第404話 正々堂々勝負しろよ!?
午後になって藍大達は道場ダンジョン10階に到達した。
藍大に同行するのは舞とサクラ、リル、ゲン、ブラドだ。
優月とユノ、蘭は仲良しトリオが日向達と一緒に面倒を見ている。
「9階はあっという間に終わったな」
「メインは10階だもん」
『早くシーサーペントを食べたいね』
道場ダンジョンの9階は舞とリルがサクサク
食いしん坊コンビが早く10階に行きたいと頑張ったから、秘境ダンジョンよりも
「ドミニオンマトンもLv90にしては大したことなかったね」
「サクラが一撃で仕留めてくれたから魔導書も無事に回収できたよ。ありがとう」
「どういたしまして」
ドミニオンマトンだけは魔導書が貴重なので、藍大が舞とリルに任せずにサクラが魔導書を壊さないように瞬殺している。
無傷の魔導書は高く売れるから藍大がホクホク顔で収納リュックにしまってある。
急いでやって来たダンジョン10階は海へと続く川だった。
「早速覚醒の丸薬の素材モンスターがお出ましだ」
「ヒャッハァァァァァッ! オークインの肉をよこせぇぇぇ!」
『お肉~!』
「もう、マッドクラウンもちゃんと倒さなきゃ駄目なのに」
藍大がオークインとマッドクラウンの混成集団の接近を告げた直後、舞とリルがオークインだけを選んで倒していく。
サクラはやれやれと首を振り、<
「これではやはりテストプレイにならないのだ」
「ブラド、今更気づいたのか」
「吾輩もシーサーペントの肉で頭がいっぱいだった」
「そっか」
「うむ」
ブラドが今になって藍大のパーティーが増設した階層に挑んでも参考にならないのではと言い始めた。
藍大は最初からそれがわかっていたので、一般の冒険者ならばどうやって対峙するか考えてダンジョンを探索している。
パーティー内で一番貧弱な藍大ならば、舞達と比べて一般的な冒険者に近いデータが取れると言う考えがあってのことだろう。
いつの間にか援軍としてコカトリスとバジリスクも来ていたが、食べられるモンスターがやって来てテンションの上がった舞とリルがあっさりと仕留めた。
「大漁であるな」
「食材がたっぷりあるのは良いことだよ」
『そうだよブラド。料理が多いと嬉しいでしょ?』
「間違いないのだ」
ブラドは<
その後、シージャイアントの群れとも遭遇したが、藍大達に苦戦する気配は微塵もなかった。
シージャイアント達がいた場所の少し先には
「我はケンタウロス! 騎士として勝負を申し込む!」
「ケンタウロスLv90。見ての通り近接攻撃がメインだ」
「私がやる! リル、私を乗せな!」
『うん!』
ケンタウロスが勝負を仕掛けてくると、戦闘モードになった舞が藍大の分析を聞いてからリルに騎乗する。
舞&リルVSケンタウロスの勝負である。
「いざ尋常に突撃ぃぃぃぃぃ!」
「正々堂々勝負しろよ!?」
ケンタウロスは開始の合図を自分に都合の良いようにアレンジして突撃し始めた。
これには藍大もツッコまずにはいられない。
もっとも、ツッコミはしても舞とリルのことを心配していない。
何故なら、舞とリルの方がケンタウロスよりも遥かに強いからだ。
「喰らえ!」
「もふがっ!?」
舞が雷光を纏わせたミョルニルを投擲し、ケンタウロスはそれを盾で防いだ。
ところが、盾で防いでもケンタウロスが力負けして盾ごと後ろに吹き飛ばされた。
舞の投擲はケンタウロス程度では防げないのが明らかになった。
後ろに吹き飛ばされて転倒したケンタウロスはHPが尽きており、二度と立ち上がることはなく決着がついた。
「主、無様なケンタウロスだったね」
「それな」
「騎士道精神の欠片も感じられない個体だったぞ。馬の下半身が不味くないと良いのだが」
「ブラド、あいつ食べたいの?」
「下半身だけなら馬だから食べるぞ。元気が出る系の珍味だから騎士の奥方に抱き着かれた疲れを吹き飛ばすのに丁度良いのである」
「元気が出る? それは主に是非とも食べてもらわないとね」
(ブラドめ、余計なことを言いよって)
藍大もモンスター図鑑を見て元気が出る珍味だと気づいていたが、サクラがその気になるので黙っていたのだ。
それをブラドがうっかり口にしたせいでサクラはやる気満々である。
藍大にジト目を向けられてブラドは首を傾げた。
「主君、一体どうしたのだ?」
「舞、お疲れ様! ブラドが勝負に勝ったご褒美に抱き着いて良いってさ!」
「えっ、やった~!」
「おのれ主君! 何故吾輩を虐めるのだぁぁぁぁぁ!」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ」
藍大がそう言った時にはブラドはもう舞に抱き着かれていた。
一足遅れてリルが戻って来たので、藍大はブラドの抗議に聞こえない振りをしてリルを労った。
「リルもお疲れ様」
「クゥ~ン♪」
ブラドが解放されてからケンタウロスの解体を済ませた。
「リル、ケンタウロスの魔石は欲しいか?」
『う~ん、僕が貰うにはちょっと物足りないかな』
「じゃあゲンは?」
『同じく』
「吾輩も足りぬぞ」
「私も」
「わかった。帰ってからユノにでもあげよう」
魔石を貰う順番に従魔達がケンタウロスの魔石は物足りないと告げたので、藍大はそれを他の素材と一緒に収納リュックにしまった。
10階のモンスターはボス部屋を除いて狩り尽くしたため、藍大達はいよいよお待ちかねのボス部屋へと移動した。
リルが<
そして、藍大達がボス部屋の中にやってきたことを察知して海面から巨大な青い蛇が姿を現した。
藍大はすぐにモンスター図鑑を視界に展開してシーサーペントのステータスを調べ始めた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:シーサーペント
性別:雌 Lv:95
-----------------------------------------
HP:1,800/1,800
MP:2,100/2,100
STR:1,500
VIT:2,000
DEX:1,500
AGI:1,500
INT:2,500
LUK:1,500
-----------------------------------------
称号:10階フロアボス
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(パッと見てケルブフレームぐらいの強さだな)
シーサーペントのステータスを確認して藍大はそのように判断した。
「シーサーペントLv95。強さはケルブフレーム程度だ」
「主、こいつは私だけでやる」
「わかった。やっちゃってくれ」
「うん。バイバイ」
「シュロ!?」
サクラが手を振った直後に深淵の刃がシーサーペントの首を刎ねた。
10階のフロアボスにもかかわらず、シーサーペントは短く鳴くことしかできずに力尽きた。
「図体だけ大きいがっかり蛇ね」
「サクラ、お疲れ様。がっかり蛇って言えるのはサクラが強いからだ。俺達以外からすれば十分強敵だと思うぞ」
「みんな情けない。私ならこれぐらい何千何万と現れても主を守り切れる自信がある」
「・・・お姫様ポジションでごめんな」
「良いの。主を守るのは私達の役割だもん」
「そうだよ藍大! 藍大の敵は私がぶっ飛ばしてあげるからね!」
『僕もご主人守るよ!』
『任せろ』
「吾輩も力になるぞ」
「ありがとう!」
藍大は自分が守られてばかりのお姫様ポジションだと思い出して悲しくなったが、サクラ達に抱き着かれて元気を取り戻した。
それから、シーサーペントの解体を済ませて魔石だけ取り出すと今度はリルが魔石を欲しがったので与えた。
「リル、魔石をおあがり」
『うん!』
藍大の手から魔石を飲み込んだ結果、リルの毛並みが更に触り心地良さそうな感じになった。
『リルのアビリティ:<
「リル、敵除けだけじゃなくて味方の強化もできるようになったのか」
『ワフン、僕がみんなを鼓舞するんだよ』
「よしよし、リルは頼りになるなぁ」
「クゥ~ン♪」
藍大に顎の下を撫でられてリルは気持ち良さそうに鳴いた。
リルの強化が終わればテストプレイは全て完了したからダンジョンを脱出して帰宅した。
この日の夕食は予定通りシーサーペント尽くしであり、食いしん坊ズも留守番組も満足する結果となった。
余談だが、サクラがケンタウロスの肉をこっそり藍大の皿に混ぜており、サクラと舞が夜に藍大を強襲したとだけ言っておこう。
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