【Web版】大家さん、従魔士に覚醒したってよ(書籍タイトル:俺のアパートがダンジョンになったので、最強モンスターを従えて楽々攻略 大家さん、従魔士に覚醒したってよ)
第357話 Of course! 俺はやっぱり雌しかテイムしたくない!
第357話 Of course! 俺はやっぱり雌しかテイムしたくない!
マルオはテイムしたリッパーをパメラと名付けた。
「マルオ、なんでパメラなの?」
「1〇日の金曜日の殺人鬼の母親の名前を貰ったんだ。最後にラが付く名前でリッパーに相応しい名前だろ?」
「なるほど」
「私、ホラー映画はあまり見ないのよね」
晃はマルオの回答に納得し、成美はホラー映画の話に触れたくなさそうな表情になった。
それを見てマルオはニヤリと笑みを浮かべる。
「あれ、もしかして・・・」
「な、何よ?」
「ホラー映画が苦手なのか~?」
「うっさいわね。だったら何だって言うの?」
「あれは作り物じゃんか。現実にいるモンスターで怖いのなんてもっといるぜ?」
「人間の悪意程怖いものはないわ。ホラー映画なんて製作者の悪意の塊じゃないの」
きっぱりと言い切る成美に晃が苦笑した。
「成美、もうちょっと素直に怖がろうよ。深読みして怖がらなくても良いのに」
「私達が逢魔さん達の兄弟クランだからって媚びて来る大人が怖くないとでも?」
「「怖い」」
「でしょ? そういうことよ」
マルオと晃が論破された瞬間だった。
”迷宮の狩り人”は着々と力を付けており、”楽園の守り人”の兄弟クランであることから”楽園の守り人”に紹介してもらおうと成美達に接触する冒険者がいたりする。
その場面に魔王様信者が居合わせたら助けてくれるが、彼等の最優先は”楽園の守り人”であって”迷宮の狩り人”ではない。
周囲に助けてくれる者がいない時におこぼれに与る狙いで来る冒険者がいれば、それを自力で振り払わなければならない。
寄生しようとする執念が強い者程悪知恵が働くから、最終的には追い払うことができてもそんな手まで使うのかと驚くことだって多い。
それゆえ、成美は人間の悪意の方がモンスターよりも怖いと口にしたのである。
マルオも晃も成美程ではないが何度かそういう冒険者に擦り寄って来られた経験があるため、成美の言葉に力強く同意した。
ホラー映画から人間の悪意まで話が飛躍したが、雑談はここまでにしてマルオはパメラを召喚することにした。
「【
成美達の目の前にパメラが現れた。
召喚されたパメラは晃の所に真っ直ぐに向かい、そのまま頭を下げた。
「お願い。ナイフ返して」
「喋れたんだ? てっきりキシキシ言うだけかと思ってたよ」
「喋れる。テンションが上がるとあんな感じで笑っちゃう」
「晃、ナイフをパメラに返してやってくれ」
「了解。ちょっと待ってて」
「わかった」
晃がパメラに回収した全てのアイアンナイフを返したことにより、パメラはホッとした表情になった。
マントのポケットが空になった所があると気分が落ち着かないようだ。
ナイフの返還作業が終わったら、成美達はダンジョンの先へと進んだ。
パメラがいた場所からは一本道であり、キリスィトールのおかげで視界も歩いて進む分には十分確保できている。
成美達は10分もしない内に”ダンジョンマスター”がいると思しき部屋の扉に辿り着いた。
「ここまでの道のりは長かったわね」
「それな」
「うん」
「気を引き締めていくわよ」
「「了解」」
決戦を前に気を引き締め直した後、マルオがボス部屋の扉を開けて成美達は部屋の中に進んだ。
部屋の中で成美達を待ち受けていたのはザ・ネクロマンサーという見た目の老人だった。
「貴様等、儂のダンジョンをよくも荒らしてくれたな」
「冒険者なんだから当然よ。あんたが”ダンジョンマスター”ね?」
「その通りだ。そして貴様等は儂の手によって殺されて
”ダンジョンマスター”のモンスターが右手を挙げた直後、地面からわらわらとゾンビの大群が現れた。
「マルオ、鑑定できた?」
「ばっちりだ」
成美が時間を稼いでいる間、マルオは敵のステータスを調べていた。
マルオがアンデッド図鑑によって明らかにした内容は以下の通りである。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ビフロンス
性別:雄 Lv:85
-----------------------------------------
HP:1,500(+500)/1,500(+500)
MP:1,800(+500)/2,200(+500)
STR:0(+500)
VIT:1,500(+500)
DEX:2,000(+500)
AGI:1,000(+500)
INT:2,000(+500)
LUK:1,000(+500)
-----------------------------------------
称号:ダンジョンマスター(中津)
同族喰らい
アビリティ:<
<
<
装備:亡者のローブ
スカルネックレス
スカルブレスレット
備考:不快
-----------------------------------------
「マルオ、情報共有」
「りょ。ビフロンスLv85。ゾンビイーターみたいにゾンビを吸収して強くなれる。ダメージを負ってもMPに変換できる。使える属性は暗黒のみ。<
「倒すのが面倒だからテイムしなさいよ」
「確かに面倒だ。だが断る!」
「どうせ雄だからでしょ? わかってるわ」
「Of course! 俺はやっぱり雌しかテイムしたくない!」
「はぁ・・・」
「やれやれ」
マルオがきっぱりしょうもない宣言をすると、成美も晃も呆れるしかなかった。
それに対してビフロンスはマルオに腹を立てていた。
「貴様、儂を舐めた発言は許さぬぞ!」
ビフロンスはDPで召喚したゾンビ達を<
それから<
「フェルミラ! テトラ!」
マルオの呼びかけに応じ、フェルミラとテトラがそれぞれ<
そのおかげでマルオは手に持った盾でビフロンスの攻撃を凌いだ。
成美も既に演奏を始めてパーティー全員の強化をしている。
「ローラとパメラはガンガン行こうぜ!」
「うん」
「キシシッ」
マルオは盾でビフロンスの攻撃を受けながらローラとパメラに指示を出した。
ローラとパメラが両サイドから自分に攻撃を仕掛けて来ると、ビフロンスは面倒そうな表情になって<
自分がどこにいるか視覚的にわからなくさせてフレンドリーファイアを狙っているのだろう。
いや、正確にはそれだけではない。
ビフロンスはDPを消費してアンデッド型モンスターを召喚し、再び自身を強化しようと考えたのだ。
だがちょっと待ってほしい。
晃がキリスィトールを持っており、その持続時間はまだ残っている。
つまり、暗黒の霧はキリスィトールに吸い込まれてビフロンスの狙いは中途半端な状態で露見した。
「「ヒャッハァァァァァッ!」」
ローラが<
ローラもパメラも戦闘中の舞を知らないにもかかわらず、同じ掛け声で
自身のパワーアップを邪魔されて苛立つビフロンスはマルオとその従魔、マルオを強化する成美を邪魔に思って<
上空に逃げられるローラとフェルミラは空へと退避し、それ以外のメンバーはマルオの後ろに隠れた。
「死ね死ね死ねぇぇぇ! 儂の栄養にしてやるわぁぁぁ!」
ビフロンスが
「無駄無駄無駄ぁぁぁ!」
ビフロンスは晃が投げた瓶に気づき、自分の頭に落ちる前に撃ち落とした。
それが間違いだった。
瓶が割れてその中身が自身の体に触れた瞬間、ビフロンスは絶叫した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「晃、何投げたんだ?」
「対アンデッド兵器。ちゃんとした説明は後でするから、あの液体に触れないように攻撃して」
「おけ! ローラ、フェルミラ、パメラ、遠くからやっておしまい!」
光り輝く液体を頭から被って地面にのた打ち回るビフロンスに対し、ローラとフェルミラ、パメラが距離を取ったままガンガン攻撃した。
無防備なビフロンスに一気にダメージが入ったことにより、ビフロンスはあっさりと力尽きた。
ビフロンスの叫び声が止んで動かなくなると、成美達は勝利を確信してハイタッチした。
「「「勝ったぁぁぁぁぁ!」」」
お互いを労い合った後、マルオは晃にビフロンスが被った液体の説明を求めた。
その答えがこれである。
「リルさんに<
「ビフロンスの痛がり方が尋常じゃなかったものね。ローラ達が浴びたらヤバかったんじゃない?」
「ほんそれ。だから触れないようにって言ったのか」
「そゆこと」
晃の解説に成美もマルオも納得した。
その後、成美達は誰も”ダンジョンマスター”を継がずにダンジョンを脱出したため中津ダンジョンは消失した。
”グリーンバレー”から依頼されて4ヶ月以上経過したが、成美達はその依頼をしっかりと完遂したのだった。
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