第442話 チーズinハンバーグとカレーがコラボするの!? 最強だね!

 家族サービスの時間が終わった後、藍大はリャナンシーの解体を済ませて魔石をゴルゴンに与えた。


「ゴルゴン、リャナンシーの魔石をあげよう」


「待ってたのよっ」


 ゴルゴンは藍大から魔石を受け取った魔石を飲み込んだ。


 その途端にゴルゴンの髪が魔石を飲み込む前よりも綺麗になった。


『ゴルゴンのアビリティ:<火炎支配フレイムイズマイン>がアビリティ:<緋炎支配クリムゾンイズマイン>に上書きされました』


 ゲンの<水支配ウォーターイズマイン>が<液体支配リキッドイズマイン>に変化したようにゴルゴンの<火炎支配フレイムイズマイン>がアビリティ:<緋炎支配クリムゾンイズマイン>に上書きされた。


「ゴルゴンの炎が強化されたのか」


「フフン。燃えないゴミも燃やせるのよっ」


「ゴミの分別はしっかりしなさい」


「わ、わかったのよっ」


「わかればよろしい」


 ゴルゴンは強化された火力を自慢したかっただけだとわかっていたので、藍大はゴルゴンが言うことを聞いたら微笑んでその頭を撫でてやった。


 リャナンシーがいた広間から先に進もうとした時、リルが藍大に話しかけた。


『先に進むのはまだ早いよご主人』


「宝箱があったのか?」


『うん。一緒に来て』


 リルの案内で広間の端に移動したところ、箱1つ入るサイズの穴が開いていた。


 その穴の中には黄色く染め上げられた宝箱があった。


「なるほど。周りが黄色だからわかりにくなってる。ブラドも考えたな」


『それでも僕の目と鼻は誤魔化せないけどね』


「そうだな。流石はリルだ」


「クゥ~ン♪」


 藍大はリルの顎の下を優しく撫でたので、リルはとても気持ち良さそうに鳴いた。


 宝箱を回収した藍大達は今度こそ広間を出発する。


 広間の先には川があり、トロリサーモンの気配を察知したリルが<蒼雷罰パニッシュメント>で一網打尽にした。


 オニコーンも何度か現れたが、仲良しトリオが抜群のチームワークを発揮して苦労することなく倒した。


 それゆえ、藍大達がボス部屋に到着するまで15分程度で済んだ。


「さて、ボス部屋だな」


『ご主人ご主人』


「どうしたリル?」


『この階のボスは食べられる?』


「残念ながら食べられないんだ」


『そっかぁ』


「別に期待なんてしてないんだからねっ」


「何言ってるですかゴルゴン。声に元気がないですよ」


『ビェ──・゚・(。>д<。)・゚・──ン!!』


 リルだけではなく、仲良しトリオもフロアボスが食べられないモンスターだと知ってしょんぼりしていた。


 逢魔家は食いしん坊ズに入っていなくても食によるモチベーションの変化が顕著だ。


 そんな家族の扱い方を藍大がわかっていないはずがない。


「そうがっかりするな。今日の夕食のメニューを聞いたら絶対元気出るから」


『今日の晩御飯!? 何!?』


 リルは真っ先に立ち直って尻尾をブンブンと振った。


 まだメニューを聞いていないのに絶対に美味しいやつだと期待に目を輝かせている。


「今日の晩御飯は・・・」


『今日の晩御飯は?』


「トロリサーモンのチーズinハンバーグカレーだ」


『チーズinハンバーグとカレーがコラボするの!? 最強だね!』


「こうしちゃいられないわっ。さっさとボスを倒すのよっ」


「ボッコボコにしてやるです!」


『ヾ(・▽<)ノ ヒャッハー!』


 藍大の口から夕食のメニューを聞いた瞬間、リルは尻尾が千切れるのではないかと思うぐらい尻尾を振った。


 仲良しトリオもチーズinハンバーグカレーと聞いてフロアボスなんて瞬殺してやると気合が入った。


「やる気になって良かった。それじゃ油断せずに行こうか」


『うん!』


「はいなっ」


「はいです!」


『(b゜ω^)⌒☆okボス』


 リルが<仙術ウィザードリィ>でボス部屋の扉を開けると、その中は今までと違って真っ暗だった。


「燃え尽きろ」


 藍大達がボス部屋の中に足を踏み入れた瞬間、部屋の上部から特大の火の玉が藍大達目掛けて飛んで来た。


「甘々なのよっ」


 ゴルゴンが<緋炎支配クリムゾンイズマイン>で特大の火の玉のコントロールを奪い、それを声の聞こえた方向に向かって飛ばした。


「無駄だ!」


 声の主は自分に命中する寸前で火の玉を何かで散らし、それによって壁際に等間隔に配置されていた松明に燃え移っていく。


 全ての松明に火が灯ったことにより、部屋の中央に蝋燭に似たメイスを持った黒い巨人の姿が藍大達の目に見えるようになった。


 藍大は敵の姿が見えてすぐにその正体をモンスター図鑑で調べ始めた。



-----------------------------------------

名前:なし 種族:スルト

性別:雄 Lv:100

-----------------------------------------

HP:3,500/3,500

MP:3,800/4,000

STR:3,500

VIT:3,500

DEX:3,500

AGI:2,000

INT:3,500

LUK:3,500

-----------------------------------------

称号:地下13階フロアボス

   到達者

   放火魔

アビリティ:<火炎隕石フレイムメテオ><火炎柱フレイムピラー><火炎波フレイムウェーブ

      <地震アースクエイク><剛力打撃メガトンストライク><剛力突撃メガトンブリッツ

      <闘気鎧オーラアーマー><全半減ディバインオール

装備:ギルティキャンドル

備考:興味

-----------------------------------------



 (うわぁ、こいつだけで火事も地震も起きるじゃん)


 藍大はスルトのステータスを見て顔を引き攣らせた。


 ”大災厄”の称号がないだけでシャングリラダンジョンの外に出たらそれ以上の被害が生じる強さだったからだ。


「スルトLv100! 火と溶岩、地震、近接戦闘に注意!」


「貴様が司令塔か。塵となれ」


 スルトは<火炎波フレイムウェーブ>で藍大を飲み込んでやろうと放つ。


「やらせないんだからねっ」


 ゴルゴンが<緋炎支配クリムゾンイズマイン>で巨大な炎の波のコントロールを奪い、それを緋色の炎でコーティングしてから大蛇の形に変形させてスルトに向かわせる。


「無駄だ」


「無駄じゃないです!」


 メロはスルトがギルティキャンドルでゴルゴンの攻撃を打ち返そうとしたのを察知し、<停滞円陣スタグサークル>でスルトの動きを止める。


『(≡o・x・)o』


 その隙にゼルが<暗黒支配ダークネスイズマイン>で暗黒のレーザーを放つ。


 ゼルの攻撃がスルトの顔面にぶつかり、スルトの体が大きく後ろに傾いたタイミングで<停滞円陣スタグサークル>の効果が切れた。


 スルトは体勢を崩されたせいでゴルゴンの攻撃をまともに喰らった。


「俺も加勢する!」


 藍大はゲンの力を借りて<液体支配リキッドイズマイン>を発動する。


 それにより、スルトの巨体を水の牢獄に閉じ込めた。


「リル、後は任せた!」


『チーズinハンバーグ!』


 リルは料理名の掛け声と共に<蒼雷罰パニッシュメント>で水の牢獄ごとスルトを攻撃した。


 蒼い雷が水の牢獄に触れ、スルトが感電してからすぐに水の牢獄が爆発する。


「ぐっ!?」


 藍大とリルのコンビネーション攻撃でも倒し切れなかったけれど、まだリルの攻撃ターンは終わっていなかった。


『&カレー!』


 なんということだろう。


 今日の夕食のメニューの掛け声が完成するのと同時に<風精霊砲シルフキャノン>がスルトの体を吹き飛ばした。


 背中から地面に落ちたスルトはピクリとも動かず、藍大もモンスター図鑑でスルトのHPが尽きていることを確認した。


「みんなグッジョブ! ブラボーだ!」


『美味しいご飯の勝利だよ!』


「大勝利なのよっ」


「やったです!」


『(^_^)vヤッタネ!』


 藍大はリル達をまとめて抱き締めた。


 高スペックなスルトに思うように戦わせず、反撃からの怒涛の追撃でスルトを倒せたのが嬉しかったからだ。


 本日二度目の家族サービスの時間が終わると、藍大はスルトの体から魔石を回収してメロに与えた。


 メロは魔石を飲み込んだ結果、その身長が3センチ伸びた。


『メロのアビリティ:<脈動回復パルスヒール>がアビリティ:<脈動再生パルスリジェネ>に上書きされました』


「背が伸びたです!」


「なんでなのよっ」


『いーなーo(´>ω<`)o』


 ゴルゴンとゼルはメロの身長が伸びて狡いと訴えた。


 抗議しても結果が変わらないのはわかっているが、それでも抗議せずにはいられないのだ。


「メロの回復アビリティが強化されたな。部位欠損まで治るってよ」


「サクラがいない時は私に任せるですよ」


「そうだな。いざって時は頼むよ」


「はいなのです!」


 それから藍大達は戦利品全てを回収してシャングリラダンジョンから脱出した。


 帰宅後にサクラが宝箱を開けるとミスリルケトルが出たが、それを喜ぶ間もなくリルと仲良しトリオが今日の夕食を家族みんなに発表してほしいと急かした。


 今夜はチーズinハンバーグカレーと発表した瞬間、留守番組の食いしん坊ズは嬉しさの余り藍大に抱き着いた。


「藍大~、それ絶対美味しい!」


「素晴らしいぞ主君!」


「最強と最強の合体ニャ!」


『パパはやっぱり最高だね!』


 この日のカレーは家族全員に大好評であり、伊邪那美に至ってはお祝い事があったらこのカレーにすべきだと藍大に力説したとだけ言っておこう。

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