第353話 ブラド逃げて! 超逃げて!
バレンタインデーのチョコが配られた後、藍大は舞とサクラ、リル、ゲンを連れてシャングリラダンジョンの地下10階にやって来た。
ネメアズライオンとガルムを狩るためである。
昨日はトライコーンとワイバーンを狩っており、今日はネメアズライオンとガルムを狩るとなれば目的は1つしか考えられない。
そう、覚醒の丸薬Ⅱ型を創るのに必要な素材を集めることだ。
現在、”楽園の守り人”と茂以外に三次覚醒した者はいない。
覚醒の丸薬Ⅱ型は奈美にしか作れず、その素材集めが飛び切りの難易度だから仕方のないことだと言えよう。
藍大は覚醒の丸薬Ⅱ型を奈美に作ってもらい、それを三原色クランと白黒クランに売るつもりだ。
彼等には日本のダンジョンの間引きの管理を手伝ってもらっており、強いモンスターが現れた時は彼等の中の精鋭が直接ダンジョンに出向いている。
その時に大地震の際に現れたらしい強力なモンスターと戦っても生存できる確率を上げるため、覚醒の丸薬Ⅱ型があった方が良いという判断なのだ。
「今日もじゃんじゃん狩るぞ」
「主、別に狩り尽くしちゃっても良いんだよね?」
『ご主人、ついでにラードーンも倒そうよ。ラードーンのお肉食べたい』
「賛成!」
サクラは笑みを浮かべながら狩り尽くす気満々で、リルと舞はついでと言っているがラードーンを倒す方がメインになっている。
ネメアズライオンとガルムの大群が通路の向こうに待機しているが、これはブラドが狩りの効率を上げるためにそのように配置したものだ。
「
サクラは<
ネメアズライオンとガルムの大群はあっさりと全滅してしまった。
「主、終わったよ」
「よしよし。サクラは仕事ができるなぁ」
「フフン♪」
藍大に褒められてサクラはドヤ顔を披露した。
覚醒の丸薬Ⅱ型の素材となるモンスターの死体を全て回収した後、通路を進んでいく内にペンドラの群れが水晶の床を腹ばいに滑って藍大達に向かって来た。
「今度は私達の番だ。行くぞリル!」
『うん!』
戦いたくてうずうずしていた舞がリルと共にペンドラの群れを迎え撃つ。
殴る、蹴る、斬る、吹き飛ばす等舞とリルがペンドラの群れを手早く片付けてしまった。
「サクッと片付いたな」
「頑張ったよ~」
『ワフン』
「舞もリルもお疲れ様」
サクラに負けないんだぞとドヤ顔で訴える舞達に対し、藍大は労いの言葉をかけた。
ペンドラの回収を済ませて先に進むと、今まではベリアルがいた場所に黒光りした巨大な蛇が待機していた。
(そういえばブラドが”掃除屋”をチェンジしたって言ってたっけ)
ベリアルが存在することが不快だと藍大達が強く訴えたため、地下10階の”掃除屋”は別のモンスターになっていた。
ブラドにその案内をされていたことを思い出し、藍大は目の前の敵についてモンスター図鑑で調べ始めた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:アポピス
性別:雄 Lv:95
-----------------------------------------
HP:2,500/2,500
MP:3,100/3,100
STR:3,000
VIT:2,500
DEX:3,000
AGI:2,500
INT:3,300
LUK:2,500
-----------------------------------------
称号:掃除屋
アビリティ:<
<
<
装備:なし
備考:警戒
-----------------------------------------
(サクラ以外に初めて<
闇属性を突き詰めたアビリティが<
「こいつはアポピスLv95。状態異常系アビリティ複数と巨体を使った攻撃、そして<
「ふーん」
「シュロロロ・・・」
アポピスが<
自分だけのアビリティだと思っていた<
「ここは私がやる」
「油断はするなよ」
「良いよ~」
『わかった』
「わかってる。ありがとう」
藍大達から許可を取ったサクラが1歩前に出る。
「シュロッ!」
アポピスはサクラの強さを感じ取ったらしく、近付くなという意味を込めて<
「無駄」
サクラは<
「シュロッ!?」
アポピスは嘘だろと驚いて<
「この程度なの? 粗末な攻撃ね」
「シュロロ!?」
サクラがアポピスの放った深淵のレーザーの制御を奪ったため、まさかそんなこともできるのかとアポピスは狼狽えるしかなかった。
サクラは制御を奪ったレーザーをアポピスに向けてUターンさせ、その勢いを加速してアポピスの巨体にぶつけた。
「反撃できるなんて思わないでね」
そう言った直後、サクラはアポピスを深淵の弾丸のドームで覆って一斉掃射した。
「シュ、シュロォ・・・」
無念と言わんばかりに鳴いてアポピスは音を立てて倒れた。
アポピスが力尽きたのを確認してから、サクラはくるりと振り返って藍大に抱き着いた。
「主、倒した。これで<
「お疲れ様。ブラドを虐めないでやってくれよ?」
「それはブラドの態度次第」
(ブラド逃げて! 超逃げて!)
藍大達のリクエストでベリアルから別のモンスターににチェンジしたにもかかわらず、アポピスがサクラのユニークアビリティと化していた<
ブラドに言わせてみれば理不尽であるが、逢魔家のヒエラルキーではサクラの方が上位なので藍大はブラドに逃げるよう心の中で訴えたのだ。
自分の気遣いがブラドに届いているかはさておき、藍大達はアポピスの死体を回収して魔石はサクラに与えられることになった。
サクラは産休中に魔石を貰えなかったのでその補填である。
『サクラのアビリティ:<
「サクラがゲンに追いついたか」
「攻守ともに私が一番だもん」
『問題・・・ない・・・』
サクラが胸を張って言うと、ゲンが藍大の装備に憑依したまま藍大にだけコメントした。
ゲンが何よりも大切にしているのは藍大の装備に憑依するだけの簡単な役割だ。
<
無論、ゲンがこのように細かく伝えることはないので藍大がそう推測しているだけなのだが。
サクラのパワーアップが終わったところで藍大達はボス部屋まで移動した。
ボス部屋の扉を開けた途端、ラードーンが全ての頭から<
『やれやれ』
ゲンの声が聞こえ、<
そして、<
「「「・・・「「グァァァァァァァァァァッ!?」」・・・」」」
炎に身を包まれたラードーンが絶叫している間、ゲンは既に水の牢獄を形成してその範囲を一気に狭めてラードーンをその中に閉じ込めた。
「後は・・・任せた・・・」
「リル!」
『うん!』
怠惰なゲンがここまで追い込んでくれたのだから、このチャンスを藍大達が逃す訳にはいくまい。
リルは<
水の牢獄は弾け飛び、ラードーンはあと重めの一撃が入れば倒せる所まで来た。
「舞!」
「ラードーン・・・、ステーキィィィィィ!」
藍大の声に応じるように頷き、雷光を纏わせた舞がラードーンの胴体に渾身の一撃を与えた。
掛け声はともかく舞の一撃が決定打となり、ラードーンは力尽きて地面に倒れた。
「ゲン、大活躍だったじゃないか」
「ドヤ」
「愛い奴め」
藍大は短くドヤるゲンの頭を撫でた。
なんだかんだでゲンはいざという時に頼りになるので撫でる時間は長めである。
ゲンが満足して<
その後、ラードーンの死体を回収してその魔石はユノへのお土産にすることを決め、ラードーンの後ろにある巨大な樹から本物の果実を回収してダンジョンを脱出した。
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