


 舞達が期待に満ちた視線を向けて来るからである。


 今日は舞達が自分の代わりに作って出来栄えが気になって仕方ないだろうから、藍大は何よりも先にチーズinハンバーグを食べるのだ。


 大きく一口食べた藍大はニッコリと笑った。


「うん! 美味しくできてる!」


「良かった~」


「頑張った甲斐あった」


「美味しいのは当然なんだからねっ」


「万歳です!」


『ヽ(≧▽≦)ノ"ヤッター』


 藍大のリアクションに舞達は喜んだ。


 自分達が協力して作った料理を美味しいと言ってもらえて嬉しかったのである。


「ママたちのハンバーグおいしい!」


「キュルン!」


「これすき!」


「「「んま~!」」」


 優月達も大喜びでチーズinハンバーグを食べているし、舞以外の食いしん坊ズも食べるスピードが全く落ちない。


 舞達のオペレーションハンバーグは大成功に終わったと言って良いだろう。

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