第415話 ということでお父サンタ登場
クリスマスとはカップルにとってはロマンチックなデートをして関係を深めるにはもってこいのイベントだが、子供にとってはサンタクロースがプレゼントをくれるイベントだ。
優月達が寝静まった頃、シャングリラ102号室には赤い衣装を身に纏って白い袋を担いだ者達の姿があった。
白い袋は収納袋のサイズをサンタの背負う袋と同じ見た目に誤魔化すために用意した物であり、実際のところは収納袋の中に各種プレゼントが入っている。
「ということでお
「ゴルゴンサンタなのよっ」
「メロサンタなのです!」
『o<( ´∀`)っ┌iii┐Merry X'mas』
その正体はサンタコスをした藍大と仲良しトリオである。
4人のサンタを見て舞はしっかり写真をスマホで撮ってから訊ねた。
「あれ、予定では藍大だけサンタに変装するんじゃなかったっけ?」
「元々はそうだったんだけど、ゴルゴン達が一緒にサンタやりたいって言ってこうなった」
「マスターだけに面白そうなことをさせないんだからねっ」
「私達もサンタに興味あったです」
『(*´罒`*)ニヒヒ』
仲良しトリオはテレビ好きであり、クリスマスシーズンはテレビでもサンタコスをしている人が多いからやってみたいと思うのも当然だろう。
舞はそんな彼女達の思考回路が理解できたから、サンタコスを着た仲良しトリオを見て微笑んだ。
「そっかぁ。ゴルゴンちゃん、メロちゃん、ゼルちゃん」
「何かしらっ?」
「なんです?」
『(゚▽゚`*)ハイ?』
「可愛いからハグしても良いかな~?」
「駄目なんだからねっ」
「駄目に決まってるです!」
『d (>◇< ) アウト!』
「そんなぁ・・・」
仲良しトリオをハグしたいと舞が伝えたところ、彼女達は少しも考えることなくNOと答えた。
これからプレゼントを配りに行くのに舞にハグされたらクタクタになってしまうからだ。
今夜は最初に優月達子供5人のベッドの近くにプレゼントを置いた後、隣の立石孤児院にお邪魔して寝ている子供達の枕元にプレゼントを置きに行くことになっている。
舞とハグを巡る攻防をすれば疲れないはずがないから、仲良しトリオは最初から強い拒絶の意思を示した。
舞がしょんぼりしているままというのも悪いと思い、藍大は舞に彼女達から意識を逸らせるよう話題を振った。
「逆に質問するけど、どうして舞はサンタやらないんだ? てっきり真っ先に乗って来ると思った」
「藍大、私はプレゼントをあげるより貰う側に回りたい」
「なるほど。サクラはどうしてやらなかったんだ? コスプレやるかと思ってたんだが?」
舞の言い分に納得すると、藍大はその隣で微笑んでいるだけのサクラに対して訊ねた。
「主、私のコスプレは主専用なの。それと、今日コスするならサンタじゃなくてプレゼントが良い」
「ま、まさか・・・」
「そう、どうせやるなら私がプレゼントをやる」
(流石はサクラ。これぞアスモデウスだな)
サクラはやはり”色欲の女王”だった。
「あれ? リルはどこ行ったのかしらっ?」
「ゴルゴン、今夜はリュカがリルを独り占めするです。野暮な真似はしちゃ駄目ですよ」
「そういう訳で今日はトナカイなし。さあ、始めようか」
ゴルゴンの質問にメロが答え、藍大もそれに頷いてからサンタとしてのお仕事を始めた。
最初は優月達が寝ている赤ちゃん部屋だ。
優月達はみんな健やかな寝息を立てていたが、優月の隣で寝ていたユノと隅の布団で寝ていたブラドは藍大達が部屋に入って来ると静かに起き上がった。
今日も優月達は安眠できるように鉄壁のセキュリティによって守られているらしい。
「キュルン?」
「主君達は何をしておるのだ?」
「サンタだから優月達にプレゼント持って来た」
「キュルキュル」
「ありがとうとお疲れ様だそうだ」
「今のはわかった。頭下げてたし」
ユノは藍大の従魔ではないが、
藍大が優月達にプレゼントを持って来たとわかると、ユノは優月達に代わってお礼を言った。
藍大が子供達にあげたプレゼントは次の通りだ。
優月にはブロック。
蘭にはベビーリュック。
日向と大地、零にはお洒落なベビー服。
優月は一般的な1歳と比べて賢いので、積木よりもワンランク上のブロックをプレゼントすることにした。
蘭は気に入った物を手元に置いておきたいとアピールする子だから、ベビーリュックがあれば蘭はいつでも好きな物を持って移動できる。
日向と大地、零はまだ生後4ヶ月程なので何で遊びたいとか好きな物を持っておきたいという癖も表に出ていないのでベビー服を用意した。
「キュルルン」
「明日優月が起きたら喜びそうだと言っておるぞ」
「ユノもそう思ってくれるか」
「キュル」
「ありがとう。これからも優月のことをよろしくな」
「キュッ」
ユノは藍大の言葉に任せてほしいと胸を張った。
長居すると優月達が何かの拍子で起きてしまう可能性があったため、藍大達はすぐに優月達の寝室を出た。
孤児院に藍大達が移動すると、院長の裕太が彼等を迎え入れた。
「逢魔さん、ゴルゴンさん、メロさん、ゼルさん、今日はありがとうございます」
「いえいえ。みんなサンタが来るのを楽しみにしてるのは知ってますから」
「ゴルゴンサンタが幸せを届けに来たのよっ」
「メロサンタも笑顔を届けに来たです」
『只今 \( ̄^ ̄)/ 参上!!』
藍大よりも仲良しトリオの方がノリノリだった。
裕太の案内で藍大達は子供達の寝室へと移動した。
部屋は大雑把に年齢で分けられており、年齢が下の子供の部屋から順番に回っていった。
藍大は最後の部屋に入った時に声が聞こえてすぐに止まった。
「ハン・・・バーグゥ・・・」
「お兄ちゃん・・・お嫁さん・・・」
(この子達がどんな夢見てるか簡単にわかるわ)
この部屋にはハンバーグに並々ならぬ拘りを持つ男の子と藍大にすっかり胃袋を掴まれてしまった女の子が寝ていた。
寝言にもそれぞれの個性が色濃く出ている。
「マスター、どうするのよっ。ハンバーグ持ってきてないんだからねっ」
「当たり前だ。枕元にハンバーグに置いて帰るサンタがいる訳ないだろ」
「舞達食いしん坊ズは喜びそうです」
『(ーдー。)"それな"』
「・・・否定できない」
メロの言い分にゼルが真っ先に頷き、藍大もそれを否定することができなかった。
それどころか、枕元に置いた瞬間ぱっちりと目を開けてニコニコしながらハンバーグを食べる舞達の姿を想像できてしまった。
とりあえず、寝ている子供達の枕元に食べ物ではなく欲しがっていたプレゼントを置いて藍大達はその部屋から出た。
「みなさん、本当にありがとうございました。きっと明日は朝から子供達が大はしゃぎしますよ」
「喜んでもらえれば私達としても嬉しいです。では、サンタが長居して見つかるのは間抜けなのでこれにて失礼します。おやすみなさい」
「そうですね。おやすみなさい」
藍大達は立石孤児院を出て自宅に戻った。
その瞬間、藍大はゴルゴン達に左右と後ろから抱き着かれた。
「確保なのよっ」
「確保です」
『ヾ(・▽<)ノ ヒャッハー!』
「どゆこと?」
急展開過ぎて藍大は首を傾げた。
ゲンの<
それは別に構わないのだが、いきなり確保と言われればどうしてそうなったのかと理由を訊ねたくなるのは無理もない。
「アタシ達のクリスマスはここから始まるんだからねっ」
「そうです! むしろここからが本番です」
『♪───O(≧∇≦)O────♪』
テンションが高いゴルゴン達に寝室に連れて行かれると、そこには舞とサクラが待っていた。
「ゴルゴンサンタがマスターを届けに来たのよっ」
「メロサンタがマスターを届けに来たです!」
『ヽ(´∀`)人(・ω・)人(゚Д゚)人ワショーイ』
「お疲れ様。プレゼントは主作戦が第二フェーズに移行するよ」
「何その作戦!?」
自分の知らないところでそんなことになっていると思っていなかったため、藍大はサクラが口にした作戦名を聞いて驚きを隠せなかった。
「主、知らないとは言わせない。クリスマスイブの21時からクリスマスの3時までがなんて呼ばれてるかわかってるでしょ?」
「藍大、私はさっきプレゼントをあげるより貰う側に回りたいって言ったよね」
「あれが伏線だったのか・・・」
藍大はこの後滅茶苦茶頑張った。
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