【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第372話 殺気を向けて良いのは殺される覚悟がある者だけなの
第372話 殺気を向けて良いのは殺される覚悟がある者だけなの
時間は少し遡って同日の朝、藍大は昨日と同じく舞とサクラ、リル、ゲン、ブラドを連れて秘境ダンジョンにやって来た。
昨日はエルをテイムした後、ダンジョンの探索を中断して帰宅してしまったから今日は4階のボス部屋にいる”ダンジョンマスター”を討伐するだけだ。
ボス部屋の扉は1~3階のそれに比べて重厚なものだった。
「この中には一体どんなモンスターがいるんだか」
「天使っぽいモンスターじゃない?」
「天使は9階級しか存在しない。昨日までにその階級に基づいた9種類を倒すかテイムしちゃったからそれはないんじゃないか?」
「そっかぁ。エルよりも強いなら腕が鳴るね」
『ご主人、開けても良い?』
「よろしく頼む」
舞と”ダンジョンマスター”の正体について喋っていたら、リルが尻尾を振ってボス部屋の扉を開けて良いか確認した。
ボス部屋の中は今までと異なって暗転しており、その中心には伊邪那美を模った黒いロボットが待ち構えていた。
『遂にここまで来たか。待ち侘びたぞ』
「昨日は途中で脱出して悪かったな」
『まったくだ。当機はいつでも戦える準備をしておったというのに戦いをすっぽかされて酷く落胆したものだ』
「安心しろ。今日はちゃんと戦いに来たから」
藍大は”ダンジョンマスター”と会話をしながらモンスター図鑑で敵の正体を調べていた。
その際に藍大の視界に現れたステータス画面は以下の通りである。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:マザーフレーム
性別:なし Lv:100
-----------------------------------------
HP:3,000/3,000
MP:3,500/3,500
STR:2,000
VIT:2,500
DEX:2,000
AGI:2,000
INT:3,000
LUK:2,000
-----------------------------------------
称号:ダンジョンマスター(秘境)
到達者
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(シャングリラダンジョンだとアジ・ダハーカぐらいの強さかな)
『むぅ。妾の姿を模るとは不届き千万。藍大、やってしまうのじゃ』
藍大が冷静にマザーフレームの戦力を分析していると、伊邪那美がテレパシーでマザーフレームを倒せと指示した。
普段は使わないテレパシーを使うあたり、伊邪那美は余程自分の偽者の存在が許せないらしい。
それも当然のことだと言えよう。
マザーフレームは伊邪那美も祀られていた集落の神社をダンジョンにして乗っ取った存在なのだから。
自分の姿を真似た存在が自分の信者達の神社を取り戻そうと戦うのを返り討ちにしたため、もしも藍大がテイムしたいと言い出しても断固として認めないだろう。
『そうでなくては困る。当機はこの時のために力を蓄えていたのだから』
次の瞬間、ボス部屋にプリンシパリティドールとドミニオンマトン、オファニムフレームが一斉に召喚された。
「わらわらと邪魔だ!」
ブラドが<
『おのれ、”アークダンジョンマスター”め。よくも天敵を連れてきましたね・・・』
マザーフレームはただの”ダンジョンマスター”だから”アークダンジョンマスター”であるブラドには手出しできない。
その影響でブラドの攻撃を未然に阻止することも邪魔することもできなかった。
マザーフレームは自分の天敵を連れて来た藍大に殺気を向けた。
しかし、それは失態としか表現しようがない。
「おい、私の藍大に殺気を向けたな?」
「殺気を向けて良いのは殺される覚悟がある者だけなの」
『ご主人、僕があいつを倒す!』
『不快』
「吾輩が攻撃をしたのだ。恨むなら吾輩を恨むが良い!」
舞達の
自分の不利を悟ってもマザーフレームに逃げ道はないから戦うしかなかった。
『地獄に落ちろ!』
「私がいる限り無駄」
マザーフレームは<
『深淵を覗け!』
「それも無駄」
次にマザーフレームは<
『ぐぬぬ・・・。これでも喰らえ!』
「やらせねえ!」
今度は舞が光のドームを二重に発動してマザーフレームの<
外側の光のドームすら壊せなかったため、マザーフレームは自分の実力不足を痛感した。
それでもこの戦況をどうにかせねばと気を奮い立たせ、再びDPを消費してケルブフレームを一気に5体召喚する。
「壊すのは任せるのだ」
召喚した次の瞬間にはブラドが<
マザーフレームは学習する余裕もなく同じ過ちを繰り返してしまった。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!』
破れかぶれになってマザーフレームは<
マザーフレームの能力値は高く、<
『当たらなければ問題ないよ!』
リルは<
「ヒャッハァァァァァッ!」
背中から地面に落下したマザーフレームを追撃せんと舞がミョルニルを振り下ろすが、マザーフレームはDPを消費して自分と舞の間にケルブフレームを盾代わりに召喚した。
ケルブフレームは舞の雷光を纏わせた一撃でスクラップになったけれど、マザーフレームはその隙に藍大と距離を詰める。
「無駄だな」
ブラドが藍大の前に割り込んだことにより、マザーフレームは急ブレーキをかけるしかなくなった。
「そろそろ見飽きた」
サクラが<
その結果、マザーフレームは古代の化石みたいなポーズでペシャンコになってしまった。
『おめでとうございます。伊邪那美を模したマザーフレームを倒したことによって伊邪那美の力が10年分回復しました』
『報酬として逢魔藍大の収納リュックにプレゼントが贈られました』
「掌握完了」
伊邪那美の声が聞こえなくなった後、ブラドは秘境ダンジョンを掌握してみせた。
楠葉と花梨にとっては同胞を失ったダンジョンだけれども、秘境ダンジョンの外見は長らく国生一族が大切にしていた神社だった。
2人が地下神域さえあればそれで良いと踏ん切りがつけば秘境ダンジョンを壊すかもしれないが、そんなに簡単に割り切れるものではないだろう。
以上の事情から、ひとまずブラドが秘境ダンジョンを掌握することにしたのだ。
「みんなお疲れ様! 元フロアボスや”掃除屋”の大安売りには驚いたけど、みんなのおかげで無事に倒せたな!」
「ありがと~」
「もっと褒めて」
『もっと撫でて~』
「吾輩もちと疲れたぞ」
舞も従魔達も藍大にしばらく甘えまくった。
ダメージこそなかったとはいえ、DPをケチらないマザーフレーム戦が大変だったのは間違いないから藍大は舞と従魔達の気が済むまで甘やかした。
10分後、マザーフレームを解体して取り出された魔石は”ダンジョンマスター”の魔石ということでブラドに与えられることになった。
順番から言えばリルに与えるのだが、ブラドが毎日探索に同行する訳ではないからリルがブラドに譲ったのだ。
『ブラドのアビリティ:<
「リルよ、感謝するのだ。これで吾輩はたくさん食べ物をしまい込めるのだ」
『保管するんだからね? 勝手に食べちゃ駄目だからね?』
「勿論である」
ブラドはアビリティが上書きされたことで亜空間に収納できる容量が無限になった。
食いしん坊と食いしん坊による会話はとても平和なものだった。
ブラドの強化が終わると、藍大は収納リュックに贈られたプレゼントを確認した。
『ご主人、ミスリルミキサーだって』
「ミキサーか。スムージーやジュース作りに使えて良いじゃん」
「藍大、リンゴジュースが良いと思う」
「私はストロベリースムージー」
『バナナスムージーも良いよね』
『ぶどう』
「パイナップルも忘れてはならぬぞ」
新しく手に入れたミスリルミキサーの使い道を知り、舞達が各々飲みたい物を主張するのは至極当然な流れだった。
藍大達がダンジョンから帰宅し、仲良しトリオとリュカや優月、ユノがミスリルミキサーを手に入れたと聞いて自分の希望を口にしたのは言うまでもない。
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